57話 ユカは女を辞める……らしい
いきなりだが、横山由佳は言った……私は女を辞める、と。
ユカはアツヤ君とは違う会社であるが、IT企業に勤めるサラリーマンだ。
かつて、彼と同じプロジェクトに所属し、一緒に仕事をしていたこともあった……らしい。
彼女は私に告白した……と言うかアツヤ君にではあるが……一応、女が女に対しての告白である。
まぁ、アツヤ君の場合、身体は女であるが心は紛れもなくおっさんだ。ゆえに十分、ユカを受け入れ可能なのではないか……日本の法律は別として……。
彼女から連絡があった……二人っきりで話がしたい、と。
そりゃそうであろう……彼女と二人でお茶していたところ、橘拓海、鈴原倫、鈴原憐に乱入され、いきなり弾劾裁判が始まったのであるから。
これはショックであったろう……通常、このようなことは起きない……ほとんどマンガである。本人としてみれば、たまったものではない。
これは会社の飲み会で、苦手な同僚がたまたま正面に配置され、延々とマウントされ続ける……というようなもんである。酔っ払って上目線で語り続ける同僚の、人を馬鹿にした表情が忘れられない……あー、イヤだイヤだ……ちなみにこの記憶はアツヤ君のものであると一言付け加えておく。
さて、ユカと二人っきりになる、となると地元の葛西ではダメだろう。会社のそばも同僚に気づかれるリスクがある。であるならば、それぞれに離れたところとなる。
会う場所はユカから指定された。
その場所とはなんと彼女のマンション……らしい。金曜日の夜ということもあり、この展開は得てしてお泊まり会に突入……十分考えられるゆえ、着替えと歯ブラシを持参することにする。
場所は豊島区、西武池袋線の桜台だ。駅を降りて徒歩10分ほどのところである。
指定時刻に勇気を出して呼び鈴を押す。実は来る前に駅前のスーパーでいろいろ総菜などを買い、夜ご飯もバッチリというシチュエーションだ。
「いらっしゃい、アツヤさん」
ユカは私服だった。
ジーンズにトレーナーという少年のような格好だ。長身の彼女には似合っていたが……。
玄関からリビングに入った。
ローテーブルがあったので、買いこんだ総菜を置く。
「夜ご飯、まだでしょ?いろいろ買ってきた……」
「ありがとうございます」
ようやく落ち着く。
今度こそ邪魔者なしの二人っきりの女子会……じゃなかった話し合いができる。
さて……と思ったところ、突然玄関のドアが開き、何者かが入ってきた。彼が発した言葉は……。
「ヤバっ、いい女が増えてやがる……」
だ、誰……??
<登場人物>
・岡本淳也:主人公、男性、52歳、妻子あり、IT企業に勤めるサラリーマンかつ公認LGBT社員、人格は変わらないが、外観はレイカになっている
・桐生麗華:女性、25歳、独身、ニューロ・コンピュータ・サイエンスなどなどの権威、故人、自律型AIに生前の人格をコピーし、DCのサーバに潜伏する。アツヤとは脳内チップを経由して会話する。古武術の使い手でもある
・横山由佳:女性、28歳、独身?、アツヤとは違うIT企業に勤めるサラリーマン、過去に男アツヤと一緒に仕事をした仲である。




