情報屋 その2
訝しむ俺をさして気にもせず、情報屋は話を続けた。
「おやおヤ、勘違いしないで頂きたイ。貴方をお呼び出てした本題ハ、これからお話しまス」
「……ユーリさン、私と取引をしませんカ?」
「私から提供できるのは情報。貴方が望むなラ、金貨と引き換えに闘技者の情報をお教えしましょウ」
やっぱりそう来たか。
情報屋と言うから、大方そんな話だろうとは思っていた。
「……ん? いや、ちょっと待て。決闘は受付でマッチングするんだぞ。もし情報を知ってたとしても、その相手と対戦するとは限らないだろ」
「仰る通りでス。しかシ、私の見立てでは貴方は既に一角の闘技者。自分より実力が劣る者に、負ける事はありますまイ」
「そこデ、情報を戦士ランク所属の強者ヤ、主要な人物に限定すればどうでしょウ? これだけでモ、かなりの数が絞られまス」
「闘技者の得意とする戦法や戦術。それらを事前に知っておけバ、闘いを有利に運べるのではないでしょうカ?」
あぁ、それはある。
格ゲーで例えるなら、相手の攻撃レンジや、喰らったらヤバい技を事前に知っておくだけで、立ち回りは大きく違ってくる。
もしも、使い手の癖まで知ることが出来たら尚のことだ。
俺はそこまで身体能力が高い方じゃない。
どちらかというと、対戦中うまく立ち回ることで何とか戦えている感じだ。
つまり、持ち札を全部使い切ったり、自分では分からない癖を相手に見抜かれたら、かなり、というか物凄く不利になる。
それに対策するにはどうするか。
相手の情報という手札を手に入れるのも、方法の一つだ。
有利に働くのは間違いない。
しかしなー。
事前に攻略法を知っていたとして、それは本当に勝利したと言えるんだろうか。
「迷っていらっしゃいますネ。相手の弱みを握るのは卑怯ではないかト」
ぐっ。コイツ勘が鋭いな。
俺の考えを読むんじゃないよ。
「いえいエ、それは大変結構な事でス。己の力に自信を持っているという事ですかラ」
「今のランクでは良いかもしれませン。しかシ、次のランクではより強者ト、さらに次のランクでは更なる強者と戦うことでしょウ」
「……間違いなク、貴方は私を訪ねてきまス。だかラ、早いうちにお会いしておこうと思ったのでス」
「ほう、大した自信だな。俺が早々に根を上げると、そう言いたいのか?」
「いエ、滅相もなイ。私ハ、私の経験に拠る勘を口にしただけでス」
強がってみたが、コイツの言う事は正しい。
異能力を持っているとはいえ、所詮俺は平和ボケした国のただのゲーマー。
ガチの軍人や戦争屋が出てきたら、多分アッサリ負けるんじゃないだろうか。
とはいえ、直ぐにコイツの世話になるってのもな。
この情報屋、信用していいか怪しいし……。
話を聞くとしても別の機会にするか。
「悪いが、今の所アンタに頼る気はない。まだ負けるつもりはないんでな」
「そうですカ。ならば致し方ありますまイ。……しかシ、お客人を手ぶらで返したとあっては情報屋の名折レ。私からほんの少しだけ情報提供いたしましょウ」
「戦士ランクの大鉈使いにお気を付けくださイ。彼にハ、底知れない何かを感じまス」
「……そいつの名は?」
「ブレイズ。大鉈使いのブレイズでス」
大鉈使いのブレイズ。
どんな奴かは知らないが……、同じランクに居るんだ。
いずれ対戦するかもしれない。
これ以上、ここにいる用事はなくなった。
俺は情報屋との話を切り上げて、帰路につく事にした。
ちなみに、さっきの部屋は一帯の大通りへと繋がっていた。
こちらからお帰り頂けますヨ、と情報屋が扉を開けた時は驚いたもんだ。
なんでそっちから入る地図にしなかったんだよ。
情報屋。コイツ、食えない奴だ。
ちなみに、ナビコは宿屋に置いてきた。
あいつ難しい話が続くと暴れるからな。
連れてこなくて正解だったぜ。
俺は宿屋に戻り、ナビコに小言で迎えられた。
はいはい。残念ながらお土産はないよ。
翌日、毎日の日課のようにスピカの所へ行き、決闘の依頼をした。
スピカは鼻歌交じりに端末を操作して、マッチングを進める。
「え~、お相手はと……。出ましたニャ!」
「お次の相手は、闘技者名ワァフ。爪牙で闘うワァフ君ですニャ!」




