シーズン
俺は体調の簡易チェックを受けた。
メロペは仕事となると気持ちを切り替えてアルキオネの補助をしていた。
根は真面目な子なんだな。……今度飴ちゃんでもやるか。
「アルキオネさん、メロペ。お世話になりました」
「いえいえ。またいつでもお越しくださいね」
「あまり姉様方の手間をかけさすでないぞ。……ま、あちきの腕ならどんな怪我でも治してみせるがの!」
アルキオネの柔らかい笑顔と、メロペの無邪気な笑顔に見送られる。
扉を開く前に……右腕を顔の前に出した。
「くぉらぁ、ユーリ! どんだけ心配させんのさーー!!」
ナビコの空中ドロップキックを腕でガードする。
「なっ、ボクの必殺飛び蹴りが防がれた……!?」
「ふ。どうせそんな事だと思っていたさ。俺が何度も喰らう訳ないだろう?」
勝ち誇る俺に、ぐぎぎと悔しがるナビコ。
何で悔しがるんだよ。心配してたんじゃなかったのかよ。
「何じゃこやつ。闘技場に妖精とは珍しいのう」
「何だー! やるかー!?」
しゅしゅっと空中で素振りをするナビコ。
あああ、また話がややこしくなりそう。
「……ユーリ、お主この妖精と行動を共にしておるのか?」
「ああ。まあ腐れ縁みたいなもんでな」
「ふむふむ。ならあちきの出番はあまりないかものう。……ま、達者でのー!」
笑顔でこちらを見送るメロペ。
よく分からんが、話が拗れなくてよかった。
受付へとナビコと一緒に向かう。
歩いている途中、決闘中にかけられた言葉を思い出した。
「……ありがとな、ナビコ」
「んあ? 何がよ?」
「憶えてないんかい。俺が倒れた時に叫んだだろ」
「ああ、あれ? ……何かムカついたから、活を入れようと思っただけよ」
「ムカついたってお前……」
「契約で繋がってるからかな? 嫌な感情が混じってたから、何か言わなきゃって思って」
ふうん、契約ってそんなのも分かるのか。
でも、あの時は本当に心折れる寸前だったから、ナビコの声には助けられた。
「まあ、感謝してる。今度美味いもの食わせてやるよ」
「やたっ。……そろそろ新規のお店も開拓してよね?」
「そうだな。これで昇格だし、しばらくは豪勢に行くか」
そうこう話をしていたらスピカの所へと着いた。
スピカは俺を見つけると、ぱっと笑顔を輝かせる。
「ユーリさん、大勝利&昇格おめでとうございますニャーー!!」
ぱちぱちぱちとスピカの拍手で迎えられる。
周りにはそこそこ人がいた。人がいる所で拍手されるの恥ずかしいな。
周囲が少しざわついていた。何だか注目を集めてるような気もする。
「や、ありがとうございます。正直勝てるとは思ってなかったもんで」
「またまたご謙遜をですニャー。でもこれで名実ともに実力者の仲間入りですニャ。もう誰も新参者だなんて馬鹿にしませんニャ」
へえ。次のランクってそこまで評価されるのか。
6段階中の3段目だっけ。相撲だと十両か前頭くらいの地位?
「次は勇士ランクですニャ。先にお伝えしておくと、昇格条件は3勝、降格条件は3敗ですニャ」
「……1勝少ないと思いましたかニャ? いやいや、次のランクで1勝する事がどれだけ大変か、闘ったらよく分かると思いますニャ」
ごくり。それだけ激しい戦闘になるって事か。
ブレイズ戦でボコボコにされたが……。でもあの闘いで吹っ切れた。
俺は今の俺のまま、強くなっていくしかないんだ。
「……ま、でも暫くはお休みしますよ。流石に今日の闘いで全力を出しすぎました」
「それがいいですニャ。暫くユーリさんは闘う相手がいませんからニャ」
んん? 今、なんて?
「……どういう事です?」
「どうも何も、勇士ランクの決闘はまだ受付してないからですニャ。確か、次の季節開始は……来月からですニャ」
スピカの説明によると、闘技大会にはシーズンという概念があるらしい。
一年かけて行う(これも初めて知った)闘技大会は、4つのシーズンで分けられている。
大雑把には春夏秋冬の4シーズンがあるような感じ。
今は春のシーズンで、闘技者と戦士のランクの試合しか開催されていないとの事。
勇士ランクは来月の夏のシーズンからの開催らしい。
うわあ、マジかよ。高ランクを目指そうとしたら、思った以上に長丁場になるんだな。
というか俺、そんなに長い間このゲーム世界で過ごしてていいのか?
授業の単位取れなくて流石に留年するぞ。
……まあいいや。
今日は疲れたし、今度考えよう、今度。
「今は頭が回ってないんで、また今度聞きますね」
「おっと、忘れてはいませんかニャ? 特典の事! 今回は特別性ですニャ。驚きますニャよ〜」
「……今回の特典は、こちらですニャ!!」
満面の笑みのスピカが渡したのは、色違いの蘇生の指輪と、表彰状のような一枚の書類。
えぇ……、何これ?




