紅玉の瞳クラウディア その2 ☆
* * *
「案外、あっけなかったわね……」
背を向けて勝利ポーズを決め、クラウディアの台詞を喋る私。
やったー! あっさり勝っちゃった!!
ふふん。また快勝するとは、さすが私。
主人公キャラの代役として、このゲーム世界に来てからはや2ヶ月。
この世界に来てから驚きの連続だったけど、ようやく慣れてきた。
ずーーっと物語の主人公になりたいと思っていた私にとって、ここは夢のような世界だった。
私自身もコスプレや演技をする程クラウディアは気に入っていた。
いつもクールなクラウディア。親友のアナスタシアの前では素顔が出たり笑顔になる子。
ストーリーでは親友が怪物になっちゃって苦悩するけど、友を助ける為にボロボロになって、何度も立ち上がる姿がたまらなくカッコよかった。
せっかくゲーム世界に来たのに本人に会えないのは残念だけど、せめてコスプレしている間は彼女を演じようと思ったのだ。
それに、私がクラウディアとなったため思いがけないラッキーな事があった。
子供の頃からの憧れだった魔法使いになれたの!
もう何だって出来ちゃう!
クラウディアが使う魔法は炎に関するものばかりだけれど、どれもカッコ良かった。
初めて魔法を使った時は感動したなあ……!
クラウディアが持つチート級の能力を振るって、魔法をバンバン撃つのはとっても爽快だった。
何せ魔法を使い放題なのだ。誰と戦っても全く負ける気がしなかった。
大抵の闘技者は迫りくる魔法の物量に押されて負けを認めた。
少年は同じ異世界転移組だろうけど、相手が悪かったわね。
私ってば物凄く強いから、決闘が決まった時点で運がなかったのよ。
決闘場にはまだ、もくもくと土煙が舞っていた。
それにしても判定出るの遅いなぁ。
もう勝負着いたんだし、早く終わって欲しいんだけど。
土煙が次第に晴れていく。
そこには黒髪の少年が、防御するように剣を構えていた。
ええっ、あの子ピンピンしてるじゃない!
黒髪の少年は剣の構えを解く。
彼の剣は刀身が赤く光っていた。
あれ? あんな光、さっきまで無かったよね?
「剣式・魔竜喰らい……早速使う事になっちまうとはな」
ふー、と息を吐く少年。
バルムンク? なにそれ、ディアグランデの武器なの?
ディアグランデは、有名スタッフが集結して作られた前評判の高いRPGだ。
ヒロインキャラが可愛くて、次のコスプレ候補だったのよね。
エルフの王女様エルクーシアは胸が大きいからどう偽装しようかと……。
って、そうじゃない! まだ勝負は終わってない!
「中々やるじゃない。私の炎を受けて平気なんて、どんな手を使ったのかしら?」
「さて、何でだろうね?」
クラウディアの口調で問いかけると、同年代くらいの少年は軽い口調で返してきた。
「……ま、やられっぱなしってのも何だし、今度はこちらから行かせてもらますがね!」
『――雷迅脚』
少年は何かのスキルを発動すると、残像が見えるくらいの速さでこちらに向かってきた。
早い! 流石に接近されると不利だ。近づけさせないようにしないと。
『ブレイジングショット!』
私はお馴染みの牽制技を繰り出す。
手で銃の形を作り人差し指を突き出すと、その先に魔力が集まってこぶし大の炎弾が出来上がった。
『シュート!』
自らの意思と言葉をもって、炎弾を相手に打ち込む。
準備から発動までが早く、私の主要技となっていた。
少年に向けて炎弾を連続して打ち込む。
彼は一直線に飛来したソレを避けずに斬ると、炎弾はぶしゅうと音を立てて掻き消えた。
ええ!? な、なんで消えちゃうの!?
よく分かんないけど、とにかく足を止めないと不味いって!
『フレイムスパイク!』
『跳躍ッ!!』
地面から出る炎槍で足止めするはずが、彼は物凄い反応速度でジャンプした。
やば、避けられた! しかもこっちに向かって落ちてくる!
……いや、これはチャンス。
空中じゃあ満足に避けられないはず。
今こそ、特訓の成果を見せるとき!
「炎よ! 渦巻き集い、万物を灼き尽くす灼熱の太陽と化せ!」
『エクスプロードスフィア!』
私は両掌を重ねて空中に魔力を集積し、円球状の炎を爆発させた。
それで少年が黒焦げになる……筈だった。
「断ち切れ、魔竜喰らい!!」
シュガッ! という音と共に、爆発が一刀の元に切り裂かれた。
……そんな事って、ある!?
私が驚愕している間に、少年はこれ以上ないほど接近して空中で縦一回転斬りをした。
やば、逃げないとマズいって!
『蒼旋牙!』
『陽炎!』
私は、もしもの時の為に練習しておいた緊急回避技を本能的に発動させ、10メートルほど離れた場所に瞬間転移した。
……ヤバかった! 死んじゃうかと思った!!
「今の何? 貴方、何をしたの?」
「バルムンクは”魔力を喰らう剣”。悪いが、ご自慢の魔術は通用しないぜ?」
私の問いに、にやりと笑って答える黒髪の少年。
「な、なによソレ! そんなの卑怯じゃないーー!!」
「おおっと、キャラがブレてるぜ、りんごちゃん?」
剣で肩を叩き、へらへらと笑う少年。
んもう、その名で呼ばないでよね! 今の私はクラウディアなの!
「ふ、ふふふ……いいわ、少しくらいの無礼は許してあげる。けど、あまり調子に乗らないことね!」
私は両手から炎を出し、彼と対峙した。
例え炎魔術が効かないとしても、負ける気はしない。
何せ今の私は紅玉の瞳クラウディア、その人なのだから。
そのご自慢の剣、炎の巨人が相手でも通用するのかしらね!
『――いでよ黄昏の番人、炎の巨人! あの男を踏み砕け!!』




