星降り祭 その3
* * *
星祭り最終日。
昼の鐘がなる一時間ほど前に、アイツを訪ねて下宿先までやって来ていた。
玄関に現れたユーリはいつもの格好だ。
「アンタ代わり映えないわね。もっとお洒落しなさいよ」
「あれ、朱? どうしたんだ、その格好!」
「何って、浴衣だけど……」
「浴衣なんてこの世界にないだろ。一体どうやって?」
「そんなの、私が縫ったに決まってるじゃない」
無い衣装は作るのがコスプレーヤーという人種だ。
素材集めにはちょっと大変だったけど、作ること自体は慣れているからさほど苦労はしなかった。
浴衣姿がユーリの興味を惹いたのか、いくつか質問攻めにあった。
な、何か衣装に関しては反応いいわね。
「って、そんな事よりそろそろ行くわよ」
「行くって祭りにか?」
「当たり前でしょ」
「……意外だ。そういうの誘うタイプだったんだな」
「別に。気分転換にどうかって学園長から言われただけよ。1人でもつまんないし」
「へぇ。……その浴衣、ピンクの花柄が朱の髪色に良く似合ってるな。可愛いじゃん」
「……フン、私が作ったんだもの。当然よ!」
やば。今のちょっとドキッとした。
こんなの少し褒めただけじゃない。落ち着け私。
私は顔の赤さを誤魔化すようにして、中央の噴水広場へと向かった。
噴水広場にはそこかしこに屋台が並び、呼び込みの声が聞こえてくる。
私は早速ソースのいい匂いのする屋台へと並んで購入した。よく見ると焼きそばソックリの品だった。名前は違うけど。
その後も屋台を巡り歩き、次々と食べ物を購入していった。
「ってオイ、買いすぎだろ! 全部食い物じゃねーか!」
「……ふぇ? 祭りって出店回るものじゃないの?」
「いやまぁ、それも醍醐味ではあるけどさ」
「私、お祭りってあまり来たことがないのよね」
兄も姉も祭りに興味がなかったし、親がスパルタだったからなぁ。
随分とひもじい子供時代を過ごしたものだ。
「だからこそ、一度はやってみたかったお祭りの屋台全制覇、試してみたいのよ!」
「マジか。子供みたいな夢だな」
「何言ってるの。子供じゃないから実現出来るのよ」
「はっ、嫌いじゃないぜそういうの。その話乗った!」
単純なユーリならそう言うと思った。
それからユーリと屋台を巡り歩き、種類違いの食べ物を買い漁った。
全部で11種類。イカ焼きみたいな海鮮系から粉物や果物系スイーツなどバリエーション豊富だった。
……現実さながらのラインナップじゃない。
流石に全部は食べきれないので、戦利品をユーリと分け合って食べた。
美味しいスイーツに舌鼓を打ち、イマイチな品はユーリに押し付ける。
アイツはどの品もいけるいけると言って食べていた。
一通り食べて互いに一息を付く。
少し間をおいて、ユーリが話しかけてきた。
「そういや、学園長とはちゃんと話出来たのか?」
「うん、そっちは大丈夫。全部話を聞いて受け止めてくれた。いい人だよ、学園長は」
「よかったじゃん。追い出されなくてさ」
「……心配する所はそこなの?」
「そういや、俺が連れられた所は何処なんだ? 朱もそこに住んでるんだろ?」
「理力の塔と呼ばれる塔よ。ほとんど高層ビルみたいなものだけど」
「その塔について何か知ってるか? 何かのゲームで見たとか」
「うーん……憶えてない」
「そうかぁー」
「……不思議な話だよね。見知らない物が沢山あるのに、見知ってるものがあまりない。アナスタシアはいないし、学園長はギルドマスターだし。まるで継ぎ接ぎだらけのパッチワークみたい」
「それは俺も感じてる。けど、いかんせん情報が少なくてなぁ……」
思考に耽るあまり、会話が途切れてしまった。
何か話さなきゃと思ったら、ユーリがぽんと手を叩いた。
「よし、気分転換に行こうぜ! 朱、ちょっとくらい時間あるだろ?」
「何よ。どこ連れていく気?」
「評判が良い歌劇があるって聞いてな。俺も興味があるし、今から行ってみないか?」
ユーリが案内した先は王都の繁華街にある大歌劇場だった。
歌劇場の外には長蛇の列が並んでいたが、ユーリはすんなりと大歌劇場の入口で顔パス入場した。
「えぇ、何でアンタすんなり入ってる訳。あっちの行列は?」
「新星ランクに入ると色々と特典があるんだよ。正にスター扱いって訳だ」
新星ランクってそんなに優遇されるの!?
連れという事で入場が許されて、おっかなびっくり付いていく私。
会場を目にして驚いた。
舞台を取り囲む数万の客席に、豪華絢爛な劇場空間。
うわぁ。現実でもこんな大きいコンサートホール入ったことない。
劇場の二階席で待っていると、客席に集まった人達がコールをしていた。
そのコールはやがて会場一帯へと響きわたる。
「……なにこれ? そもそも何のステージな訳?」
「どうも、歌姫と呼ばれる子のライブが凄いらしくてな。皆ベタ褒めするんだ」
「ライブ? それってどういう……」
そう言いかけた時、ステージ中央にアイドルのような派手な衣装を着た1人の少女が現れた。
「みんなーーっ、今日はミウのステージに集まってくれてありがとーっ!! 」
「1曲目行くよ! 聖剣・シャイニーフレアソング!!」
いつの間にかバックダンサーを携えて、女の子はアイドルのように歌って踊り出した。
割れんばかりの歓声が上がり、客席は大盛りあがりとなる。
……って、そんな事より!
「「この曲って……!」」
私とユーリは互いに顔を見合わせる。
一時期ネットめちゃくちゃ流行った曲。
動画サイトでは断トツの再生数を誇る、電子の妖精・ミューちゃんの代表曲じゃない!




