決闘者リウリウ その1 ☆
あのお茶会からしばらく日数が経った。
預けた剣が心配だったので、俺は何度か工房へ足を運んでいた。
数日前と違い、笑顔のウォルフが迎えてくれた。
「コアブレード、直ったのか!?」
「僕が答えるより、見て頂いたほうが早いかと」
ウォルフが指差した先には一振りの剣が立て掛けられていた。
全身に行き渡っていたヒビは見事に修復されている。
「スゲェ! 元通りになってる!」
間近でよく見ると刃の部分が幅広になっている事に気付く。
前はオーソドックスな細長い両刃剣だったが、今じゃ厚みがあるグラディウスみたいな形をしている。
「な、何か刃の部分が大きくなってないか?」
「……僕、考えたんです。以前と同じままでは二の舞になるだけだと。だから、壊れないよう再設計して打ち直したんです!」
「え?」
「これは修復ではありません、新たな剣の姿です! 今度は壊れませんよ、ユーリさん!!」
ウォルフは目を輝かせて力説してきた。テンション高いな!
期待の視線を受けながら、俺はコアブレードを手にする。
鍛錬するような感覚で空中で何度も剣を振るった。
「うん。前より重くて慣れが必要だが……悪くはない。ウォルフはいい仕事するな」
「ありがとうございます!」
「さしずめ、コアブレード・ver2って所か」
「ばーじょん……ですか?」
「新生したこの剣の名前だ。改造で強くなっていく剣ってのも……アリだな!」
「大変でしたが、やり甲斐のある仕事でした。……そうだ、ユーリさん」
どうぞ、といって渡されたのは淡く魔術文字が光る小さな物体。
見たことがある。コアブレードに取り付ける魔術具だ。
「まさか、頼んでた奴が完成したのか?」
「ええ。姉が頑張ってくれました」
「そりゃ最高だぜ!」
ウォルフと俺は拳を打ち合わせる。
これだけ揃えれば申し分ない。後は闘技場で実力を発揮するだけだ。
俺は修理代と魔術具の開発費として、4000G程ウォルフラム工房に支払った。
ウォルフは金額の多さに驚いていたが、この程度の出費全然惜しくもないんだよな。
なんてったって次の決闘は――
* * *
「昇格戦、ですニャ!!」
受付娘・スピカはテンション高めで話してきた。
……俺はいつも通り、決闘の申し込みを頼んだだけだが?
「ユーリさんも、とうとうここまで来ましたかニャー。いやはや、感慨深いものがありますニャ」
「急にどうしたんです? いつも通りですよね」
「いえいえ、昇格戦に勝ったら新星ランクの仲間入りですニャ。これは本当に凄いことなんですニャー」
「……はあ」
「ピンと来てないようですので説明しますニャ。新星ランクとは、即ち大闘技場の華ですニャ! 決闘が開始されるだけで客席は満員! どこに居ても注目されて、女性から黄色い声上がる事間違いなしですニャ!」
「ええぇ……?」
今までそんな事全くなかったんだけど。
あと1勝するだけでそんなに事になるとか本当かよ。
「まだ信じてないですニャ? 要するに花形選手として期待を集めるようになるんですニャ。優れた闘技者にファンクラブが出来ることもザラにありますニャよ?」
「ふーん、そうですか。といっても俺はやれる事をやるだけなんで。……決闘お相手はどうなりそうです?」
「おっと、忘れていましたニャ!」
端末に決闘相手が表示されたのか、スピカはにかっと笑顔を見せた。
「これは面白い決闘になりそうですニャァ」
「お相手はどんな人です?」
「今、人気急上昇中の方ですニャ。召喚師リウリウ……決闘者の二つ名で呼ばれている方ですニャ!」
* * *
翌日。
俺は大歓声が響く決闘場で相手と対峙していた。
紺色の服を着て、左腕に大きなプロテクターのようなものを付けている男。
俺よりも背は高いし、年上かもしれない。
腕にあるもの以外、武器らしい武器を持っていなかった。
それにしても学ランみたいなこの衣装、どこかで見た覚えがあるんだけど……。
記憶を掘り起こそうとしていたら、相手の男から声がかかった。
「やあ、初めましてユーリ君。キミの噂は色々と耳にしているよ。相手の使う技をコピー出来るんだって?」
「まあ、そっすね」
「聞いた時から気になってたんだよねえ。例えば、オレの仲間の技をキミが受けたらどうなるのか……とかね?」
「さてね。すぐに分かるんじゃないっすか?」
「ヒュウ♪ いいね少年、やる気じゃないか!」
余裕の笑みを崩さず軽口を叩く青年。
何だろう。顔も性格も全く違うけど、こいつの纏う雰囲気が誰かに似てるような……。
「それじゃ、そろそろ始めようか。……ダンジョンディスク・セット! デッキ・シャッフル! リミテッドルール・アプライ!」
「そ、その前口上……!!」
思い出した!! あれはアニメもやっている国民的カードゲーム、ダンジョンズ&モンスターズの対戦前台詞!!
それに、アイツの格好は主人公、千部里臼のそのものじゃないか!
「って事は……アンタも流派使いか!!」
「流派使い? 知らないな。俺は決闘者だぜ?」
青年は左腕のダンジョンディスクを高く構え、こちらを見据える。
その決めポーズ見たことある!! 主人公がよくやる奴だ!!
「さあ――ダンジョン・デュエルの時間だ!!」
会場に響くゴングが、四人目の流派使いとの決闘開始を告げた。




