ひとつの推論
あれから俺は3日程骨休めをした。
ブレイズとの闘いで脳も気力を使いすぎてたから、この期間で英気を養うことが出来た。
……まあ、実態は食っちゃ寝と王都観光だけど。
行きつけの店でいつものように昼メシを食べていると、その男は現れた。
「探したぜ、ユーリ」
飲み物が喉につかえ、思わず咽せた。
振り向いた先には赤い服にボサボサ頭。
3日前に死闘を繰り広げた男、ブレイズがそこにいた。
邪魔するぜ、と言って対面にどかっと座るブレイズ。
有無を言わせないオラオラっぷりは変わらずか。
上半身ぶっ飛ばしたというのに、割と元気そうだな。
「あ、あのー。何か御用でしょうか……?」
「…………」
沈黙に耐えかねて話しかけてみたが、ブレイズはこちらを睨みつけて黙ったまま。……怖ええよ。
長い沈黙の後、ブレイズは頭を下げた。
「……偽物なんて言って、悪かったな」
男の口から出た言葉は、謝罪だった。
い、意外だ……。
「悪いクセでな。カッとなるとつい対戦相手を侮辱する発言をしちまう。……直さなきゃとは思ってるが、根付いたものは中々変えづらくてな」
「あいつはいるのか? お前を激励してた、ちっこいヤツ」
「ここにいるけど?」
コップの後ろから姿を現すナビコ。
「ふうん、アンタがあの時の相手? 随分と腕に自信があるみたいだけど、うちのユーリの方が強いんだからね!」
「ハッ、言うネェ。……お前ら、いいコンビじゃネェか」
ブレイズの顔からは険が取れていた。
決闘した時とはまるで印象が違う。
普段がこうであれば、だいぶ話しやすい人物みたいだな。
「改めて、ユーリだ。それとも、戦場遊理と名乗った方がいいか?」
「ブレイズ、二階堂乱丸だ。……ハッ、本名を名乗るなんて一体何年ぶりだろうな」
……本名、乱丸なのかよ。イメージとかけ離れてるなあ。
それから俺達は、互いの情報を交換しあった。
俺がこの世界で経験した事は、包み隠さず話した。
同じ異世界転移者の、ブレイズが持つ情報は絶対に欲しいからな。
俺が空から落ちて、ナビコに助けられた話をしたら驚かれた。
ブレイズはかなり細かい事まで確認してきた。
異世界転移の直前と直後、王都に来るまでどう過ごしていたか、どうやって来たかなど。
俺の話しを聞いて、今度はブレイズが話す番となった。
やはりブレイズもゲーム中に”謎の男”に話をもちかけられて、この世界にやって来たようだ。
ネロの服装と武器を持った状態で、何もない荒野で目を覚ましたらしい。
水と食料を求めてあてもなく彷徨い、野盗に襲われた所を返り討ちにして、王都の事を知って目指して来たとの事。
日銭を稼ぐのため闘技者として闘っていたが、決闘がリアルになった”オンライン対戦”だと思うと、己の腕を磨くため頂点を目指そうと思ったらしい。
うわあ。ゲーム世界に入ってもなおチャンピオン目指そうとか、ガチゲーマーすぎんよ。
まあ、俺も似たようなものだけど。
ブレイズの話しはそんな所だった。
「ちと、状況を整理してェ。……しばらく静かにしてくれ」
互いの情報が出揃った為か、ブレイズはぶつぶつと呟いて考え込んでしまう。
しばらくして、ブレイズはある重大な事を口にした。
「……俺はゲームを隅から隅までやっているから分かる。この王都という街は、アークテンダロンには存在しネェ」
「だが、闘技場ステージはトレーニングモードに存在してた。完全に同一じゃネェが、大闘技場はアークテンダロンの闘技場ステージにかなり似通っている」
「ユーリの話じゃ、お前が取り込まれたゲーム……ディアグランデか? それは、王都があるものの闘技場がないってんだろ? ……じゃあ、ひとつの推論が成り立つ」
ごくり。俺はブレイズの続きの言葉を待った。
「俺達が今いるのは、ひとつのゲーム世界ではなく、いくつかのゲームが"融合した世界"じゃネェか?」
「なん……だって?」
ブレイズの言葉にハッとする。
この王都に来た時に抱いた、やけに広いという感想。
最初はそんなもんだと思っていたが……。
この王都、俺の知らない中華な建物や、見たことのない双塔が存在していた。
もしかしてこれが、他のゲームと融合した結果だとしたら……?
点と点が繋がり、今まで感じてた違和感がクリアになる。
未だ見ぬ光景を幻視して、期待感で鼓動が早まる。
――君はこのゲームの”先”があったらどうするかな?――
……それって、物凄くワクワクするじゃねえか!!




