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情報屋 その1

 俺は商業地区の端にある、中華な建物が並ぶ一帯へと来ていた。

 まるでチャイナタウン。

 王都にこんな場所があったとは驚きだ。

 俺は実際の地形と地図を見比べて、目的地を探した。


 地図に記された場所は、狭い路地裏の先を示していた。

 くねった路地裏を進むと、その先には扉があった。

 看板も何もない建物。本当にここなのか?

 怪しい。怪しすぎる。


 しかし、地図を見る限りこことしか思えない。

 勇気を出して扉をノックをする。

 帽子を目深に被った、小柄な男が出てきた。


「アンタが情報屋か?」

「入れ」


 男はYESでもNOでもない発言をして、部屋の奥へと進む。

 ……無視かよ!

 ちょっと待ってくれと言っても、男は無言でずんずん進んでいく。

 ああもう、失礼なやっちゃな!

 俺は仕方なく、駆け足で男を追いかけた。


「入れ」


 赤い扉の前で、男は止まっていた。

 入れって、ここに? ……これ、罠じゃない?

 男は何も語らない。沈黙を返すのみだ。

 俺は用心のため、剣を持って来ていた。

 俺は柄に手をかけたまま、慎重に扉を開いた。


「ようこソ」


 部屋の奥から別の男の声がした。

 扉の先に見えた部屋は、木製の小さな引き出しと、壺が多く並ぶ部屋だった。

 日の光が差し込んでいるが、部屋は薄明るい。

 内装も赤色が多いし、まるで中国の薬局みたいだ。


「そんなに警戒しないでくださイ」

「あなたに危害を加えるつもりはありませン。……さア、こちらの部屋にどうゾ」


 カウンター越しから男は話しかけて来た。

 黒い丸眼鏡をした、白髪の男。サングラスだろうか?

 男は灰色の中華服を着ていた。あれだ、功夫使いが着てそうなヤツ。

 老年に見えるが、そこまで皺がないので意外と若いかもしれない。

 この部屋まで案内した男は、いつの間にか居なくなっていた。

 という事は……。


「アンタが情報屋か?」

「いかにモ。この王都で"情報"という商いをする者でス」


 さっきから気になってたけど、変なイントネーションで喋る奴だな。


「その情報屋とやらが、俺に何の用だ?」

「ここに来たという事ハ、用事があるのは貴方の方とも言えますガ」

「とはいエ、互いの事を知らないのに話し合いもありますまイ。まずは私自身の事をご説明しましょウ」

「私は情報屋。ありとあらゆる情報を取り扱いまス。勿論、闘技者ファイターの情報もでス」

「ですかラ、貴方のこともよく存じておりますヨ、ユーリさン」


 情報屋はまるで好々爺のように、ゆったりとした喋りで話しかけてきた。

 けど、何故だろう。こいつには油断ならないものを感じる。


「貴方ハ、昇格戦の相手に大いに苦しめられタ。それハ、貴方が術者を苦手としているからでス」

「そして恐らク、貴方自身は術が使えなイ……違いますカ?」


 ぐっ、その通りだ。しかし……


「その程度の推察、誰でも出来ル。そう、思っていますカ?」


 こいつ、言ってくれるじゃないか。


「まだありまス。貴方、対戦相手のスキルを自分の物にできますネ?」

「弩使い戦では双斧使いの”雷迅脚ライトニングステップ”と、格闘家の”龍気ドラゴンオーラ”を使っていましタ」

「そして本日の決闘でハ、相手の槍技”流渦槍りゅうかそう”を使いましタ。……これハ、明らかに異常でス」

「どんな手を使っているか分かりませんガ、貴方は相手のスキルを盗めル。それだけは間違いないようでス」


 ……ふっ。

 俺は表面上ポーカーフェイスを装いつつも、内心焦る。


 ぐわーーっっっ!!

 いつかバレると思ってたけど、もうバレちまったかーー!!

 流石に情報屋と名乗るだけはある。

 情報を集める能力は確かなようだ。


「話は変わりますガ、貴方ハ、闘技場で賭け事がされている事はご存知ですカ?」

「ああ、知っている」


 何せ、受付のお姉さん……スピカの要約版メモで見たからな。


 ”決闘けっとうは全て、賭け事の対象になっているニャ

 賭けをする事は王都市民の一般的な娯楽なんですニャ

 賞金ファイトマネーはみんなの賭け金から捻出されているので、賭け事には広い心で許して欲しいニャ♡”


 自分が賭けの対象になっているのは、あまりいい気はしない。

 しかし、給料がそこから出てるとなるとなー。

 既に賞金を当てにした生活をしているし、俺がどうこう言える立場にない。


「賭けの倍率はある意味、闘技者の人気度を表す指標と言えまス」

「鬼姫との闘いでハ、貴方と比べて鬼姫は15倍もの賭券とけんが購入されていましタ」

「しかシ、その圧倒的倍率にも関わらず貴方が勝利しましタ。賭けた者の中にハ、大きく損をした者もいるでしょウ」


 鬼姫戦の決着でやけに歓声が大きかったの、賭けでスった奴の悲鳴かよ。

 俺の勝利を喜んだんじゃないのか。


「まだ貴方に注目している人はごく僅かでス。……ということはハ、貴方が勝てば大いに儲けられル。そういう事でス」


 俺を呼び出した理由がようやく分かった。

 こいつ、要するに俺をダシにする気か。

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