星降り祭 その4
ミウと呼ばれた少女の歌声は、そこまで上手くないと思っていたけど、彼女のパフォーマンスと一所懸命さに、次第に目が離せなくなっていく。
いつの間にか彼女は全6曲を歌いきり、感謝の言葉を伝えてステージを後にしていた。
「……はっ! 普通に聞き入っちゃった。あの子何者!?」
「ミューちゃん自身って事はないよな? 声が違うし、見た目も違う」
「曲は全部ミューちゃんのよ。それを知ってるって事は……」
「俺達と同じ転移者って事だな」
そうか、ゲーム世界に来るのは戦うキャラばかりじゃないんだ。
彼女の異能力は歌声に関する事だろうか。
でも、歌声は普通だったような……?
思案していると、会場でアンコールを呼ぶ声が聞こえてきた。
衣装直しをした少女が舞台袖から現れると、会場に大きな歓声が上がった。
「みんな、アンコールありがとーーっ!」
「今日は流れ星が見える日だから、最後にこの曲をお届けするよっ! 流星スターライトメモリー!!」
これ、私の好きな曲だ。
少女が星空の下で告白するってストーリーの曲。
まさかこっちの世界でこの曲が聞けるとは思ってみなかった。
ミウと呼ばれた少女は衣装を煌めかせ、会場に歌声を響かせた。
笑顔の少女のステージに、会場の皆が魅了されているのが分かった。
私もコスプレ会場でそれなりに注目を集めたことはあるけど……こんなにも大勢の心を動かすなんて、スケールが違う。
ありがとミウちゃん。この曲を聞いて、何だか勇気が湧いてきたよ。
アンコールの曲を持ってミウちゃんのライブは終了となった。
外に出たら、辺りは茜色に染まっていた。
「って、もう夕方じゃない!!」
「悪い悪い、こんなに時間かかるとは知らなかったんだよ。……そういや、この後はどうするんだ?」
「今日は星降る日なんでしょ。当然、見に行くわよ!」
星見の丘と呼ばれる小高い場所が、星を見るのに最適だと学園長に教えてもらったのだ。
屋台で食べ物を買い込んで、丘に向かった頃にはもう夜空が見えていた。
星見の丘には既に人が集まっていけど、人気の少ないに腰を下ろす。
「へー、結構はっきりと星が見えるなぁ」
「王都は街灯が少ないから、かしらね?」
しばらく空を眺めていると、いくつもの筋状に尾を引いた光が見えてきた。
露光することで星空が筋状に光っている写真があるけど、そんな感じの光景が目の前に広がっている。
「スゴイ、あんなの見たことない」
「あれが流星か? この世界だと光が消えないんだな」
尾を引く光が、ずっと残る花火のようにキラキラと輝く。
それを見て、随分と遠い所に来てしまったんだな、と感じてしまった。
隣で夜空を眺めるユーリを見てたら、不意に言葉が出た。
「ユーリは、元の世界に戻りたい?」
「……ん? そうだな……」
少し考えてからユーリは言葉を続けた。
「俺はこの世界の行く先を、もうちょっと見てみたい。……仮に元の世界に戻れたとしても、まだ戻る気はないかなぁ」
「ふうん……そう」
「朱は、どっちの世界の方が好きなんだ?」
「そんなの、こっちの世界に決まってるわ」
願ってやまなかった力を手に入れて、自由に振る舞える世界。
夢のような世界だと思っていたけど……。
最近はふとした事で不安になる事が多くなっていた。
もし、クラウディアがまた暴走したら。
もし、アナスタシアが何処にも居なかったら。
もし、”村雲朱”という人格が消えてしまったら――
そうした時にいつも思い浮かべるのは、お節介を焼いてくるアイツの顔だった。
……そろそろ、話すべきかもしれない。
ユーリを呼び出した真の理由。
「助けてやるって……言ったわよね」
「ん?」
「闘った時そう言ったでしょ。私がまた暴走したら、ユーリは助けてくれる? 私が困ってたら、手を差し伸べてくれる?」
「俺でよけりゃ、いつでも駆けつけるさ。これも縁だからな」
縁があるから、助ける。
ユーリにとって私は顔見知り程度ってコト。
「……あんなにお節介焼いてきたのに、その程度の扱いだなんて腹立つ」
「ええ? どう言えばいいんだよ?」
「特別だって言ってくれないとヤダ」
「おいおい、それって……」
「私、結構強欲なのよ。そんな言葉じゃ満足できないの」
私は溢れる感情を押し止めず、口から言葉を紡いだ。
「好きよ、ユーリ。他の誰よりも。私の全てを捧げるわ。これからも、一緒にいてくれる?」
一世一代の大告白。私の顔は一瞬で真っ赤になっていたと思う。
驚きのあまりユーリはとんでもない変顔をしていた。
ユーリは少し考えた後、私をまっすぐ見て返事をした。
私は生涯、この日を忘れることはないだろう。
流星が煌めく神秘的な夜空の下、私達は互いに見つめ合いキスをした。




