34話 レイカの告白
『そこを……少し……読み違えてしまって……』
「は、はい……?」
いつも自信満々に言葉を発するレイカさんだが、今回は迷いを生じているように思われた。
『その……つまり……私はアツヤ君をてっきり同年齢かと……』
「……はぁー……」
フィジカル・インポートする相手の候補として、同年齢である25歳を指定したつもりが、52歳にしてしまったらしい……。
レイカさんらしからぬ、このうっかりミスについてはいろいろ原因があるようだ……ただ、急いではいた……なぜなら、死にかけていたから……とのことだ。
というわけで、見てくれとアンマッチなぼくの誕生とあいなったわけである。
ここで、レイカさんを初めて見た時のことを思い出した。
ぼくはとにかく彼女に憧れた……この人になって……世界を見てみたい……と。
そう……渇望したのだ。
そして今に至る……想いは現実になった……。
彼女の身体は今ここにある……ぼくの意思で動かすことができる。
しかも自律型AIとはいえ彼女の意識というか魂とも会話できる。
これはもうダメダメな主人公を救うため、なんちゃらえもんとかいう青いネコ型ロボットが憑い……いや、一緒にいるようなものだ。
そして、なんといっても強烈なのが、フォース・チェンジ/リロードだ。
これは、わずか1分間とはいえ人格をスパっと、ぼくからレイカさんに入れ替わるシステムである。
このシステムはほとんど反則だ。
なぜならレイカさんが物理的に現存することと同義だからだ。
彼女は知恵においてはニューロ・コンピュータ・サイエンスなどなど諸々得ていて、体術においては古武術の使い手とまさにパーフェクト・レディだ。
そんなレイカ様が1分間とはいえ、いきなり出現するのである。
対する相手は……お気の毒としか言い様がない。
先日のホテル街でのちょっとした騒ぎも、レイカさんがいなかったらどうなっていたことやら……今さらながらガクプルですよ……マジで。
「ありがとう、レイカさん……なんか頼ってばかりで申し訳ないです」
『ン……頼るとか頼らないとかの問題ではない……我々は二心同体……もはや切り離すこともままならぬ……従って……』
「ふたりで知恵を出し合って、課題に挑戦する……ですか?」
『うむ……そんなところだ……こちらこそ頼りにしているぞ』
「えっ!?……ぼくを頼りに……」
ここでまた、レイカさんと初めて会った時のことを思い出す。
彼女はぼくを見て「見つけた」と言っていた。
あれは一体何だったのか……?
『ン……それはだな、私を見て好意的に想ってくれたのはアツヤ君だけだったのだ』
「へっ!?……フィジカル・インポート候補って何人だったんですか?」
『ざっと男女合わせて1000人ほどだ』
「ひえええーー……ス、スゴい倍率ですね……めちゃくちゃツいているな、ぼく……」
『実を言うと、ほとんどの男は私を貫きたいと欲し、女は私に消えろと……』
「マ、マジですか?……ヒドいですね……よく心折れませんでしたね……」
『正直心折れたよ……私を受け入れてくれる人はこの世にはいないのだと諦めもした……が、君に出会ったわけだ……もう残り時間も少なかったし、君の生活環境などを悠長に調べている時間もなかった……なかば強引に事を運んだのだ……初めて君とコンタクトした時、君が受け入れてくれるかとても心配……を通り越して恐怖だったよ……意を決して声がけした時、君があまりにも優しく話してくれて、私はほんとうに心の底から安堵したんだ……あの時のことは決して忘れないだろう……君の暖かい言葉が私を救ってくれた……いまさらだが礼を言わせてくれ……ありがとう……そして、私は君が好きだ』
「レ、レイカさん……そ、そんな……あ、ありがとうございます……こちらこそ……」
彼女の心の内をぼくは知った。
そしてぼくの心もほんのり暖かくなった……ぼくはひとりじゃない、レイカさんがいると……。
……。
以後、無言で5分ほど歩くと家に着いた。
ドアを開けてリビングに行く……珍しく娘のハルが声をかけてくる。
「パパ……お願いがあるんだけど……」
・岡本淳也:主人公、男性、52歳、妻子あり、IT企業に勤めるサラリーマンかつ公認LGBT社員、人格は変わらないが、外観はレイカになっている
・桐生麗華:女性、25歳、独身、ニューロ・コンピュータ・サイエンスなどなどの権威、故人、自律型AIに生前の人格をコピーし、DCのサーバに潜伏する。アツヤとは脳内チップを経由して会話する。古武術の使い手でもある
・岡本遙:女性、19歳、アツヤ/ユキナの娘、大学1年生




