表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/103

医務室の幼女メロペ

 かくして二人の男の闘いは決着した。

 闘技場はかつてない程の熱狂に包まれていた。

 賭けに勝ち狂喜する者、落胆する者、闘いの熱に当てられ興奮する者。

 その中で、ユーリに注目する者達がいた。


「へえ。あの炎使いを倒しちゃうなんて意外ね」

「特別な力を持った、ヘンな闘い方をする決闘者……」

「対戦することになったら、どう焼いてやろうかしら?」

 ローブを着た赤毛の少女は口に指を当てて、くすりと笑った。


「千雷・刻冥断……。何故、あのお方の技を使える?」

「使えるスキルの多さといい、アイツは調べる必要がありそうだ……」

 白い鎧に身を包んだ中世的な顔の騎士は、そう言って観客席を後にした。


「決闘など野蛮な見世物だと思っていましたが、思わぬ収穫でした」

「あの男、ユーリと言いましたか。それにあの妖精も。覚えておきましょう」

 新緑の瞳をしたエルフの少女は、背を向けて貴賓席の奥へと消えていった。


 * * *


 ぱちりと目を覚ました。

 見覚えのある白いカーテンに白いベッド。……医務室か。


 なんだか、夢を見ていた気がする。

 この世界に来る直前のこと。

 俺がゲームクリアした時に、”謎の男”の提案を受けたことを、唐突に思い出した……気がする。

 同じ異世界転移者と闘ったせいかな。


 天井を眺めながら、ぼんやりと決闘を思い返す。

 ブレイズと死闘を繰り広げ、何度かの攻防の末……奴の上半身を吹き飛ばした光景がフラッシュバックした。


 うわ、やっちまったぁ……。

 いくら復活できるとはいえ、殺しちまった。

 とはいえ、加減して何とかなる相手ではなかった。

 師匠の技があんなに威力あるとは知らなかったし、仕方ないよな。うん。

 ブレイズも対戦相手潰してるし、文句言われる筋合いはないってことで。


 それにしても、あの後倒れたのはSP0になったからかな。

 毒は受けてないから体調はすこぶる良い。

 体にはぐるぐると包帯が巻かれていた。

 ……アルキオネが看護してくれたんだろうか。

 起き上がろうとすると、近くから声がした。


「これ、まだ寝とらんか!」


 辺りを見回すが、声の主が見当たらない。

 ……あれ、どこだ?


「どこを見ておる、ここじゃ!」


 真隣から声が聞こえた。

 声がした場所をよく見ると、ナースキャップと幼女の顔が見えた。

 背が小さい。小学生くらいか?


「こ、子供……?」

「こりゃ! 子供ではないぞ、これでも立派な施療神官クレリックじゃ!」


 口を膨らませる金髪金眼の幼女。

 ピンクの白衣を着て、黄色のラインが入ったナースキャップのサイドからツインテの髪が出ていた。

 背格好は全く違うが、服と帽子はアルキオネと似たデザインだ。


「クレリックって。君、医務室の職員なの?」

「そうじゃ。言っておくが、只の子供ではないからの。あちきの名前はメロペじゃ! お主には特別に呼ぶことを許してやろう」

「……お主、決闘場で倒れたじゃろう。そこそこ怪我をしておった故、あちきが治癒魔術でぱぱっと治したのじゃ。感謝するがよいぞ?」


 平らな胸を張り、ふんすと鼻息を出すメロペ。

 のじゃロリって、リアルに存在していたのか……。いやここゲーム世界だった。

 看護された事は覚えてはいないが、特に痛みもないし本当なんだろう。

 感謝の言葉を述べたら、メロペは満足げに頷いた。


「所でアルキオネは? 今日はいないのか?」

「ああー、あの乳袋女かの。お主もあの女にお熱なのかえ?」


 ……んん? 何だこの発言。

 幼女がこんな事言うとは思わなかったな。


「その言葉、どういう意味だ?」

「どういう意味も何も、入院する男はみんな乳ぶ……アルキオネにお熱になるからのう」


 どうも、男性患者はアルキオネの献身的な介護に心絆されるらしい。

 まあ、その気持ちは分からないでもない。

 アルキオネ、優しいし。胸でかいし。


 アルキオネの事をちょっとつついてみたら、メロペは不満をぽろぽろと溢しだした。

 こっそりお菓子を食べて怒られたとか、シーツの畳み方が雑と文句を言われるとか。

 ちっちぇえー。話のスケールがちっちぇえー。

 益体もない愚痴を聞いていると、ふとカーテンの外から声がかかった。


「……興味深い話をしていますね、メロペ?」

「はひゃあ!! ね、姉様ッ!? おつかいに行ってたのではないのかっ!?」


 ゴゴゴゴゴという音が出そうな表情で、メロペを見つめるアルキオネ。

 笑顔なのに全く笑ってない顔だアレ。


「ちょっとメロペをお借りしますね、ユーリさん」

「ままま待て、たすけ――」


 有無を言わさず連行されるメロペ。

 暫くして、何かを叩く音が部屋に響き渡った。

 ぺしーん! ぺしーん!


「悪かったのじゃっ! ごめ、ごめん!」

「謝る時は、ごめんなさいでしょう?」

「ごごご、ごめんなさいのじゃーーっ!」


 うわあ。とんでもない事になってしまった。

 カーテンに二人のシルエットが映っている。

 お尻ペンペンの刑だな、これは。


 程なくして二人は戻ってきた。

 アルキオネは笑顔だが、メロペは涙目でお尻を擦っている。

 ……ナムサン。


「忙しなくて申し訳ありません、ユーリさん」

「あいや、いいんですよ。……そ、それにしても、姉妹だったんですね?」

「はい、メロペは末妹でして。まだ看護師として日も浅く未熟です。私からよく言い聞かせますので、至らない点はご容赦頂けないでしょうか?」

「だ、大丈夫ッス。メロペちゃんは良くやってると思うッス。治療してくれて感謝してるッス」

「そうですか? ご配慮痛み入ります。……所で、ユーリさんは何故そのような口調に?」

「いえ、何でもないッス!」


 怒らせると怖そうだし、アルキオネには逆らわないでおこう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ