流派使い
俺が衝撃の真実に震えていると、ブレイズが声を掛けてきた。
「おい、ビビってんのか?」
「んな訳ないだろ。好きなゲームが遊びきれない程の大ボリュームになって、目の前に在るんだぜ。……ゲーマーなら胸躍るに決まってんじゃん?」
「ハッ、お前はそっちのタイプだと思ってたぜ。まぁ俺も同感だがな」
ブレイズは、アークテンダロンの最新作を100%コンプリートした直後に、例の提案を受けたらしい。
もしかしたら、新作ゲームのクリアが異世界転移する条件なのかもな。
「ユーリ。お前の能力はラーニングだったか。それ、ディアグランデのゲーム独自の能力なんだろ?」
「主人公だけの特殊能力だけどな。ブレイズの絶死招来技も、アークテンダロンの格ゲーならではの特徴じゃないか」
「ああ。だがそれだけじゃネェ。……俺はゲージ消費キャンセルに空中ダッシュが出来るが、ユーリには出来ネェ。逆に俺はユーリのステータスにある"SP"は無い。だから俺はSPが無くなって倒れることはネェ」
言われてみればそうだ。格ゲーにSPなんてある訳がない。
そもそもブレイズのゲージは0からスタートだし、ゲージを吐いたとしてもまた貯めれば超必殺技が使える。
攻略本インストールのせいで格ゲー思考になってたけど、今考えてみると複数のゲームシステムが混在する世界とか訳わからんよな。
こちとらRPG、ブレイズは格ゲーだぞ。
一体どうやって整合性が取られてるんだ?
「恐らく、異世界転移者は元の”ゲームシステムごと”この世界に持ち込んで来てるんじゃネェか?」
「まあ、そう考えるのが普通だよな」
「……で、だ。お互い”何々のシステム使い”じゃダセェだろ?」
RPGのシステム使い。
格ゲーのシステム使い。
……確かに、名称としてはクソダサいな。
「俺ァこの違いは、武道でいう”流派違い”みたいなモンだと思ってる。独自のゲームシステムを持ち込み、そいつなりの闘い方をする者……」
「俺達、異世界転移者は、己のゲーム流派を貫く者。”流派使い”って呼ぶのはどうだ?」
RPGの流派使い・ユーリ。
格ゲーの流派使い・ブレイズ。
「……カッコいいじゃねえか。やるなぁブレイズ!」
「へっ、よせよ。照れるじゃネェか」
ストイックな求道者かと思ってたけど、ブレイズって意外と厨二心があるんだな。
何だか親近感を持ったので、元の世界の雑談をしたら話が盛り上がった。
同じゲーマーだけあって、自分に親しいものを感じる。
話題が切れたタイミングで、ブレイズが神妙な顔をして話しかけてきた。
「なあ、ユーリ。あれだけ罵倒しといた俺が言うのも厚かましいんだが……。俺のダチになってくれネェか?」
男はまっすぐに俺を見ていた。
「ああ、いいぜ。俺からも言おうと思ってたしな!」
俺は笑顔で拳を差し出した。パーじゃなく、グーの形だ。
ブレイズは俺の意図に気づき、互いにコツンと拳を合わせた。
俺達は握手するようなタマじゃない。
これぐらいの挨拶が丁度良いと思ったんだ。
ナビコが急に、しょうがないからボクも友達になってあげるわよ! と言い出した。
ブレイズは一瞬驚いたが、笑いながらありがとよと言った。
同郷との久しぶりの会話は、それからも大いに弾んだ。
「……ユーリ。もう一つ話しておくことがある」
ブレイズが急に真面目なトーンで話しかけてきた。
「異世界転移者……流派使いは俺達だけじゃネェ」
「居るぜ、大闘技場に。しかも俺達と同じ上位ランカーとしてよ」
異なるゲームシステムをその身で使う異能者。
俺やブレイズの様にこちらの世界へと渡って来た異邦人が……こんな近くに集まっているだって?
「これは俺の勘だが。恐らく流派使いは二、三人程度じゃない。数名……もしかすると、両手以上いるかもしれネェ」
「この闘技大会は思ってる以上に魔境だぜ。それでも、お前は闘うのか?」
挑戦的な目で俺を覗き込むブレイズ。
ナビコも俺の事を見てきた。
「はっ、当たり前だ。俺はゲーマーだぞ? ……むしろ、攻略しがいがあるってもんだ!」
未だ見ぬ世界に、未だ見ぬ強敵。
……この世界は、まだまだ俺をワクワクさせてくれそうだ。




