59話 ロールプレイはやめられない
「ユ、ユカさん……もう、やめて」
ぼくの声かけで我に返ったユカは、パワーさんへの暴力をやめた。
そして、マウントポジションを解除する。
ユカから解放されたパワーさんは、とても満足げであった。
それは、もうこの世の幸せを独り占めしたような……思い残すことなし……げな表情であった。
ぼくの方はというと……そこはかとない表情をしていたはずだ。
「うぅ……さすがだぜ、ユカ……オレが見込んだだけはある」
ユカにフルボッコされたのが、よっぽどうれしかったようである……さすが生粋のM……だから、わざと挑発を……それに乗せられてしまうユカもいかがなもんかと。
「しかし、オレの耐久力はこんなものじゃねぇ……そこのお姉さん、今度はあんたの番だ」
「はぁ……!?」
ぼくにどうしろと。
ユカと同じく彼にマウントポジションを取って、フルボッコにすればいいのか……??
「アツヤ君、セクハラなんだかDVなんだか、わけがわからなくなってきたぞ」
「そ、そうですね……なんか関わらない方がいいみたいです」
ここでユカがいきなり声をあげる。
「もうイヤ、この繰り返し……いつまでこんなこと続けるの?」
「ふっ……そんな大したことじゃないだろう、ハニー……」
ハ、ハニーって……!?なんか、ロールプレイ入っていませんか!?
繰り返しって……ずーっとこんな感じの生活なの……??
方や仰向けになったまま満足げなパワーさん。
その脇にちょこんと座り、すすり泣くユカ。
この構図……どうすればいいんだろ???
ここは冷静になろう。
そもそもぼくはなんで、ユカの部屋に来たのか?
それは話し合いのため……で、何の話し合いか?
そう……ユカがぼくと付き合う、付き合わないって話だったはず。
……ってことは、ぼくが女役で、ユカが男役なのか?だって、彼女、女辞めるって言ってたし……。
そこへパワーさんが襲来しめちゃくちゃになった……。
なんとなくユカが女を辞めると言った理由がわかった気がする……。
……。
ユカにしてもパワーさんにしてもいい大人である。
ゆえに、普段の仕事と、プライベートなロールプレイを……オンオフ切り替えて生きていけばいいのではないだろうか。
元々人は男として、または女として本来あるべき姿があるのであろうが、全員が全員そうなる必要はない。多種多様な人たちが集まり、互いに助け合って生きていけばいいのである。
さて……結局……どうしたものか……。
<登場人物>
・岡本淳也:主人公、男性、52歳、妻子あり、IT企業に勤めるサラリーマンかつ公認LGBT社員、人格は変わらないが、外観はレイカになっている
・桐生麗華:女性、25歳、独身、ニューロ・コンピュータ・サイエンスなどなどの権威、故人、自律型AIに生前の人格をコピーし、DCのサーバに潜伏する。アツヤとは脳内チップを経由して会話する。古武術の使い手でもある
・横山由佳:女性、28歳、独身、アツヤとは違うIT企業に勤めるサラリーマン、過去に男アツヤと一緒に仕事をした仲である
・東山田力:男性、29歳、独身、真性M、ユカと同姓しているっぽい




