ブレイズという男 ☆
「立て。まだ動けるだろう」
目の前の男は、大鉈を地面に刺して話してきた。
超必をモロに受けてまだ頭がぐわんぐわんしているが、それよりも男の正体が気になってしょうがない。
俺は疑問に思った事を叫んだ。
「お前、一体何者なんだ! ネロなのか!?」
「クックック……やはり知っていたか!!」
男の顔が邪悪に歪んだ。
「確かにこの姿は紅の男、ネロそのものよ。……だがこの俺は“ブレイズ”だ! 最強のネロ使い、それが俺だ!!」
最強のネロ使い?
コイツ自身はネロではなく、ブレイズ?
よく見ると格好はネロそのものだが、髪型と顔が結構違った。
もしかして……コスプレ?
それにしても”ブレイズ”。どこかで聞いた事がある。
格ゲーキャラとの関連性を脳内で検索をかける。
確かネットニュースで見たような……。
“日本人が格闘ゲームの世界大会で初の優勝!!”という見出しの記事。
優勝者のHNは、ブレイズと書かれていた気がする。
「お前まさか、格ゲーの世界チャンプか!?」
「ハッ、そうだ!! 会えて嬉しいゼェ、同郷さんよ」
「アンタ、俺と同じ異世界転移者なのか!!」
「そうだと言ってるじゃネェか」
驚愕する俺。
確かにその可能性を全く考えていなかったわけではない。
俺がゲーム世界に取り込まれるくらいだ。
同じゲームをした他の奴も、こっちに来る可能性はありえると考えていた。
でも、まさか。別のゲームと繋がっているだなんて流石に予想外だ!!
「流石に談笑するような雰囲気じゃ……ないよな?」
「ハッ、斬り合っておいてそれはネェだろ。あんまり萎える事言うと……殺すぞ」
鋭い殺気を放つブレイズ。緊張で鼓動が早まる。
話し合いより斬り合いとか、頭おかしいんじゃねえの!!
アークテンダロンは、世界的に人気のある格闘ゲームだ。
格闘ゲームの世界大会のタイトルに選ばれるほどの作品。当然、競技人口も多い。
その中で世界一位になったってんだから相当の実力の持ち主……かつ、異常者なんだろう。
ネットニュースでもマナーの悪さが書かれていた。
ガラの悪い奴で、対戦中であっても相手に罵詈雑言を浴びせるんだとか。
嫌な相手に当たっちまったなああ!
……いや、違う。アイツが決闘を申し込んで来たんだ。
「アンタ、俺が異世界転移者って気付いてて決闘を挑んだのか!」
「当たり前ェだろ。喰い応えがネェ奴とは対戦しない主義なんでな」
こんのバトルジャンキーめ!
って待て。という事はアイツ、俺と同様に特殊スキルを持ってるんじゃ……?
俺の才能、『剣之心得』はディアグランデの主人公を模倣した『ラーニング能力』。
という事は。格ゲー・アークテンダロンの主人公としてこの世界に転移したブレイズも、何らかの『異能力』を持っているに違いない!
『異能力』。それは『ゲームの特徴』に他ならない。
考えろ、アイツは一体何の能力を持っている?
……思い出した。
アークテンダロン、このゲーム最大の特徴―――それは絶死招来技!
いかなる防御も貫通し、死に至らしめる絶技。
絶死招来技はゲーム登場キャラクター全員に実装されていた。
当然、あいつも使えるはず!
情報屋が言っていた事を思い出す。
闘技者を一撃で死亡させた、破壊者と呼ばれる男。
アイツは、対戦相手を一撃で殺せるんだ!
クッソ、そんなの卑怯すぎだろ!!
「さあ、お喋りはもういいだろ。手前ェの全てを曝け出せ! さもなくば死ね!!」
ブワッと大きな闘気を放つブレイズ。
コイツ、勝負を決めに来る気か!
大鉈を素手で受けるなんて無理だ、剣が要る!
もうちょっと隠しておきたかったが、ここが切り所か。
『鎖剣……起動!!』
俺は闘気を鎖として、己の剣を手繰り寄せた。




