表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/60

48話 そこは誰もが憧れる密な場所

 スーツかつ妙齢な大人の女性二人で、なにげに過ごしていた珈琲店のボックス席。

 突如、有無を言わさず乱入される……しかも若者どもに……。

 二人で占有していたボックス席が瞬時に五人になる……座席占有率125%……はっきり言って定員オーバーだ。

 ぼくの隣に鈴原姉妹(スズハラシスターズ)が、正面に横山由佳(ヨコヤマユカ)橘拓海(タチバナタクミ)が陣取っている。

 当ボックス席は一気に密になった……コロナ禍の昨今、大丈夫か……??


 タクミはカフェオレを、リンはミルクコーヒー&ショートケーキを、レンはミルクコーヒーをオーダした。

 彼らの出で立ちを見る。

 みんなそこそこ冬の格好だ。ジャンパーなりコートなりを着ている。ズボンやロングスカート、長めのソックスといったところである。


「アツヤさん、この方はアツヤさんの会社の同僚の方ですか?なぜ、告白しているんですか?」


 両手をテーブルに出し、リムレスメガネのブリッジを中指で上げる仕草をして、橘拓海タチバナタクミは声を発した。そして、カフェオレを一口(すす)る。


 ダ、ダイレクト過ぎだよ、タクミ君……オブラートに包む、というスキルを獲得する必要ありだ。

 それより、ぼくに息子がいることで、かなりショックを受けていたようだったけど……。

 あの時、君はがっくりと肩を落とし、まるで寒い冬の雨に打たれて凍えている犬のようだった。来た道を戻っていく、その後ろ姿は哀愁を漂わせていた……今は何事もなかったように会話している……が、吹っ切れたのか……??


「アツ(ネェ)と同じ会社の人なのに、コクっちゃうんだ?」

「アツヤは誰にも渡さないの……」


 双子の姉である鈴原倫(スズハラリン)はショートケーキの一部をフォークに刺して振りながら、その妹の鈴原憐(スズハラレン)は両手でミルクコーヒーを(すす)りながら話した。


 リン&レン……お主ら、一緒に外出できるではないか。

 てっきり仲が悪いと思っていたが、勘違いのようである。

 それにしても彼女たちはいつも……ぼくを()る/()らない、なんだよね……なんか、もー、ぼくは人間でなく物なのかと……。

 好かれることは悪いことではないけれど……もう、誰の物とかやめません……??


「あ、あの……アツヤさん?……こ、この人たちは誰ですか?」


 横山由佳ヨコヤマユカは両手を包むようにして握り、胸に寄せていた。そして肩を振るわせながら小さく声を発した。あいかわらずの涙目のままで……その眼はぼくに助けを求めているようだった。


 そうだよね、ユカ……あなたの反応はまっとうです。

 すまんが、今は……耐えるしかない。

 まるで犯罪者扱いされているあなたの立場……なんとかしてあげたいけど……とにかく、今は動けんのだ。

 その、つまりだ……ぼくと付き合うと、こういうことが起こるのだよ……懲りたでしょ、もう?


 心細いよね……痛いほど、分かかります、その気持ち……。

 ぼくだって、逃げ出したい……今すぐ、ここから。


 このボックス席、端から見ると女子会にタクミが乱入している、いわばハーレム化している、と言える。

 彼はこの天国状態をこれぽっちも感じてなさげだ……鈴原姉妹(スズハラシスターズ)横山由佳(ヨコヤマユカ)は眼中にないのか?……かわいいのに……。


 もうここまで来ると会社のランチ・ミーティングのようでもある……こうなったら、旅は道連れ世はなんちゃらだ……お互い親睦を深めればよかろう。

 ぼくだって、全員を全員、相手にすることができないし……。


 誰か、リーダーシップを取ってくれないかな……??

 そもそも、なんで彼らは乱入……というよりここに居るのだ……??

 さらに一緒して良いなんて、ばくは一言も言っていないぞ!


 この、いきなり始まったお茶会というか女子会+αというか……この会だが、こうなってしまうと特に目的もないため、グダグダに成り下がるのが目に見えていた……。

 ユカとはすでに連絡先を交換した……ぼくの目的は達成している……であるなば、ここは、お(いとま)すべきであろう。

 ぼくはスクっとその場に立ち、声をかけた。


「あの……ぼく、帰るから……お先に……」

「「「「ダメ……」」」」


 みんなからの返事が(とどろ)いた刹那、両腕、両肩を鈴原姉妹(スズハラシスターズ)に引っ張られ、もとどおりに座らされてしまった……。

 やっぱり、ダメか……まったく落としどころが分からない……どうしよう……??

<登場人物>

岡本淳也オカモトアツヤ:主人公、男性、52歳、妻子あり、IT企業に勤めるサラリーマンかつ公認LGBT社員、人格は変わらないが、外観はレイカになっている

桐生麗華キリュウレイカ:女性、25歳、独身、ニューロ・コンピュータ・サイエンスなどなどの権威、故人、自律型AIに生前の人格をコピーし、DCのサーバに潜伏する。アツヤとは脳内チップを経由して会話する。古武術の使い手でもある

橘拓海タチバナタクミ:男性、21歳、独身、大学3年生、イケメン

鈴原倫スズハラリン:女性、19歳、独身、大学1年生、レンの双子の姉

鈴原憐スズハラレン:女性、19歳、独身、リンの双子の妹

横山由佳ヨコヤマユカ:女性、28歳、独身?、アツヤとは違うIT企業に勤めるサラリーマン、過去に男アツヤと一緒に仕事をした仲である

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ