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星降り祭 その2

 星降り祭2日目。

 祭りを一緒に見て回るため、待ち合わせ場所でナズナが来るのを待っていた。

 それにしても女子とデートだなんて少し緊張するな。

 何故かナビコは着いてこなかった。祭りとか好きそうなのに意外だ。

 そんな事を思っていたら、ナズナがやって来た。


「お、お待たせしました……」


 ナズナは胸元に黄色いリボンと裾にラインが入ったコートとミニスカートを着て、ハイソックスを履いていた。

 全体的に白色のコーデとなっていて、お嬢様学校の学生服のようだ。


「可愛いね。ナズナによく似合ってる」

「そ、そそそんな! ありがとうございます」


 対して俺は黒ジャケットにズボンといういつもの主人公装備ではあるが。

 主人公であるというアイデンティティだから、俺はこれでいいのだ。

 ナズナと話して、中央の噴水広場から出店を見て回ることにした。


「うっわぁ、すごい人だかりだな」

「この国で一番大きなお祭りですから」

「ナズナは行きたい所ある?」

「私はユーリさんと一緒に祭りと楽しめれば、何処でも大丈夫です!」


 ナズナは雰囲気を楽しむ系かな。

 プレゼントを渡したいし、小物屋とか露天商を見て回ってみるか。


「そこのお兄さん、絶品の串焼きはいかがかね? 今なら待ち時間なしだよ!」

「ん、この声……あ」「あ」


 聞いた声が聞こえたので振り返ると、見たことのある少年が出店の前で呼び込みをしていた。


「拳法家の……誰だっけ?」

「ジンラだよ! アンタ、俺のスキルを盗んで使ってるだろ! 会ったからには、ここで再戦を申し込む!」

「おいおい、祭りで喧嘩はご法度だろ?」

「なら、大道芸でどっちが客を呼び込めるか、勝負だ!」

「ええぇ? こっちには連れがいるんだよ。他を当たってくれ」

「逃げるのか!? 女連れだから恥かくのが怖いんだな! はっ、百技とか呼ばれても大したことねえな!」

「……む」


 カチンと来た。ここまで言われて引き下がるのも癪だ。


「いいぜ、そこまで言うなら受けて立ってやるよ」

「そうこなくっちゃな!」


 こうして、拳法家のジンラと曲芸対決が始まった。

 俺は剣3本の空中投げ……というお手玉を披露し、少年は不安定なボードの上で逆立ちをするバランス曲芸を披露した。

 少年の威勢のいい声も相まって、広場で大道芸をする俺達のみるみるうちに人が集まって来る。

 俺も少年もテンションが上がり芸をヒートアップさせたけど、思ってる以上に人だかりが出来てしまったので、キリのいい所で締め事にした。

 2人して一礼をすると、周りから拍手が沸き起こった。


「アンタ、中々の剣捌きだな。やるじゃないか」

「これで満足だろ? もう行くぞ、俺は」

「次は絶対負けないからな!」


 まだ勝負諦めてないのか。

 大道芸やってる方が向いてるんじゃないか、あいつ?


「すごいです、ユーリさん! 本物の芸人さんみたいでした!」

「このくらいならお手の物ってね。……ほっぽっちゃてごめんな、ナズナ」

「いえいえっ大丈夫です!」


 その後はナズナと一緒に露天商を巡ることにした。

 ナズナは小物の中でもブローチやピアスなんかが好きなようで、真剣な表情で見ていた。

 お店巡りぐらいしかしてないが、ナズナは随分楽しそうにしていた。


 大通りから少し外れた所にあるアンティーク調の店に入ると、店内には珍しい品が並んでいた。


「へえ、機械仕掛けの品か。面白いな……」

「この蝶のブローチとか、羽が動きますよっ」

「猫の置物も尻尾と目が動くな。一体どうやって作られてるんだ?」


 機械仕掛けの品は、どれも精巧な作りの品ばかりだった。

 まるでおもちゃ箱のような店だ。


「…………いらっしゃいませ」

「うおっ!」


 背中の方から声が聞こえて驚きの声を上げてしまった。

 まるで気配を感じなかったが……こんな事、前にもあったような。

 振り返ると、侍従服を着た茶色のショートヘアの少女がカウンターの向こうに座っていた。


「あ! 君、鎖剣チェインソード使いの……!」

「……どちらさまです?」

「憶えてないんかい! ユーリだよ。君と闘っただろ?」

「あぁ、あの方ですか」


 それっきり会話が途切れた。

 名前なんだったけ、この子。えーっと、確か……ロゼッタかな。


「何で君がここに?」

「店番ですが?」


 さいですか。てっきり暗殺者かと思ってたけど、違うんだ。

 彼女の視線は手元の本に注がれていて、こちらに興味はないらしい。


「ここにあるものは君が作ったのか?」

「この店にあるもの全て、叔父の作った品です」

鎖剣チェインソードも?」

「ええ。叔父の最高傑作でした」

「悪かったよ、壊しちまって」

「……別に、仕方のない事ですから」


 感情には出ていなかったが、鎖剣チェインソードは彼女の大切なものだったんだろう。

 とはいえ、あそこで対抗しなかったら四肢切断されて死ぬ所だったしな。

 ロゼッタの言う通り、今更悔やんでも仕方ない事だ。

 ……今できることはない。また今度寄ることにするか。


 俺達はロゼッタの店を後にして、遅めのランチを取る事にした。

 行きつけの中でも特に美味い店に連れていったら、ナズナはかなり喜んでいた。

 店でナズナと色々とお喋りをした。

 宿の事、この街の事、闘技場の事……。

 勝ち続けてる俺が凄いと褒めてくれたが、面と向かって言われると少し照れるな。


 やがて話す事もなくなってくると、ナズナから


「……ユーリさんは、貴族街に引っ越ししちゃうんですか?」

「ん? 知ってたのか。……今の宿も気に入ってるし、どうするか考え中でな」

「ユーリさんは強いですから、いつか遠くにいっちゃうと思ってました」


 ぽつりと呟いた彼女の横顔は、どこか寂しげな表情をしていた。


「そんな表情しなさんなって。ナズナにはいつも感謝してるんだぜ。こいつはそのお礼だ。受け取ってくれないか?」

「……え?」


 差し出されたプレゼントを見て、ナズナはきょとんとした。

 中身は白銀で作られた花のブローチ。ナズナが真剣に見て購入を断念した品を、後でこっそり買っておいたのだ。


「これ……!」

「ナズナに似合うと思ったから、プレゼントだ。遠慮は禁物だぜ?」

「ありがとうございます、ユーリさん!」


 ナズナは花のように笑顔を咲かせて喜んだ。


 気がついたら夕暮れ時。

 ブローチを付けた上機嫌のナズナと一緒に、宿へと帰る事にした。

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