1話 想いは現実になる……近い将来
ここは文京区駒込のとあるオフィスビル。
岡本淳也のその日の仕事は夜10時に終わった。
いつもだったら寝ている時間であるが、この日に限って眠くはなかった。
その理由は金曜日だったことと、明日から一週間休みということが仕事の励みになったからだ。
最後までやるべきことをやったという達成感、明日から休みという解放感で、少しテンションが上がっていた。
エレベータホールは常夜灯に切り替わっていた。
ビルの地下出口に向かうべく、エレベータの下降ボタンを押す。
少しするとエレベータが到着した。
中には、ひとりの若い女性が立っていた。
ぼくと同じくらいの身長。
ちょこんと頭を前に傾け、そそくさとエレベータに乗り込む。
スライドドアが閉まるとエレベータは下降しはじめた。
一緒になった女性をあらためて見る。
そこに実在しているのが嘘のような綺麗な人だった。
憧れた。
この人になって、世界を見てみたい。
この時、強くそう思った。
理由はわからなかった……この当時は。
「見つけた」
その流麗な声を聞いた瞬間、目の前が真っ白になり、すべてが光に包まれた。
あまりにも眩しかったので、必死に目を閉じる。
どれくらい時間がたったかわからない。
まぶしさを感じなくなってきたので、ゆっくり目を開けてみる。
同乗していた女性はいなかった。
途中のフロアで降りたのだろう。
エレベータが示す現在のフロアは13階だった。
ふとエレベータ内に設置された等身大の鏡を見る。
先ほどの女性が立っていた。
艶やかで腰の下まで流れるロングヘア。
母性を象徴するかのような豊かな胸。
本当にこの中に内臓が詰まっているのかと疑ってしまうほどの細い腰。
腰の下の、ほどよい肉付きの部位からスラリと脚が伸びている。
顔は卵形。
美しく澄んだ瞳。
鼻は高く、筋が通っている。唇は薄くもなく、厚くもない。
そして全身、白雪のように透き通る肌で、白い幅広帽子とワンピースを着ていたにもかかわらず、肌の白さが際立っていた。
状況がつかめず混乱する。
思わずギュッと目をつむった。
そしてまた、ゆっくりと目を開けてみる。
今度はまぎれもなく、ぼくが映っていた。
「ホログラフ!?まさかね……」
小さく独り言をつぶやくと、エレベータのドアが開いた。
地下エレベータホールからビルの出口に向かい、帰途についた。
<登場人物>
・岡本淳也:主人公、男性、52歳、妻子あり、IT企業に勤めるサラリーマン
・若く美しい女性:?
・2020.9.10.Thu 修正しました。




