新星ランク
決闘の後に闘技場受付へ向かうと、元気娘のスピカとクールなデネボラの2人が出迎えてくれた。
「あれ? 2人なんて珍しいですね」
「ふっふっふ、チーフったらユーリさんの勇姿を目に焼き付けたいって言い出しましてニャ」
「違います。今のはこの子の冗談ですので無視して下さい」
「ああっつれないですニャ、チーフ! 記念すべき新星の誕生ですニャよ!? 今だけでもサービスしないとですニャ。ほらほら、例のやつお願いしますニャ!」
「ええぇ……。本気なの、スピカ?」
「マジもマジですニャ!」
スピカが目を輝かせてデネボラを催促している。
何の話だ? と思っていたら、2人してこちらを見て……
「新星ランクへのランクアップ、おめでとうございますニャー!」
「新星ランクへのランクアップ、おめでとうございます……わん」
声を揃えて俺の昇格を祝ってくれた。
こういうの、シンプルだけど嬉しいぞ。
「……わん?」
「チーフはちょっとお硬いですニャから、可愛くなるようアレンジですニャ!」
「この子がどうしてもというから仕方なく……」
「チーフゥ、語尾が抜けますニャ!」
「仕方なくです、わん。……やっぱり変じゃない、これ?」
「そんな事ないですニャ。とっても可愛いですニャ! だから、語尾徹底しましょうニャ!」
「えぇ……?」
部下のハイテンションに逆らえず、戸惑いながらも演技するのも何かこう……悪くないな!
「さてさて、昇格戦を勝ち抜いたユーリさんにはご褒美が出ておりますニャ。賞金入りの、新しい蘇生の指輪をどうぞですニャ!」
「え、また変わるんです?」
渡されたのは白銀色のデザインが凝った指輪だ。
2つのリングが交差するような形で、中心に宝石が埋め込まれている。
結構値打ちものに見えるな。
「そりゃそうですニャ。これは特権階級を示すリングですからニャ」
「特権階級!?」
「ここからは私が説明しましょう……わん。新星とは即ち、闘技場の華。決闘が決まれば千客万来、国外から大勢の人が観戦に来る程の人気者です……わん」
「それ程までの価値が!?」
「最高の決闘が出来るように、花形とも呼べる新星の方々を特権階級として特別扱いするのは当然です……わん。これは国王直々の勅命です……わん」
「このリングは”貴族街”と呼ばれる特権区域への通行証も兼ねています、わん。今までは特別な許可がなければ立ち入る事が出来ませんでしたが、これで特権区域内の理力の塔、剣神の塔、地下ダンジョンの3箇所への入場が許可されます、わん」
な、何か気になる発言を聞いたけど、語尾が気になってあまり頭に入ってこない!
「……ってか貴族街の中にダンジョンがあっていいのかよ!?」
「入らない限り危険はないけれど、一度入ると生半可な腕では帰ってこれないダンジョンです、わん。真の実力者にだけ許可してるんです、わん」
「今まで全フロアを踏破した人は1人もいないんですニャ。ユーリさんなら丁度いい腕試しになるんじゃないですニャ?」
「ふーん。腕試し、ねえ」
「おっと目玉の特典を忘れてましたニャ。ユーリさん、ちょっとお耳を拝借しますニャ―……」
笑顔のスピカが告げたのは、ある場所への行き方だった。
* * *
翌日。俺は早速貴族街へと繰り出し、スピカから教えてもらった場所……高層ビル並の大きな建物へとやって来ていた。
俺は建物に入り、絶句した。
「なっ……なんじゃこりゃあ!?」
言うなればリゾートホテルのエントランス。
赤い絨毯に、大理石の柱。中心で吹き抜けとなっていて、最上階は見上げる程高い。
エントランスの中央には噴水と観葉植物があり憩いの場となっているようだった。
そこらにあるソファや調度品も装飾が施され、どれも最高級品に見える。
……お貴族様の住む所なんじゃねえの、ここ!? 場違い感半端ないんだけど!
若干挙動不審な動きで辺りを見回していると、後ろから声がかかる。
「やっほー! キミ、百技のユーリ君だよね?」
「えっ? ああ、そうですけど……」
振り返ると銀髪灰眼の笑顔の女性がそこに居た。
黒い帽子を被り、絹のようなワンピースにジャケットを着ていた。
この人、初めて見るけど結構美人さんだな。ここの住人なんだろうか。
「ワァオ、近くで見たら案外イケてるじゃない♪」
「ええと……お姉さんのお名前は?」
「私、タムタムって言うの。これからよっろしくぅ♪」
「ど、どうも」
このお姉さんテンション高いな。
まあ、気軽に話せそうな人でありがたいが。
「タムタムさんは、ここの住人なんですか?」
「そうそう。私の方が少し先に入居してるのよ。ユーリ君はこれから手続き?」
先に入居? 手続き? 何のことだろう。
そういえば、スピカに案内されて着いた先で驚いた事が前にもあったような。
いやでもまさか。こんなリゾートホテルの入居が特典だなんて事……。
「まさかと思いますが、新星ランクの人、全員ここに住んでるなんて事は……」
「アレ、聞いてないの? そのまさかだよ。ようこそ新しい新星。歓迎するよ!」




