朱の昇格戦
「タッグトーナメント?」
「そう。来週から闘技場で開始されるらしいの」
星降り祭から数日後。
毎日のように訪ねて来る朱から、そんな話を聞いた。
……それにしても、ここに来ていきなりトーナメント?
えらく趣向が違うな。
「それってどういうものなんだ?」
「新星ランクの人同士でタッグ組んで、2対2のチーム戦をする特別ルールのトーナメントらしいわよ。決闘ルールとは違っていて、勝利すればタッグチームに戦績がついて、負けてもペナルティはないみたいね」
「何チームくらい出るんだ?」
「さあ? でも、新生ランクの闘技者ってそこまで居ないんじゃないの?」
そういや、例のリゾートホテルでも闘技者っぽい人をあまり見なかった。
チーム数の少ないトーナメント形式だったら対戦数は少なそうだな。
それにしてもチーム戦か……。
タッグ組む相手のスキルとか戦術分かってないとチーム戦なんて到底できないぞ。
「面白そうだが、誰とタッグ組んだものかなぁ」
「えっ!?」
予想してない発言を聞いたかのように驚く朱。
……あれ、もしかして誘って欲しかったのか?
「ちょっとユーリ、本気で言ってるの!?」
「いやいや、朱ってまだ新星ランクじゃないだろ? 昨日そう言ってたじゃないか」
「だとしても、一緒に組もうって言うべきでしょ! ユーリのバカ! おたんこなす!」
朱はヘソを曲げてしまった。
おう……失言だったか……。
「スマン朱! 悪かったって。タッグ相手、俺でよければ歓迎するぞ?」
「取り繕うため言ってるんじゃないでしょうね……」
「本当だって! 朱は遠距離、俺は近距離。どんなレンジの闘いにも対応できる俺達はタッグ相性バッチリだろ?」
「相性……ふうん……」
「朱の昇格戦には絶対応援しに行くから、機嫌直してくれよ。なっ!」
「ふん、分かったわよ。絶対遅れず来なさいよね!」
朱は昇格戦の日程を伝えて帰っていった。
ちょっと前までヘソ曲げてたのに、いつの間にか上機嫌になっていた。
……女心っての、よくわかんねえな。
* * *
後日、朱の昇格戦を観客席で見届けた。
相手はウェポンマスター・マスティン。
弁慶かと思うほど背中に様々な武器・防具を装備した、髭を生やした背の低い爺さんだった。
この爺さん、状況に応じた武器をハンマーで作り上げるという離れ業を実演した。
朱の得意技が火炎魔術だという事をに気付いた爺さんは、背中から槍と盾を取り出し、ハンマーで叩いて即席の氷属性付呪をかけたのだ。
対する朱は、遠距離からの射撃が効果がないと見るや否や、至近距離でのガチンコバトルを挑む。
炎の剣を出して斬り込みながら、隙を見て火炎魔術を至近距離でぶっ放す朱。
隙間なく打ち込まれる攻撃に、爺さんは氷の盾でガードを固めた。
火炎魔術が途切れたタイミングを見計らって、渾身のカウンター突きを放つ爺さん。
しかし、それは誘導された攻撃だった。
緊急回避技、『陽炎』を使って爺さんの真後ろに出現した朱は、全身を球形の炎に包みながら爺さんに突撃し、その勢いのまま決闘場の壁へと激突した。
爺さんは丸焦げにされてKOとなり、朱の勝利かつ新星ランクへの昇格が決定した。
遠くから見てても、この闘いには負けられないという気迫を感じる闘いだった。
朱、そんなにタッグを組みたかったんだろうか。
……勝ちを狙うとなると、色々戦術考えないといかんな。
そして翌週、8組・16名によるタッグトーナメントが大々的に開催される。
俺と朱はタッグパートナーとして、熱狂渦巻く闘技場へと足を踏み入れた。




