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与太  作者: うちょん
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おまけ②【兄】


 おまけ②【兄】














 「兄ちゃん兄ちゃん」

 「兄者」

 「よしよし。重てぇな」

 いつものように、林人と大地がソファに座っている調の膝に座って抱っこしてもらっているのを、白波と星羅はただ眺めていた。

 それからしばらくすると、調たち3人はすやすやとお昼寝を始める。

 「・・・なんかさぁ」

 「ん?」

 「なんで同じ兄貴なのに、俺達と兄貴への甘え方がこんなに違うんだろう」

 「・・・・・・」

 そもそも、呼び方からして違う。

 調のことは明らかに兄だと分かるものだし、“兄ちゃん”も“兄者”も兄を慕っている感じが伝わる。

 だが、白波と星羅はどうだろうか。

 林人からは“白兄”“星兄”、これはまだ良いとしよう。

 大地からは“次男白波”“三男星羅”と呼ばれているのだ。

 え?どういうこと?なんで役職言われてるの?みたいな感じだ。

 これはもう兄としてというよりも、兄たちに自分の立ち位置を確認させるために言っているのではと思ってしまうくらいだ。

 しかも、調には自分からどんどん抱っこしにいくのに、白波や星羅にはほとんど来ない。

 調がいないときに「仕方ねぇな」と来る感じだ。

 「兄の威厳って何?」

 「・・・・・・包容力」

 「それ言われるとなぁ・・・。もっとない?こう、俺達にも出来そうなこと」

 「・・・・・」

 額に手をあてて必死に考える白波。

 しばらく考えても答えが出なかったようで、白波と星羅は、何杯目かもわからない麦茶をまた口にふくむ。

 「ていうかさ」

 「うん」

 「多分、俺達がまだ兄貴に甘えてるからだよね、あいつらが俺達にあんまり来ないのって。俺達が兄貴に甘えてるところ見てるから、頼りないなーって思われてんじゃ無い?」

 「・・・一理ある」

 「いや、一理っていうかもう全部だよ。ソレが全てだよ」

 「俺いつも不思議なんだけど」

 「うん」

 「朝起きると兄貴に近づいてるの、なんでだろうって思う。別に夜中起きて近づいてるわけじゃないのに」

 「俺も。わかる。なんで?いつも白波に文句言ってるけど、それよりもなんで自分まで兄貴に寄って行ってるのかが謎」

 「暖かいのかな」

 「体温なら下2人の方だろ」

 「そっか。じゃあ何?磁石的な?」

 「なんかさ、兄貴って安心するんだよ。さすが兄貴って感じ」

 「この歳で言う事じゃないけど、林人と大地がすごく羨ましいときがある」

 「わかる。あいつらって遠慮しなくていいじゃん。まだ小さいからどんどんいけるじゃん」

 「兄貴に頼ってほしいな、って思う事もあるけど、やっぱりまだ兄貴に甘えたいときがある」

 「なかなか兄貴を独り占めって出来ないもんな」

 「兄貴ってなんでかっこいいんだろう」

 「学校来てくれたときもさ、すげー嬉しかった記憶ある。この前大ちゃんの件で学校行ったって聞いた?」

 「聞いた。大地めちゃ喜んでた」

 「そりゃそうだよ。兄貴って絶対俺達の味方してくれんじゃん。何があっても信じてくれてるし」

 「兄貴忙しいのにさ、授業参観とかも来てくれるし」

 「今思えばさ、雑巾とか何か入れる袋とかさ、ああいうのも作ってくれてたんだよな?いつ作ってたんだろう」

 「夜鍋して、じゃない?」

 「だから寝不足っぽかったのか。でもそういうのも言わないし見せないからな。そういうのもかっこいい」

 「俺達が不安にならないようにって、いっつも平然としてたよな」

 「俺達がさ、視えるってわかったとき、兄貴ちょっと寂しいっていうか、なんとも言えない顔してた気がする」

 「ああ・・・。多分、あれだ。俺達が傷つくんじゃないかって。心配したんだよ。兄貴自身、霊が視えるから色々言われたりしたみたいだし」

 「そういうことか。・・・兄貴ってなんで優しんだろう」

 「星羅、お前本当に兄貴のこと好きだよな」

 「白波に言われたくねえし」

 「俺は兄貴のこと好きだから何言われてもいいし」

 「俺だって兄貴のこと好きだし。なんなら白波より好きだから」

 「俺の方が好きだから」

 「いや俺だね」

 「俺」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「じゃあ兄貴クイズ。デデン」

 「よしきた」

 「第1問!兄貴が一番気に入ってる下着の柄は?」

 「ラインが一本だけ入ってる紺のボクサー」

 「正解」

「次は俺だ。第2問。兄貴の得意料理は?」

 「目玉焼きベーコンセット」

 「正解」

「簡単だな!第3問!兄貴が毎朝起きて一番最初にすることは?」

 「家族写真を見ること」

 「正解」

 「第4問。兄貴の平均体温は?」

 「は?さ、36・5度・・・」

 「不正解。正解は36・7度でしたー」

 「なんでそんなこと知ってんだよ!だいたい、兄貴体温なんて滅多に測らねえだろ!」

 「測ってるよ。林人と大地が学校行くのに測るようだから、そのとき一緒に測ってるし」

 「俺が林くんと大ちゃんの弁当つめてる時か・・・!!!!」

 「俺の勝ちでいいか?」

 「まだだ!第5問!兄貴がついやっている癖は!?」

 「アイスの棒とか棒付き飴の棒をずっと口に入れてころころすること」

 「せ、正解」

 「次。第6問。俺が好きな兄貴の仕草は?」

 「はあ!?それもう兄貴クイズじゃねえじゃん!!知らねえよ!!!」

 「あー、お前はねぇってことか?好きな兄貴の仕草」

 「あるけど・・・兄貴クイズじゃねえじゃん!」

 「こっからは兄貴クイズじゃねえ。どっちがより兄貴のこと好きか勝負といこうか」

 「・・・その勝負のってやるよ」

 「じゃあ、俺が好きな兄貴の仕草は?」

 「・・・頭撫でる・・・いや!・・・前髪かきあげる仕草!!」

 「ぶぶー。正解は、林人と大地のほっぺを人差し指で無意識に触ってる仕草でしたー」

 「くそ!じゃあ・・・俺が好きな兄貴の口癖は?」

 「・・・・・・」

 「ふふん。タイムアップもあるからな」

 「・・・・・・」

 「どうしたどうした?降参か?」

 「・・・兄貴の好きな口癖たくさんありすぎて迷う」

 「もはやそれ口癖じゃねえじゃん」

 「そうか。じゃあ、自分のこと『兄ちゃん』っていうやつ」

 「それも捨てがたいが、俺は『星羅』だな」

 「・・・・・・え?それ口癖じゃなくね?ただお前のこと呼んでるだけじゃね?」

 「口癖だよ。つい俺のこと呼んじゃうんだよ」

 「うわ。信じらねぇ」

 「お前に言われたくねえし」

 「まあいいか。じゃあ俺が一番好きな兄貴の身体の部位は?」

 「うわ。なんだそれ」

 「答えねぇなら俺の勝ちだな」

 「答えるわ。・・・そうだな。首?」

 「ぶぶー。背中でした」

 「白波さっきから汚ねぇぞ」

 「星羅こそ汚ねぇぞ」

 「じゃあ兄貴の好きなところ順番に言っていこうや。5秒以内に言えなかったら負けだからな」

 「楽勝だな」

 「始めるぞ」




 30分後、白波と星羅の白熱した戦いはまだ続いていた。

 林人と大地はまだすやすやと寝ていたのだが、1人、起きるに起きられない男がいたことを、言い争いをしている2人は知らない。



 「恥ずかしくて起きられねぇんだけど」


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