紅玉の瞳クラウディア その1 ☆
そして、勇士ランク最初の決闘へと話が戻る。
俺は決闘場で『紅玉の瞳/死翼の天使』の主人公・クラウディア……の格好をした少女と相対していた。
彼女の深紅色の瞳は宝石のように光輝き、吸い込まれそうなほど美しかった。
魔力発動時に赤く輝く瞳――《紅玉の瞳》。
本当に、原作のゲーム通りじゃないか。
けどこのゲーム、体験版をやっただけなんだよなぁ!
この時期は新作ゲームが豊作で、バイト代が足りず断腸の思いで購入を断念したのを憶えている。
えーっと確か、赤髪の主人公・クラウディアが、友人である白髪の少女・アナスタシアを救い出す話だったような。
主人公クラウディアは魔力を無尽蔵に増幅させるという、紅玉の瞳の所持者。
王家の血筋を引いているアナスタシアは死翼の天使と呼ばれる戦闘兵器に変わってしまうけど、彼女を救うためクラウディアが戦場を駆け回る……というストーリーだった気がする。
パッケージからしてこのダブルヒロインが強調されていた。
キャラクターのキャッチーさと、王道のストーリー。
爽快感のあるバトルと、ヒロイン達の百合要素。
中でも、二人の濃厚な絡みがネットで話題になって、今年一番の百合ゲーと紹介されてた気がする。
……ハッ、いかん。百合じゃなくてゲームの事を思い出さねば。
クラウディアの基本コンボは覚えている。どれも掌や体から炎を出す技だ。
俺とは真逆で武器による攻撃は一切行わない。
演舞というより炎舞という感じで、ゲームでは流れるように炎を操っていた。
彼女はMPを消費して発動する”魔術”を持っている。
遠距離技や範囲技なんかは大抵魔術で、レベルアップで覚えるのが大半だった。
そして、必殺技ゲージが溜まったら派手な演出と共に必殺技が出せた。
後は……”禁忌”っていう成長要素があったっけ。
ビルドによってはプレースタイルが全く異なるとゲーム攻略サイトで見た事がある。
うわぁ、結構強そう。どう闘えばいいんだ?
……とりあえず会話してみるか。
「ままま、そうカッカすんなって姉さん。俺はユーリと言うんだが、姉さんのお名前は?」
「……私はクラウディア。それ以外の何者でもないわ」
「それってゲームのキャラクター名でしょ。本名は?」
「答える義理はないわ」
クールに受け答える赤髪の少女。
中々とっつきにくそうだが……この顔とこのポーズ、どっかで見たことがあるんだよなぁ。
「そうそう、君……ちょっと前のコスプレイベントに出てなかった? まとめサイトに写真掲載されてた気がするんだけど」
びくっと彼女の体が震え、表情が固まったのが見えた。
「君、コスプレーヤーの”秋葉りんご”じゃない!? そのキャラのコスプレ写真見たよ! すっげー、間近で見ると本物ソックリだな!」
「ちょ……その名前、ここで言わないでよーー!?」
”秋葉りんご”と指摘された少女はクールな表情を崩して言い返してきた。
あれ? レイヤー名、あまり気に入ってないのかな。可愛いと思うんだけど。
「あ、やっぱり演技してたんだ。演技派だねえ、りんごちゃん」
「……今のカチンと来た。君、問答無用で燃やすわ!!」
あるぇ!? 褒めたつもりなのに、何故か怒られてしまった。
ブレイズと言い、異世界転移者は何でこうも好戦的なんだ!!
少女ってだけで闘いづらいのに、相手が流派使いとか激戦必至じゃん。
そんな事を思っていたら、カーンと決闘のゴングが鳴った。
『ブレイジングショット!』
開幕からりんごちゃん……もといクラウディアは指で銃の形を作り、術を発動してきた。
見たことがある、炎弾を射撃する術だ!
何もない空間に突如こぶし大の炎弾が現れ、こちらに打ち込まれる。
『ショット!』『ショット!』『ショット!』
連続して炎弾が飛来する。
いくつかを避けるが、避けきれない一つを剣で斬ってみた。
「熱っちいぃぃぃ!」
炎弾は二つに裂かれるが、そのまま体に当たってしまい予想外のダメージを受けた。
斬れば無効化出来ると思ったが、魔術だとそうもいかないのか!?
『フレアスコルピオン!』
クラウディアは次なる術を発動し、両肩付近に大きな炎槍を二つ出す。
これ、シルシの持ってた大槍くらいはあるぞ……!
『シュート!』
真上に上げていた片手を勢いよく振り下ろすクラウディア。
号令と共に、二つの炎槍が高速で飛来した。
マズい、このままじゃ体にぶっ刺さる!
『突進!』
着弾の寸前で、いつもの緊急回避を使ってサイドに避ける。
こちらを目で追いかけてくる彼女に、本能的な危機を感じた。
『フレイムバインド!』
もう一度突進を使おうとした矢先に、周囲一体に炎の檻が出現して閉じ込められた。
俺の行動を予測しただと!?
もっと基本コンボで攻めてくるかと思ってたが、こうもMP消費技を連発して来るとは思わなかった。
プレイスタイルが違うから、予測が立てにくいな!
『フレアスコルピオン!』
クラウディアは無情にも魔術を発動し炎の大槍を再び出現させる。
おいおいおい。ちょっと待てぇ――!
『……シュート!』
クラウディアは表情を変えないまま、ギロチンの号令のように手を振り下ろした。




