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鬼姫シルシ その3 ☆

 スキルで若干強化されたとはいえ、所詮は小石の投擲。

 子供だまし程度にしかならないのだが……。

 この隙が出来れば充分。

 俺は、姐さんの真後ろへと来ていた。


『――雷火絶刀らいかぜっとう

「いかんっ!」

春時雨はるしぐれ!』


 姐さんは即座に振り返り、素早い突きの連打で俺の接近を拒む。

 流石に対応が早い。雷火無刀を警戒してきたか。

 けど、今度の狙いはそっちじゃないんだよな。

 俺は雷火無刀と同じように剣を手放し――別のスキルを発動する。


鐘打かねうち!!』

 俺は大槍に掌底を叩き込んだ。

 ゴウウウウウンと辺りに反響する音。

 槍が振動し、鬼の姐さんの腕が震える。

 そう。これは相手の武器を落とす、武装解除のスキル。

 特に、形状がシンプルで大きな武器には効果が高い。


「なんじゃと!?」


 槍を落とし、驚く姐さん。

 自らの意思に反して武器が落ちたら、そりゃ驚くよな。

 しかしこの好機、逃してなるものか!

 俺は剣を拾い、すぐさまスキルを発動した。


流渦槍りゅうかそう!』

 渦のように風巻く突きを放つ。

 そう。俺の剣で、だ。

 姐さんは素手で剣を弾き、ずさりと大きく後退する。

 俺が放ったスキルに驚愕している様だった。


 俺はこのスキルを体で受けた。

 なら、スキルが使えるのは当然だ。

 それが俺の異能力ちから。ラーニングだからな!

 小石で尖鋭の一射(シャープシュート)が打てるんだ。

 例え槍のスキルでも、剣で使えて何の問題もない。

 今後も有り難く使わせて貰うとしよう。


「何故じゃ、何故お主がそのスキルを使える!?」


 ……本当はあんまり見せたくなかったんだけどなぁ。

 脳内会議の末、強敵相手に出し惜しみをしたら、勝つどころか勝負にもならないって結論が出た。

 なら、持てる手札で挑むしかないんだよなぁ。

 もちろん、姐さんから受けたスキル。

 それも手札の一つになってるけど。


「さあ、何ででしょう?」

「でも……、もしかしたら。貴方が使ったスキル、全部使えるのかもしれませんね」

「そして、俺がこの槍を持ったら……どうなるでしょう。試してみますか?」


 俺は地面に落とされた大槍を手に取り、大胆不敵に笑う。

 さて、相手はどう出るかな。


「ふっ、ははは……はーーーっはっは!」

「妾の負けじゃ!!」


 ワアアアアアアアアアッッッ!!!!

 審判から判定が下され、大歓声が辺りに響き渡る。

 表面上不敵な笑みを残したものの、俺は内心で冷や汗をかいていた。


 あぶねえええええええ!!

 やばかった! 本当にやばかった!

 ていうか、この槍重ッ!

 こんな超重量の代物、振り回せる訳ないだろうが!

 これ持って戦えないの、バレなくてよかったああああ!!


 俺は片手で汗を拭う。

 情けないようにも思えるが……。要は勝てばいいんだよ、勝てば。

 ハッタリだって、切るべき手札の一つだ。


「してやられたわい。妾が本気を出したというのに、槍を取られた上に、まさか技まで盗まれるとはな」

「……お主、一体どんな秘密を持っておるんじゃ?」


 近づいて、話しかけてくる姐さん。

 鬼の角は通常サイズへと戻り、眼も赤目から黒目になっていた。

 俺は大槍を姐さんへと返す。


「それは教えられません。俺は、まだまだ勝たないといけないので」

「それもそうか! カカッ、強かな御仁じゃ」

「その豪胆さ、計算高さ……悪くない。お主に興味が出てきたぞ」


 姐さんは興味津々といった感じで、あちこち覗き込んできた。

 おおう。美人に見つめられるの、なんかこっ恥ずかしいな。


「そうじゃのう……。妾には妹がいるんじゃが、あやつを嫁にするのはどうじゃろう?」

「……はい?」


 はい??

 何を言ってるんだ、この人は?


「うむ。それがええのう。お主も考えておいてくりゃれ」


 鬼の姐さんは、バシンと俺の背中を叩き、呵呵と笑い退場していった。

 ……じょ、冗談だよな?

 鬼のジョークとか、初めて聞いたぜ。


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