冒険者ギルド
「……必殺技が欲しい!!」
開口一番そう切り出すと、テーブルの向こう側にいるブレイズは眉を潜めた。
ここは流派使いの定期集会会場……と言う名の行きつけの店である。
定期集会というのもその実、お茶しながら話してるだけだ。
「ああ? ユーリ、お前スキル一杯持ってるじゃネェか」
「切り札だよ切り札! ブレイズは超必2つもあっていいよな。俺にも分けてくれよ!」
ブレイズの必殺技をあれだけ喰らったのに、1つもラーニング出来てないと気付いた時は凹んだ。
何かの間違いかと思って、わざわざ本人を呼び出して必殺技を打ち込んでもらったのに駄目だった。
何故かブレイズの技はラーニング出来ないのだ。
「お前、元のゲームシステムが違うからかもって納得してただろうが。いい加減諦めろよ」
「いやいや、俺にとってスキル修得は死活問題なんだよ。……なぁ、何か良い方法ないか?」
「知らネェよ。RPGなら普通、レベルアップで憶えるもんだろ」
「ディアグランデの主人公はレベルアップじゃ殆ど技憶えないんだよ。敵の攻撃をいっぺん受けないと駄目でな」
「なら闘技場で闘えばいいじゃネェか」
「それがなー。最近、魔術師が多くって中々技を憶えられんのよ……」
勇士ランクでラーニング出来たのは、ゴーレムインパクトだけ。
他は魔術とかラーニング出来ない類の技ばかりだった。
ブレイズは溜息をつき、ちょっとツラ貸せと言ってきた。
とうとう路地裏でボコられるか……と思ったら、着いた先は冒険者ギルド。
ブレイズは一直線にクエスト受付の窓口へと向かった。
「こんにちは。ご用件は……」
「女、高難度クエストはあるか?」
「でででっ、破壊者!?」
「ア゛ア゛ン?」
「ひええええーーっ!?」
ブレイズにガンを飛ばされ、受付のメガネ女子は慌てふためく。
「おい、つっかかるなよ。お姉さん縮こまってるだろ」
「ハン。いいから答えろ女。高難度はあるのか、ないのか?」
「あああっ、ある事にはありますが……! Bランク相当の高難度クエストですよ?」
「どんな内容だ?」
「え、ええと。港町にサハギンが大量出現したようですね。緊急度の高い排除指示が出ています」
「……ほう?」
腕を組んで考えるブレイズ。
このクエスト、受ける気か?
モンスターでも修行にはなるけど、必殺技とどう関係があるんだろ。
「……悪くはネェか。そのクエスト、俺達が請け負う」
「お連れの方は百技のユーリさんですか。……あれ、他の方はどちらに?」
「2人で充分だ。文句あっか?」
「駄目ですよ、高難度クエストは4人パーティが基本です。2人では許可できません!!」
「ア゛ア゛ン!? ケチくさい事言ってんじゃネェよ!」
「ぴえっ!!! だだだ、駄目なものは駄目ですっ! せめてあと1人いないと、私が怒られちゃいますぅ……!!」
涙目で訴えるお姉さん。ちょっと可哀相になってきた。
ブレイズ、根は純粋でいい奴だけど……言動が荒っぽいからなあ。
「そこの赤いの。ちと話がある」
ブレイズが通行人に声をかける。
よく見ると決闘で闘った赤髪の少女、村雲朱だった。
「ブレイズじゃない。私に何か用……って、アンタ何でここにいんのよ!!」
俺を指差してくる少女。
驚いてるように見えるが、何故だろう。
「よっ。ちょっとブレイズに連れられてな。高難度クエストに行くらしいんだが……」
「メンバーが足りネェんだよ。お前も入れ」
「ななな、なんで私がっ!?」
「ユーリから聞いたぜ、お前も転移組だってな。ならどいつが1番強いか、クエストで白黒付けようじゃネェか」
「私、そういうのに興味ないから。アンタ達だけでやれば?」
ふん、と言ってこの場を立ち去ろうとする朱。
「ハン。ユーリに勝ったと言うからどんな奴かと思ってたが……とんだ腰抜けだな!! どうせ大した実力もネェんだろ? だから逃げるんだよな?」
出たよブレイズの挑発。
これとワルぶってる癖さえなけりゃ好青年なのに……。
「ふふ、ふふふ……。だ、れ、が、腰抜けですって!? 訂正しなさいよ!」
「ほう? なら、お前も参加するよな? 一番モンスターを倒した奴が一番強いって事でどうだ」
「望む所よ! クラウディアが負ける訳ないんだから!」
おいおい。乗せられてるぞ、朱。意外と負けず嫌いなんだな。
ブレイズは口角を釣り上げて受付のお姉さんに振り返る。
「聞いたな? これで3人だ。……まさか文句はねえよなぁ!?」
「は、はいぃぃぃ!!」
お姉さんは泣きながらクエストの手続きをしていた。南無三。
それにしても、異世界転移者同士で即席パーティーを組む事になるとはな。
……攻撃役しかいねえぞ、このパーティ!!




