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魔導武器ユニ・ユノ その3 ☆

 少女は剣を構えてこちらを見た。


「そいじゃいくよ……ていっ!」

『グラウンドウェイブ!』

 勢いよく大剣を振り下ろすと、地面から地割れのような波が襲ってくる。

 少女は同じ技を繰り返し、何本もの地を這う波を作り出す。

 ……ちっ、避けるしかないか!


雷迅脚ライトニングステップ!』

瞬間加速ブーステッド!!』


 俺が移動スキルを発動すると、少女もタイミングに合わせたかのようにスキルを発動する。

 少女はフィルムのコマ送りのような残像を残して高速で接近してきた。

 ……んなっ、同じ高速移動スキルだと!? 


 相手はすぐに斬りかかってくるつもりだ。流石に素手じゃ無理!

 俺は急いで連結環リンケージに命令して、コアブレードを呼び戻す。


『ライオットザンバー!』

 少女は移動の勢いを載せたまま、大剣を上段に構えて袈裟斬りをしてきた。


 ガキイイイイン!!

 剣と剣がぶつかり合い、火花が散る。

 ぐおっ、押し負けそうになるだと!?

 ……この子、見かけによらずパワータイプだな!!


「へえ、ユノおにいちゃんを防ぐなんてびっくり。……でもおにいちゃん使いは私の方が上手なんだから!」


 ……何か怪しげな発言したぞオイ! 兄をそんな風に言っていいのか!?


 ギンッ! ギギンッ! ガギガギンッ! 

 至近距離で剣と剣の結び合いをする妹ちゃんと俺。

 ゴスロリ服を着てるのに華麗に大剣を振り回すとか、絵になる兄妹だなぁ!!


「ふうん。それ、まあまあ良い武器ね?」

「そりゃどーも!」

「でも私、ユノおにいちゃん以外の剣って気に入らないんだぁ。だから…………壊すね?」


 彼女の言葉の意味を測りかねていたら、少女は斬り合いの最中に俺の剣をおもむろに手掴みした。

 少女の笑顔が一瞬、薄ら暗い笑みへと変わる。

 壊すって……まさか!


 彼女の持つ大剣……兄が変化した武器は音叉のように剣の中心が中抜きされている。

 そこにコアブレードを差し込み、捻るように勢いよく回転させた。


『ブレイクアームズ!』

 彼女がスキルを発動させると、ピシリという嫌な音と共にコアブレード全体にヒビが入る。

 武器破壊のスキルだと!?

 マズイマズイマズイ!! それは想定外だ!!


「もういっぱーつ!!」


 もう一発だと!? 

 そんな事をされたらコアブレードが……俺とウォルフの努力の結晶が……!!


「テメェェェェェッ!!!」


 もうキレた!! 少女の姿をしてようが関係ねえ、こいつは倒す!

 最速で拳打を打ち込むため、コアブレードを手放した。


雷閃掌らいせんしょう!!』

『ライオットザンバー!』


 拳と剣がぶつかり合い、激しくスパークを散らせる。

 とはいえ相手は剣。相殺など出来るわけもなく、右手から血が流れ出る。

 クソが! 何が腹立たしいかって、あいつの剣にまだ俺のコアブレードが刺さってることだ!


「キミ、馬鹿になっちゃったの? おにいちゃん相手に拳で叶うわけないじゃない」

「うるせえ、俺の剣を返せ!!」

「何怒ってるの? こんなダッサイ剣、どうだっていいのに」

「手前ェが俺の剣を否定すんじゃねえよ!!」

「くすくす。マジになっちゃってカッコわるーい」


 ムカつくなこのクソガキ!

 待て、落ち着け俺。冷静になれ。

 あれから剣を奪い返すにはどうしたらいいか……。

 簡単だ。あいつがやったのと同じ事をすればいい。


「キミ、見てて痛々しいから、そろそろ死んじゃってよ!」

『ライオットザンバー!』

頑健がんけん!!』


 少女の袈裟斬りを、硬化した左腕で受ける。

 流石に防御の限界値を上回ったのか、左腕がメキッと嫌な音を立てた。

 だが今なら、奴の剣の隙間から奪い返せる!!


「戻ってこい、コアブレード!!」


 連結環リンケージに命令しながら、右腕でコアブレードを引き抜く。

 何とか左腕がイカれる前に、手の内に俺の剣が舞い戻った。


「すまん、コアブレード。しばらく休んでてくれ」


 俺はヒビだらけになった相棒を労るように鞘へと入れた。

 視線を感じて振り返ると、忌々しげな顔で少女がこちらを見ていた。

 もう容赦せん。俺にあの技を使ったことを後悔するんだな。


「気に食わないわアナタ。だからもう……死んで頂戴?」

「ゴタゴタうるせえ。さっさと来いよ」

「フン! 消え去りなさい、人間!!」

瞬間加速ブーステッド!!』『イレイザーブロークンパルス!!』


 コマ送りのような残像を残して高速接近し、勢いをつけた横薙ぎで決めにかかる少女。

 ……そう来ると思ったよ。


霞渡かすみわたり!』『鐘打かねうち!!』

 彼女の攻撃を半身だけ瞬間移動してずらし、再出現した地点で彼女の持つ大剣に特殊スキルを打ち込む。

 ゴウウウウウンと辺りに音が反響する。

 鬼姫戦で使った武装解除のスキルだ。


「えっ、えっ、えええっ!?!?」


 自分の意図に反して武器を落とす少女。

 俺はこの機を逃さず、その大剣を拾い上げる。


「お兄ちゃんを返しなさいっ!」

「一度しか言わないからよく聞け。俺は他人ひとのスキルをラーニングすることが出来る」

「それが何よ!!」

「お前の使った武器破壊スキル。……俺はもう覚えている」

「あれは剣状態のお兄ちゃんでしか行えないスキルよ! 嘘に決まってるわ!」

「……そうだと思うなら、兄が壊れる様を見届けるんだな」

『ブレイクアー…!』


「駄目ーーっっ!! そんな事、絶対駄目っ!」

「だとしたら、どうするんだ?」

「私達の負けでいいわ。今すぐお兄ちゃんを返してっ!」


 涙目になる少女。そんなに兄が大切か。

 ……フン。でもな、俺にも大切なものがあるんだよ! 


「勝者、ユーリ!」


 勝利宣言を言い渡されると、客席から割れんばかりの歓声が聞こえる。

 苛つく心を抱えながら、俺は決闘場を後にした。

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