港町での戦い
俺達3人は冒険者ギルドの奥の部屋へと通された。
誰もいない暗い部屋で、地面の魔法陣だけが光っている。
受付とは違うギルド職員が、魔法陣の上に乗れば一瞬で目的地まで行けると説明した。
ワープポータルって奴か?
二人がさっさと魔法陣に乗ったので、俺も遅れずに乗る。
風景がぐにゃりと歪み――全員が転送された。
着いた先も魔法陣のある部屋だった。
港町の冒険者ギルド支部……かな?
ギルド職員から、腕時計のようなリストバンドを渡された。
モンスター討伐が自動的に記録されるので、クエストが終わったら討伐数に応じて報酬が支払われるとの事。
ギルド職員は俺達を建物の外……港町の市街地に出し、あとはお任せします! と言って引っ込んでしまった。
あちこちで叫び声が聞こえるって事は、戦場のど真ん中じゃねえか。
「ブレイズ、作戦は?」
「ア゛ァ? んなもんネェよ。俺ら全員、雑魚にやられる程弱くはネェだろ」
「なら自由にやらせてもらうわ」
呪文を発動して軽やかに飛翔する朱。
うわー、飛べるのやっぱ羨ましいなー!
俺も飛ぶスキルが欲しいよ。
「朱! 魔術使うのはいいけど、あんまり建物を巻き込むなよーー!!」
「っ、わかってるわよそんな事! ……フンだ!!」
朱は顔を赤らめて港の方へと飛んでいく。
……何か変な事言ったっけ、俺?
「じゃあブレイズと俺で二手に分かれるか」
「構わネェよ。……あぁ忘れてた。ユーリは今回”縛り”追加な」
「うえぇぇ、何で!?」
「普通に闘ったらお前の修行にならネェだろ。”敵の技、一発は必ず受ける”を追加だ。……ナビコはいるか?」
「はいはい、いるわよ」
「ユーリの修行に付き合ってやってくれや。奴の回復は任せた」
「しょうがないわねぇ。任されてあげるわ」
「おい、何勝手に……」
「じゃあなユーリ。サボるんじゃネェぞ!」
こちらの文句を聞き届ける前にブレイズは行ってしまった。
ハァ。もう仕方がないな。
俺は跳躍と連結環を使って、高い建物へと上って辺りを観察する。
……結構サハギンがいるな。
サハギンは4~5体でグループを作って行動しているようだ。
町中のそこかしこにグループを見かけた。
「町もピンチみたいだし、手早く終わらせるとするか」
俺は跳躍を使って建物間を飛び回り、サハギングループの目の前へ急襲する。
「ギョッ、ギョギョギョッッ!?」
「さあ来い、一発は受けてやる。……その後は斬るけどな!!」
こうして、市街地での戦闘が始まった。
* * *
「ざっと、こんなもんか……?」
急襲して攻撃を一発受けてから斬る、を繰り返すこと小一時間程。
多分50体以上は斬った気がする。
おかげで市街地にいるサハギンはほとんどいなくなった。
サハギンは緑色の肌をした、手足にヒレを持つ半魚人だ。
槍や銛で武装をしているが防具は付けていない。
ぶっちゃけ弱いが、数が多いのは驚異ではある。
技の修得には期待はしていなかったが、いくつかラーニングに成功していた。
ギョギョギョとしか聞こえないのに、所有スキル一覧に七星命壊槍などが表示されていた。
ラーニングは言語の壁も超えるのか。全くもって謎のシステムである。
そろそろ合流しようかと思っていたら、港の方から轟音が聞こえてきた。
朱が爆発魔術撃ったな、あれは。
こちらは大方片付いたし救援に行くとするか。
雷迅脚を使って足早に港に向かうと、激しい闘いの音が耳に届く。
空中から魔術を放つ朱と、地上で暴れまわるブレイズ。
船着き場には、とてつもなく大量のサハギンと、後方に体が二周りほど大きいサハギンが見えた。
言うなればサハギンキング。……あいつがこのエリアのボスか?
キングは焦ったように大きな声で、部下のサハギン達に突撃命令を下していた。
「何度来たって同じことよ!」
『スコーチング・イラプト・レイ!!』
「テメエ等まとめて吹き飛びやがれッ!」
『ペネトレイトクラッシュ!』
空中にいる朱が光線を出して薙ぎ払うと、次々と爆発が起きてサハギンが蒸発していく。
地上にいるブレイズが暴走機関車のように突撃すると、サハギンの群れが紙吹雪のように吹き飛んで散っていく。
うわぁ、コイツら強すぎ……。
2人はあっという間にサハギンの大群を壊滅へと追いやった。
窮地に立たされたキングはギョギョギョギョ!! とまくし立てて海に逃げようとして……。
水飛沫を上げて現れた巨大な海魔にバクリと喰われてしまった。
ゴキッ、バキッ、という嫌な音を出した後に嚥下する海魔。
その顔はたてがみの生えた蛇のよう。
ふと目が合うと、獲物発見……とでも言いそうな圧を放つ。
……あ! コイツ、見たことがある。
ディアグランデのボスモンスターだわ!!
「大海蛇だああああ!?」
大海蛇は大きく口を開けて、俺達に襲いかかってきた。




