半人狼ワァフ その1 ☆
次の闘技者は背の低い少年だった。
フード付きの黒いジャケットを着ている。
髪は黒髪のショートヘアだが、前髪が銀髪に染まっている。
ズボンの後ろから尻尾が出ているのが見えた。
……ああ、人狼族か。
試合開始のゴングが鳴った。
グラウンドで対峙する俺と少年。
少年は動かず、じっと地面を見ながら何かを呟いている。
こいつ、何を言ってるんだ?
「オ…………、……は…つ、………勝つ」
「俺は勝つ!!」
少年はそう言い、顔を上げて俺を見ると、すぐさま走り攻撃をしてきた。
『ヴェンデッタクロウ!』
貫手のように鋭い爪撃!
よく見ると、少年の両手の爪が伸び尖っている。
剣で受け止めたら、鍔迫り合いの如く火花が散った。
少年は俺を睨みつけながら、矢継ぎ早に爪撃を仕掛けてきた。
俺は剣で防御するが、迫りくる爪撃を捌ききれず、少しずつダメージを受けていく。
やはりコイツは至近距離で戦う格闘家タイプ。素早さが武器だな。
ならば、その勢いを削ぐ。
『ピアシングセイバー!』
多少のダメージを受ける覚悟で、少年の足を目がけてスキルを発動する。
体を貫通できる程の刺突技だが……外した。
少年は距離を取って大きく回避し、俺を睨みつけてくる。
フウウウウウーーッ
唸り声を上げる少年。
見た目は人間そのものだが、人狼というだけあって闘い方がかなり獣っぽい。
しばらく睨み合いが続いたが、意を決して少年は飛び込んできた。
『バグベアブロウ!』
指を鉤爪状に曲げ、掌ごと殴打をしてくる少年。
また近接技か。どうせ同じ結果になるだけ……。
剣で防御した俺は、がくんと姿勢が崩れた。
驚く俺に、必死の形相で攻撃を続ける少年。
防御する度にぐん、ぐんと半歩ずつ押されていく。
これは……ノックバック技!
強打を受け、俺はぐらりと体勢を崩す。
『ヴェンデッタクロウ!』
俺の喉元を狙い、鋭い爪の貫手を差し込む少年。
そんな所だろうと思ったよ!
俺は一瞬で剣を手放し、姿勢を低くした。
『雷火無刀!!』
俺は最速のカウンター技を発動する。
貫手VS貫手。
賭けに勝ったのは俺の方だった。
少年の肩が浅く裂かれ、腕から血が流れていた。
少年は2、3歩後退する。
「どうした、そんなものか?」
俺は、腕を抑える少年に声をかける。
こいつ……さほど強くはない。
本当に4勝した闘技者なのか?
少年は息を荒くして俺を睨みつける。
「嘗めるな! オレはこんな所で終わらない、終われない! 今のままじゃ、オレに帰る場所なんてないんだ!!」
「だから勝って、勝って、勝ち続けて。里の皆に認められる真の人狼に……!!」
悲壮感を伴った叫び。
こいつ、劣等感の塊かよ。
何を言ってるのか俺には分かりようもないが、この戦い、容赦する気はさらさらない。
俺は剣を拾い、構え直した。
「チイッ、これだけは使わないでおこうと思ってたんが……。仕方ない」
少年は腕から流れる血を指で掬い、額と鼻柱に赤いラインを描く。
目を閉じて、両拳を独特なポーズで合わせ、何かを詠唱した。
「森よ、森よ。獲物を狩る爪牙を我に授けよ!!」
「夜よ、夜よ。獲物を仕留める漆黒の帳を我に与えよ!!」
「月よ、月よ。我が身に降りて狂乱の如く荒れ狂え!!」
『祖霊降ろし!!!』
――瞬間、闘技場の空気が変わった。




