タッグトーナメント(8) ☆
「ユーリ選手、ラーニングしたスキルで互角どころか相手を凌駕したぁーーっ!! ここでシルシ選手脱・落です!」
「フラガラッハがユーリ選手の切り札のようですね。味方の魔術で受けたダメージを攻撃力に上乗せするとは意外な戦法を取られたものです」
「タユラ選手厳しい闘いに……。おや? 何やらタユラ選手の様子に変化が起きています! 髪の色と、眼の色が金色へと変わって……! これは一体どういう事かーーっ!!」
「これは……。神をその身に宿したため、急速な変化をしたという事でしょうか。言霊を操る”鬼の口”の所持者がいると、風の噂で聞いたことがありましたが……タユラ選手だったとは驚きです」
「なんとタユラ選手、召喚するだけでなく神を宿した! これにどう立ち向かうか、ユーリ&クラウディア選手!」
* * *
目の前の少女は、異質な空気感纏っていた。
金色に輝く瞳が睨むと、思わず竦んでしまう程の凄みがあった。
……あれが、あの少女だって?
1分前とは明らかに違うじゃないか。
『ブレイジングショット!!』
朱が火炎魔術を先んじて撃ち込む。
火球はタユラに向かって飛来するが、タユラの周りを覆う何かの障壁に当たって霧散してしまう。
朱は何度も火球やら炎槍やらを撃ち込むが、全て見えない障壁に阻まれる。
「な、なにあれバリア!? 卑怯じゃない!?」
「もっと強い攻撃を撃つしか……。朱、必殺技は撃てるか?」
「アレ、ユーリにも被害が行くけど、いいの?」
「つべこべ言ってると近づかれるぞ! 頼む!」
「……理を捻じ曲げ黒天より飛来せよ灼熱の流星! 罪深き者に死の烙印を! 穢れた大地を灰燼と帰せ!!」
『メテオインパクト!!』
朱が呪文を発動すると、空に黒い雲が立ち込め、雷が飛び交うようになる。
ゴゴゴという大きな音を立て、巨大な隕石塊が黒雲を貫いて落下してきた。
前と違って大きな塊になってる!
「落ちろぉぉぉーーーーっ!!」
隕石塊が激突する寸前で、タユラは宙に向かっておもむろに手を上げる。
するとタユラを覆う障壁が一層大きくなった。
轟音と共に隕石が爆発する。
辺りに隕石の破片が飛び散り、爆風によって少し吹き飛ばされてしまった。
そして煙が晴れた先に現れたのは……抉れた大地と、その中心地にいる少女。
「嘘っ、無傷!?」
「こいつぁ、たまげたな……」
タユラは背後から弓をとって、矢を番えずに弦を引く。
すると光輝く矢が出現して、キュィィィという音を出す。
狙いの先は俺……ってことは、避けないとマズいじゃん!
「その命をもって姉様に償いなさい、ユーリ!」
『天神大射!!』
咄嗟にスキルで緊急回避をすると、極太の光矢が頭をかすめ、背後にあった闘技場の壁面を大きく破壊した。
何という威力。避けなかったら死んでたわ!
「どうすんのよユーリ! あいつ、超ヤバいわよ!」
「不味いな……勝てるビジョンが思いつかないぞ……」
「ちょっとーー! 知恵を絞りなさいよ!」
「とは言ってもな。あの神バリアがある限り俺達に勝ち目なんてないぞ。俺のスキルじゃ突破できそうにないし……」
話してる間に光の矢は次々と飛んでくるので必死に回避する。
あの神降ろし状態のタユラは執拗に俺を狙ってくるな!
「……アレを何とか出来ればいいのよね?」
「うん? 方法があるのか?」
「ひとつだけある。けど、その方法を発動したら私は動けなくなるから。……ちゃんと試してないから、上手くいくかは分からないわよ!」
「分の悪い賭けってか。けどいいぜ、乗ってやる!」
「……信じてるわよ、アンタならやれるって」
「――心火を持って鋼を打ち、全霊を持って刃を成す! 我は神殺しの剣、ヴェシュヴィアール!!」
詠唱をすると、朱の身体がモーフィングするように一振りの剣へと変わっていく。
鋸のような細かい刃が付いた、美しい刀身の赤い両刃剣だった。
《何してるの、早く私を手に取りなさい!》
地面に刺さった剣が頭に直接語りかけてきた。
俺は光の矢の追撃を躱し、剣となった朱を拾い上げて決闘場を駆け回る。
《動けなくなるって、剣になるからかよ!》
《そう。これこそ対神兵装ヴェシュヴィアール。この神殺しの刃なら神の護りだって切り裂いてみせるわ》
《そりゃすごい。けど自分が剣になっちまうだなんて、一人の時じゃ使えないな》
《元々はアナスタシアと二人で使う技だったもの。……って、そんな事はいいから!》
《はいよ。恩に着るぜ、朱!》
赤い刀身の神殺し・ヴェシュヴィアールを手にした瞬間、力を感じた。
こいつなら、いけるかもしれん!
「覚悟しな神様よぉ! こっから反撃だ!」
「何を言います。貴方は私に近づくことすら出来ません!」
『流星尾引!!』
タユラがスキルを発動すると、ホーミングレーザーのように何本もの光の矢が飛んで来た。
雷迅脚を使って逃げ回るが、避けきれない矢を剣を使ってガードすると剣から抗議の声が上がった。
《ちょっと、あんまり乱暴に扱わないでよね!》
《す、すまん。感覚繋がってるのか》
《この状態はあまり長く持ちそうにないから、早く決着して頂戴。支援してあげるから!》
『瞬間加速!!』
朱が支援魔術をかけたらしく、移動が高速になった。
これなら撹乱しつつ接近すれば……。
「させるものですか! 貴方はここで斃れるのです、ユーリ!!」
『天光乃矢・神撃!!』
タユラは扇状に広がる無数の光の矢を二連続で打ち込んできた。
こんな物量、さすがに捌ききれねえ!
《朱、ジャンプする! 支援してくれ!》
《しょうがないわね!》
『跳躍!』『飛翔!』
朱の支援を受けて跳躍すると、いつも以上のジャンプで光の矢を躱す事ができた。
このままタユラに向かって落ちながら斬りかかった。
「俺と朱で、神の護りを打ち砕く!!」
『神破・鳴響渦穿!!』
タユラの障壁にヴェシュヴィアールが触れる。
大渦が激突し、辺りに衝撃波が発生して、やがて障壁に罅割れが広がっていく。
そして、パリインという音と共に障壁は消え失せた。
「天照大神の八咫鏡が敗れるなんて……!」
驚愕するタユラに向けて切りかかり、すんでの所で刃を留めた。
「勝負ありだ。負けを認めてくれ、タユラ。」
「姉様は全力で闘って散りました! ならば私も最後まで闘うまで!」
「死ぬまで闘うのが戦じゃないだろ。それにタユラまで殺したくはない。シルシが悲しむと思うんでな。だから、負けを認めてくれ。頼む」
「ぐっ……卑怯ですよ、姉様の事を言うなんて。……分かりました、今回は私達姉妹の敗北のようです」
審判が勝負を告げると、会場に大歓声が巻き上がる。
俺は刀を下ろすと、深くため息を付いた。
あぶねえー。もうちょっとで彼女が変化した剣で、女の子をぶった切る所だった。
流石にそれは後味悪すぎる。回避できてよかったぁぁぁ。
こうして初めてのタッグトーナメントは勝利で終えたのだった。




