決闘者リウリウ その2 ☆
「オレが先行を取らせてもらう。手札ドロー! ……俺は聖晶獣ロック・ゴーレムを召喚! 場にカードを2枚伏せてターンエンドだ!」
青年がカードをダンジョン・ディスクに伏せると、地面に魔法陣が描かれて、そこから岩のゴーレムが現れる。
モンスター付近に「攻撃力1300」と書かれたウィンドウが一瞬表示されてすぐに消えた。
原作のダンジョン・デュエルそのものじゃないか!
カードゲーム使いとバトルとか、異種格闘技戦にも程がある!!
「キミ、名前からすると日本からやって来た人だろ。ダンジョンズ&モンスターズを知ってるって事は、ルールも分かるよな?」
「カードゲームのルールは分かるが、ここは闘技場だぞ!?」
「はっはっは。悪いがオレとの闘いはリミテッドルール……公式ルールから少し変則的になった限定的ゲームルールに従ってもらう。それがオレの異能力・レギュレーションだからな」
「……なんっじゃそりゃあ!!」
強制的にルールが書き換わるだと!?
そんな異能力があるのかよ!!
「慌てなさんな、ちゃんと説明するさ。……といっても公式ルールと対して違いはない。デッキは20枚、初期手札は5枚。ターンを迎えたら1枚ドローし、1回の通常召喚権が与えられる。バトルは基本、モンスター1体に対し1回だけ。……まあ、先行となった場合はドローと攻撃が出来ないがな。ライフは4000点からスタートし、ライフかデッキ枚数が0になった時点で俺の負けだ」
聞いてる限りじゃダンジョンズ&モンスターズの公式ルールと違いはないが……。
「ただし、それはオレに限った話しだ。キミにデッキはないからデッキ切れもない。カードがないから召喚は出来ない。……だが、リミテッドルールには従ってもらう。バトル可能なのは自分のターンに”1回だけ”というルールにね。ライフは4000点からスタートし、ライフが0になった時点でしたらキミの負けだ」
「ちょっと待て! 攻撃が1回だけだと!? 召喚できるそっちが有利じゃねーか!!」
「所が、そうでもない。キミは”防御宣言”を知ってるよな?」
「ああ。……俺が攻撃しても、そのモンスターでブロックして来るんだろ?」
「ご明察! モンスターを攻撃にも防御にも使うのは基本中の基本さ。けどキミにモンスターはいない。だから、キミは自身をモンスターと見立ててブロックする事が出来る」
「なん、だと……!?」
「要するに、攻撃を受けた時に反撃出来るということさ。……さあ、ルール説明はこのくらいで良いだろう。君のターンだ、来なよ?」
青年は余裕の笑みで立ち構える。
奴の前には力士のような岩のゴーレム。
アイツの説明を聞いてて疑問に思った事がある。
……果たして、奴の話したルールは本当なのか? 素直に従う必要があるのか?
ルールを書き換える能力だなんて信じがたい。
疑わしいのであれば、試してみるしかないよな。
「それじゃあ、好きにやらせてもらうぜ! 俺のターン!」
『雷迅脚!』
立ちふさがるゴーレムに正面から突撃するように見せかけて、接敵する直前で跳躍のスキルを使ってゴーレムの真上を飛び越える。
着地後は青年のみを見据えて、突撃を敢行する。
「足の遅いゴーレムを出したのが間違いだったな!! 喰らえ!」
『流刃斬!!』
「……やれやれ、キミは口で説明しても理解してくれないタイプか。オレは聖晶獣ロック・ゴーレムでブロック!」
青年がブロックを宣言すると、地面に魔法陣が描かれて、ゴーレムが急出現した。
「チイッ、一瞬で呼び寄せできるのかよ!」
発動したスキルは急には止められない。男を庇うように出現したゴーレムは一刀の元に切り捨てられ、魔法陣に吸い込まれて消えていった。
すると、奴の近くにウィンドウが現れ、ピピピという電子音を出して数値が4000から3800へと変わった。
「んなっ!?」
「そんな驚くことないだろ。アニメでもあったライフ減少演出だよ。聖晶獣ロック・ゴーレムの攻撃力は1300。キミが使ったスキルの攻撃力は1500。攻撃力同士で数値を計算し、負けた方がダメージを受けるのがダメージ処理だ。だからオレは200ダメージを受けた訳だ」
「俺のスキルの威力が……1500だと!?」
「あれ、気付いていなかったのか? バトル時にキミの攻撃力を表すウィンドウが出てたんだぜ?」
えええ!? その攻撃力どうやって算出されてるんだよ!
っていうか、流刃斬の攻撃力なんて初めて知ったわ!!
「じゃあオレのターンだな。ドロ―」
「こんだけ接近してて、お行儀よく待てるかよっ!」『流渦槍!!』
「やれやれ。物分りが悪いな、キミは」
奴を囲むように現れた光壁が、俺の攻撃をガキンと跳ね返す。
「なんだこれ、攻撃が通らねえ!」
「言っただろう、攻撃は自分のターンに1回だけだと。ルールから逸脱した行動は出来ない。キミも、オレもね」
「不自由な闘いだなぁ、くそう!」
「ダンジョン・デュエルの醍醐味を味わえる、またとない機会と言って欲しいね。……続行だ。オレは手札から聖晶獣ファイア・バジリスクを召喚。召喚時に効果発動! 相手ライフに200のダメージを与える!!」
魔法陣から出現した燃え盛るトカゲ型モンスターが火球を放つと、凄まじい速度でこちらへと飛来した。
咄嗟に突進で緊急回避するが、すぐに追尾してきて火球が体に着弾する。
あっちい! これ絶対命中なのか!?
ピピピという電子音を出して、ウィンドウに映し出されたライフが3800へと減る。
炎はすぐに消え去り、肌が焼けるとかは特になかった。
……どんな仕組みだよこれ!
「さあバトルだ! 聖晶獣ファイア・バジリスク、少年に直接攻撃!!」
「クソが! そっちはモンスター召喚して安全地帯にいるとか卑怯くせえぞーー!!」
「安全地帯じゃなくて、今はオレのターンだから攻撃出来ないだけさ。……あ! でもキミはマスター兼モンスターだから、ブロックする際には自由にスキルを使えるよ。攻撃を一心に受けたくなければ、防御でもしたらどうだい?」
「おいぃ、そういう事は早く言えよ!!」
奴の言う通り、防御すれば受けるダメージを減らす事が出来るんだろう。
……だが、本当にそれでいいのか?
モンスターの攻撃を凌ぐだけじゃ、奴の軍団はどんどん増えていく。
そうなったら俺に勝ち目はない。となると……
「行け、聖晶獣ファイア・バジリスク!」『フレイム・ブレス!』
「真っ二つに引き裂かれろっ!」『ライオットザンパー!!』
俺は向かってきたモンスターに向け、最上段から袈裟斬りをする。
ブロックの際にスキルが使えるんなら、攻撃したって良いだろ!
数を減らしてかなきゃアイツに直接攻撃できないからな!!
「そう来ると思ったよ。トラップカード発動、業火の棘!! ……少年、キミの攻撃力を半分にする!!」
「な、なにいいいぃぃぃっ!?」
地面から赤い杭のようなものが次々と現れ、攻撃が阻害されてしまった。
バジリスクから吐き出された炎に身を包まれて、俺はたまらず地面を転げ回る。
どこからともなくウィンドウが現れ、電子音と共に俺のライフが3300へと減った。
「残念、このオレが何の手も打たないと思ったかい? ……さあ、君のターンだ。かかって来いよ?」
青年は余裕の表情でこちらを見据える。
俺の残りライフが尽きるまでに、コイツに勝てるのか!?




