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二人目の誰か~after~

二人目の誰かに関するその後

 やっっ、たあぁぁぁぁ!!やほほぉぉおい!!!

とうとう!ついに!!私は!心の中で愛でる事しかできなかった少年の!愛おしい少年の!ある日の記憶を!!


「すはぁぁ。ふうぅぅ、、」


どうしても高ぶってしまう気持ちを落ち着かせるように深く息を吸って吐くが、それでも自然と頬が緩んでしまう。

 ‘人知れず’少年たちを心の底から愛し、慈しみ、心の中で愛でる。

そんな少年好きの私が貯金をガッツリと減らしてまで少年のある日の記憶を体験し、その記憶を我が物にしたのだから仕方の無いことだろう。

むしろこの緩みきった表情筋こそが今回私が得た至福の象徴なのだ。

たとえその‘記憶’が記憶屋と呼ばれる人達によって‘書かれた‘記憶シナリオ’だとしても、私にとっては至福な記憶だ。


  ◇


 “記憶体験で新たな視点と日常に発見を”


 そんなキャッチフレーズがいつの間にか日常に溢れ、そして記憶体験による‘様々な事故’が連日報道され嫌でも記憶体験は誰もが知る物となり、気が付くと何故かそのまま娯楽の一種として多くの人が記憶体験を行うようになっていた。

 記憶体験は機関認定施設で行うことを義務づけられているが、安価でいて過激な記憶シナリオを体験させる‘非認定施設’の存在が問題となり重い罰則が設けられるほどだ。


 私の周囲でも記憶体験をし、その体験した記憶について色々と話す人達が増えていったがさして興味が無く会話に加わることもなく。

そのうち友人も記憶体験をし勧められたがやはり興味は持てなかった。

それほどまで興味も関心もなかった記憶体験だがある話しを聞いたとき一気に私の興味を引きつけ、詳しい情報を得るためにあらゆる形で調べ始め今に至る。


 そして私を突き動かした話しというのが、

「記憶シナリオは基本的に性別を意識させないように書かれるが、性別をはっきりとさせた記憶シナリオもあり、そいう記憶シナリオも性別関係なく記憶体験できるらしい。」

というものだ。


 実際は好奇心だけでこういった性別がはっきりしてる記憶体験はできず、機関の様々な審査と診査を受けて認められる必要があり、私が何故それらに通ったのか不思議で仕方が無いくらいの内容だったが‘少年の記憶’を‘自身の記憶と‘同じように思い出せる’今の私にはもう関係の無いことだ。


  ◇


 私が得た少年のある日の記憶を。愛おしい記憶を思い出し脳裏にその記憶の光景を映し出す。

低い目線で見る下校時の景色、つま先で軽く蹴る石の動き。古い時代に使われていたらしいランドセルという物の独特の重さ。

今の時代には無い形状の建物に何故か懐かしさを感じる。

玄関に鍵をさして開けるという行為も今回の記憶体験で初めて知ったが、思い出す記憶の中では何の違和感もなく日常生活でごく当たり前の自然な感覚だ。ただ、少しだけ寂しさを感じるのはこの少年による物なのだろう。


 いつの時代か分からないが、昔にはこの少年のような生活が実際にあったのだろうか?

一人で家路につき、誰もいない家に少年一人で過ごして、少年が夕方一人で外出する。

聞いた噂では記憶屋は古い時代の生活様式を元に記憶シナリオを書くために、古い時代に関する膨大なデータがあるとされる研究所への立入りとデータの閲覧が許可されてるらしい。

もし、その噂が本当ならば遠い昔では当たり前の事だったのかも知れない。


 それにしてもこの記憶の少年はどこか背伸びして大人っぽくしようと、ちょっとトゲを持とうとしてる様が可愛らしい。

ポケットに両手を入れてわざと少しだけ背中を丸めて、寂しくない自分は強いみたいに思うようにしていたり。

それでいて玄関が開ききる前に、玄関を開ける人の顔が見える前に「おかえりなさい。」と言うほど実は寂しさを隠していたり。


 やっぱり私にとって少年たちは存在自体が尊い。

それが昔の時代であろうと、記憶シナリオによる物でもそんな少年の記憶を自分の記憶として持てる日が来るなんて素晴らしい。

そんな私が審査と診査を通ってしまったが、本当に何故なのだろう?実験的な感じなのだろうか?

少し不安な部分もあるが少年の記憶を得た私は恐れることはなく、あるのは至福のみだ。

読んでくださりありがとうございます。

更新期間に波がありますが、よろしければこれからも隙間時間のお供に。それでは、次話で。

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