受付娘スピカ
「戦士ランクでの初勝利、おめでとうございますニャー!」
勝利後、俺は闘技場受付で笑顔のお姉さんに迎えられていた。
「ありがとうございます。……あ、ナビコ治癒頼むわ」
「はいはい。今回は頑張ってたから治してあげるわよ」
ナビコは手を翳して治癒の光を出す。
HPがぴろぴろぴろと回復して、傷が癒えていくのを感じた。
それにしてもギリギリの闘いだった。
あの技を避け損ねたらと思うと、考えるだに恐ろしい。
そこそこ行けるやろーと思っていたけど、次のランクの闘いは想像以上に厳しいようだ。
そろそろ新たな鍛錬とか修行とか、対策を練らないとまずいかもしれん。
うーん、何か良い手がないものか。
とりあえず受付のお姉さんに聞いてみた。
「そうですニャー。修行ってなると道場に入る手もあるですニャが、闘技大会の開催中は他の道場の偵察を嫌って、受け入れてくれない道場もありますニャ」
「他には、冒険者ギルドの依頼を受けるのも良い修行になりますニャ。お金も稼げるし一石二鳥ですニャ」
「あとは情報屋……あいや、何でもないですニャ!」
情報屋? 何だそりゃ?
「いえいえ、何でもないんですニャよー?」
えへへー、と笑顔で取り繕うお姉さん。
何でもなくないの、バレバレですよ。
とはいえ、無理に聞く訳にもなぁ。
「……そういえば。ランクが上がったら何か教えてくれるって、言ってませんでした?」
「ンニャッ、そういえばそうでしたニャ!」
にゃっはー! と笑顔で照れるお姉さん。
笑顔でもちょっとだけ表情が違うの、何となく分かってきたな。
「……スピカ。私の名前ですニャ!」
照れながら、お姉さんは自分の名前を話した。
へえ、スピカ。いい響きだ。
「お姉さんに相応しく、可愛らしい名前ですね」
「ニャニャッ! は、恥ずかしい事言わないで欲しいですニャ!」
んもー! と言い少し顔を赤らめるお姉さん、もといスピカ。
「で、他にはないんですか?」
「ん? それだけですニャ」
んん!? それだけ!?
あんな思わせぶりな事言っておいて、それだけ!?
「語尾ニャの秘密とか、教えてくれないんですか!?」
「それは猫人族の重大な秘密ですニャ。まだ教える事は出来ませんニャ」
ぷいっと、そっぽを向かれた。
本当かよ! すげえ嘘くさいぞ!
「またランクが上がったら、教えてあげなくもないですニャ」
しれっと言い張るスピカ。
何か手玉に取られてる気がする。
「……はあ、分かったよ。精々精進するさ」
「男の子はそうでなくちゃですニャ。スピカはユーリさんの事応援してますニャー!」
コロッと笑顔へと変わるスピカ。
うん、この快活さがスピカの売りだもんな。
あまり水を差すのは野暮というものだ。
「それじゃあ、賞金の授受ですニャ。リングを着けた手をお出しくださいニャ」
俺は左手を差し出す。蘇生の指輪は左手の中指に着けていた。
シャリーンという音と共に、一瞬で受け渡しが完了する。
本当に謎テクノロジーだよなぁ、これ。
ちなみに戦士ランクの賞金は一戦500Gだった。
前のランクの5倍て。魔石だと20個換算だぞ。
昇格戦と合わせて2勝目だから、既に貯金が1000G以上ある。
宿代はタダだし、しばらくお金には困らないな。
これ、次のランクに行ったらどれだけ貰えるんだろう。
さらに5倍とか? はは、そんなまさか。
俺はスピカに礼を言って、闘技場を後にする。
HPは全快でも、流石にSPも気力も使いすぎた。
どっかでメシを食べて、今日は宿屋で英気を養うことにしよう。
俺とナビコは行きつけの食事処でメシを堪能し、宿屋へと戻る。
「あ、あのっ! ユーリさん!」
階段を上がって自分の部屋に行こうとした所、入口で女の子に呼び止められた。
あれ。こんな子、宿屋にいたんだ。
「俺のこと、呼んだかな?」
「はっ、はい! お忙しいところすみませんっ!」
登りかけた階段を降りて女の子の元へと行く。
小柄な女の子がぺこぺこと頭を下げていた。
よく見ると耳が長い。という事は、耳長族か。
ここの従業員なのかな?
「そんなに畏まらなくっていいって。何か用事があったんじゃないの?」
「はい。それが……。これをユーリさんにと、渡されまして」
「俺に?」
女の子から渡されたのは、手紙だった。
俺はすぐさま手紙を開封し、その場で読む。
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貴方が勝ち続けることをお望みなら
明日正午 こちらの場所へとお越し下さい
情報屋より
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手紙には地図らしきものが同封されていた。
わざわざ宿を探し、手紙を残してまで俺を呼び出したい、と?
謎の情報屋。こいつ一体、何者だ?




