三人目の誰か
誰かのある日三話目、三人目の誰かのある日の話。
やぁ、ごきげんよう。
二人目の誰かのある日はいかがだったかな?さぁさぁ、それでは今回も誰かのある日の話でもしようか。
◇
ハッ、フゥッ、ハッ、フゥッ、一定のリズムで軽快に前へ、前へと走る足に合わせるかのよう呼吸を繰り返す。
静かな早朝の砂浜ではゴゥゥと低くうねるような音とザザアァン、ザアァァという波音が響き、その砂浜に自分の一定のリズムの呼吸音とザグッ、ザグッ、ザグッという砂を力強く踏みしめ前へ蹴り出す音と潮風に心地よさを感じながら軽快に走り続ける。
静かで小さな海辺の町、夜寝る頃にはササァァン、サアァンと優しい波音だけが心地よく響く町。
そんなこの町に引っ越してきて生活にも慣れてきた頃なんとなく始めてからずっと続いてる日課が、早朝に波音を聞きながら砂浜をそして町を気まぐれコースでランニングすることだった。
セットしたアラームよりわずかに早く起床しスポーツウエアに着替え、家族を起こさないようそっと家を出る。
日の出にはほんの少し早い時間、明るくなり始めた海辺の町は波音のみが聞こえる。
潮の匂いをいくらか含んだ心地よい空気を丁寧に吸いゆっくりと準備運動をし、まずは早歩きより早いくらいのペースでランニングを開始する。
家から海まで歩いても五分と掛からない距離で砂浜を走る前のウォームアップには近すぎるため、まずは堤防脇の道をある程度走り途中で堤防から砂浜へ降りる階段を渡り砂浜へ。
砂浜に降りたらランニングのペースをほんの少しだけ速め、砂に足を取られないよう力強く前へ前へと足を踏み出す。
聞こえるのは波音と自分の呼吸音、そして砂を踏みしめる音のみ。
潮の香りと潮風に心地よさを感じながら砂浜を走り、日の出を迎える。
昇り始めた太陽の光で海に一本の輝く光の道が浮かび上がり、わずかにペースを落とし朝日を浴びながら砂浜を走り続ける。
ハッ、フゥッ、ハッ、フゥッ、呼吸が乱れないように自分に丁度いい一定のリズムでの呼吸を軽く意識する、額に滲み出した汗が潮風に冷やされ気持ちよいがそろそろランニングコースを町に移すことにした。
砂浜から堤防の階段を渡り町へコースを移す。相変わらず聞こえる波音と自分の呼吸音、走る足音はザグッ、ザグッという砂の音からスタッタッ、タッとコンクリートを軽快に踏み進める音に変わった。
走るコースを決めず気の向くままに右に曲がったり左に曲がったりして毎回違う道をランニングする気まぐれコースはちょっとした発見がある事も。
例えば海近くの住宅地に小さなケーキ屋がひっそりといつの間にか建っていた。
休日にどんな感じか店に行ってみたらとても美味しいケーキ屋で、もっと開けた場所で店をやればいいのにと思ったが、こういう海辺の町の住宅街に美味しいケーキ屋がひっそりと営業している事がより価値のある事なのかな?と考えさせられたり。
この海辺の町には何カ所も駄菓子屋があることを知り、夕方それぞれの駄菓子屋に行きどこの駄菓子屋が一番賑わってるか調べたりもした。
ちなみに一番賑わっていた駄菓子屋は、小学校の近くにあり他の駄菓子屋より広くゲーム機が二台置いてある駄菓子屋だった。
小学校の横を走る。
広い校庭の脇に体を存分に使って遊ぶような遊具がいくつかありちょっとしたアスレチックを連想させた。
聞いた話によるとこの小学校では最初に走った砂浜でマラソン大会や砂で造形物を作る学校行事があるらしい、何というか海辺の学校ならではの行事で面白いと思った。
走るペースを徐々に落としていき早歩きくらいのスピードへ、そしてクールダウンに歩く。
人々が起き出しそれぞれの家庭の音が聞こえ始める、ラジオの音にテレビのニュースの音や朝食を作る音、それといつ止められるのかわからない目覚まし時計の音など。
海辺の町に今日もまた新たな一日が訪れた。それぞれが様々な一日をこの町や他の場所で過ごすのだろう、そしてまたそれぞれの家に帰り優しい波音が響く夜を迎え一日が終わる。
ほどよくクールダウンを終え家に着く、家族も既に起きているみたいだ。
我が家の音が少し聞こえる。
「ただいま。」
玄関を開け元気よく言った、自分の今日が始まる。
読んでくださりありがとうございます。まだまだ未熟ですがこれからもよろしくお願いします。