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星降り祭 その1

 俺は銀髪ショートボブで胸の大きいお姉さんに、この場所の事を教えてもらった。


 このリゾートホテルは新星ランク以上の闘技者の宿泊施設も兼ねていて、客数は200室以上。

 やはり建物の豪華さに比例して一流のサービスが行き届いているらしく、ここでの暮らしは快適そのもので、何一つ不自由しないらしい。


 というか、このお姉さん俺よりも先に新星ランクに上がったんだよな。

 見る限りそんなに強くはなさそうだけど……。


「もしかしてタムタムさんもゲーム世界に落とされた、とか?」

「んにゅ? ゲーム世界って、何?」

「ああ、いいです。気にしないでください」

「なにそれ、気になるー!」


 お姉さんはゲーム世界について知らないような反応だった。

 という事はこっちの世界の実力者か。

 このランク帯になれば転移組と会う事もあるかと思ったけど、いきなり探りを入れるのは怪しかったな。

 それにしてもどういう闘い方するんだろう。ちょっと気になるな。


「何をしてる、タムタム」

「ウドゥちゃんハロハロー♪ 新入りのユーリ君にここの事を教えてあげてたんだよ~」

「……フン」


 いつの間にか背後から銀髪オールバックで筋肉隆々の青年が現れた。

 胸板を出し、毛皮の服というワイルドな格好をしている。

 な、なんか鋭い眼光で睨みつけられたんだけど……。

 お姉さんの彼氏とかかな。


「ホレ、油を売ってないで行くぞ」

「あーっ、待ってよウドゥちゃん!」


 ウドゥと呼ばれた青年はこちらに背を背け、入口の方へと歩いていく。


「そうだ、引っ越しをするなら星降ほしふさいの後のがいいと思うよ。それじゃあユーリ君、まったね~♪」

「あ、ちょっと! お姉さん!?」


 静止の声も虚しく、お姉さんは青年を追いかけて行ってしまった。

 ……星降り祭? なんじゃそれ? 


 突っ立ってる訳にもいかないのでフロントにいる従業員に話を聞きに行く。

 正式な部屋の契約をする為には今住んでる場所を引き取る必要があり、手続きさえ住めば宿泊費は大会本部持ちになるという説明だった。

 どうするかは一旦考えるとフロントマンに伝え、ホテルを後にする。


 貴族街からの帰り道、引っ越しについてナビコと相談してみた。


「ホテル暮らしに憧れはあるけど、繁華街から遠くなっちゃうのがなぁ……」

「ボクは何処だっていいよ。ユーリのしたいようにすれば?」

「ふーむ、どうするかねえ」


 考えつつ歩いていると、いつの間にか平民街の境にあるアルゴンの門まで来ていた。

 丁度向こう側から歩いてきた人と目が合う。……あ、朱だ。

 相手はここで俺と会ったことが予想外なようで、指差ししてきた。


「あーっ! こんな所にいた!!」

「……どうしたんだ?」

「アンタどこに行ってたのよ! あちこち探したのにいなかったじゃないの!」

「そりゃ貴族街に来てたからな。俺に用事だったのか?」

「そうよ! えっと………」

「どうした? 用事があるんだろ?」


 用事があると言った割には口を噤む朱。

 心なしか顔が赤く見えるのは気のせいか。


「ユーリ、三日後は丸一日予定空けときなさいよ! いいわね!!」

「お、おう?」

「じゃあ、三日後に迎えにいくから。……絶対約束守りなさいよね!」


 言いたい事だけ言うと、朱は立ち去ってしまった。

 探し回った割に、伝言だけ?

 な、何だったんだアイツ……??


 * * *


 その後、俺はいつもの仮宿へと戻って来て、ナズナに迎えられた。

 やっぱり落ち着くな、ここは。


「ナズナ、ちょっと聞きたいことがあるんだが。……星降り祭って知ってるか?」

「はい! いよいよ明日からですね。楽しみです!」

「すまん、そもそも祭りの事自体よく分かってなくてな。どういう祭りなんだ?」

「私もお義父さんから聞いただけですが……元々は”星詠み”という宣託の儀式だったのですが、王都が大きくなるにつれてお祭りへ変わっていったらしいです。今では、三日三晩続く大きなお祭りとして開催されています。夏の風物詩なんですよ」


 ふーん。夏祭りみたいなもんか?

 こんなイベントは知らなかったが、どうも伝統的な祭りっぽいな。


「随分長いことやるんだな」

「豊穣を祈る祭りや、神に祈る祭りが合わさったとも聞きました。祭りの最中は珍しい品が市場に出たり、大きな催し物もあるので、この国で一番来訪者が多い時期なんですよ!」

「へえ、面白そうだ。俺も色々覗いてみるかなぁ」


来訪者が多いという事は、人探しするいい機会かもしれない。

久しぶりに情報屋に寄ってみるとするかな。


「あ、あのっ。……ユーリさんはどうされる予定ですか?」

「特に予定はないから、適当にぶらつこうと思ってるけど」

「……じゃ、じゃあ! 最終日、ご一緒に会場を周りませんか!?」

「お、おう。別に構わないけど……」


 普段大人しいナズナが何故かぐいぐい来る。

 呆気にとられていたら、ポーチからナビコが口出ししてきた。


「ちょっとユーリ。最終日って3日後でしょ。あの子との約束はいいの?」

「あ、そうだった。……悪いナズナ! その日は先約があってな」

「そうですか……」


 しゅんとするナズナ。気落ちさせてしまったか。

 日頃お世話になってるし、少しくらいナズナにお返ししたいんだけどな。


「祭りは3日間もあるんだろ。ナズナさえ良ければ、明日か明後日どこかで一緒に見て回らないか?」

「えええ、良いんですか! 是非是非おねがいしますっ!」


 ナズナは花のように笑顔を咲かせた。

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