鬼姫シルシ その1 ☆
次の決闘相手は、戦装束に身を包んだ女性闘技者だった。
自分の身長以上の大槍を脇に抱えている。
着物に胸鎧とは、随分と和風な出で立ちだ。
長身だけど、華奢な美人さんだな。
美人であろうと、この場所で立ち会った以上は闘わないといけない。
じっと相手を観察する。
ん、相手の鉢金から見えているのは……角?
角と言うには少し小さめだが。
ファンタジー小説やゲームで稀に見る種族――鬼人なのか?
はて。ディアグランデにそんな種族あったっけ。
耳長族や髭長族や半獣人はいたけど、和風種族はどうだったかなぁ。
この闘技場同様、裏設定の復活? それとも……。
もしやと思ってたけど、異世界転移って今までにないルートに入っているのか?
「この角が、気になりますかえ?」
鬼の女性がはんなりした口調で話してくる。
何と返せば良いのか分からず、口籠る俺。
「そうどすなぁ、お主がイイ感じに滾らせてくれたら、この角がある理由が分かるかも知れませんなあ?」
鬼の女性は余裕の表情で微笑み、美しい黒髪をなびかせて、大槍を構えた。
いかん、この女性強そうだ。
決闘開始のゴングが鳴る。
「南風の鬼姫シルシ、いざ参る!」
様子見も小細工もせず、槍を携えて一直線に疾走してくる女性。
『流渦槍!』
鬼の女性は、渦のように風巻く突きを放った。
槍の間合いが、思った以上に伸びる!
咄嗟に後退して避けるが、少し斬られた。
情報の修正が必要だ。俺はさらに後退する。
それに合わせるように、女性は前進してスキルを放ってきた。
『風車!』
両手で大きく槍を振り回す鬼の女性。
うわっち! 大槍だけあってすごいリーチだ。
槍の穂先で頬を浅く斬られた。
こんな振り回し、まともに受けたら吹っ飛ばされて大ダメージ必至だぞ。
その後も、押し寄せる波の如く追撃をかけてくる女性。
『春時雨!』
大槍から素早い突きの連打が繰り出す!
ぐっーー!
威力は大したことないが、避けられねえ!
更に距離を離すが、どうやら逃す気はないらしい。
ぴったりと追いついてくる!
「お主の力、そんなものではなかろう! 実力を見せてみい!!」
オイオイ、この姐さん武闘派すぎんよ!
美人を傷つける真似をしたくなかったんだが、仕方ない。
やらねばやられるのだ!
「わかったよ。どうなっても、恨まないでくれよ?」
「大した自信じゃのう! ええから、早う挑んで来んかい!」
槍を構え、こちらの様子を伺うようにじりじりと近づく姐さん。
……あの連続発動技で行くか。
俺はすぐさま行動を開始する。
『龍炎刃!!』
闘気を火氣に変換。
その場で二回転半して、氣を剣に流し込む。
火氣を受け、刀身は赤く燃え上がるような色に変わる。
ダッシュして、炎の斬撃を叩き込む!
『風車!』
ガキィン!!
鬼の姐さんは槍を振り回し、力押しでこちらの龍炎刃を相殺してきた。
防がれたか。ならば、次!
『雷火絶刀!!』
闘気を雷氣に変換。
バチバチと体に雷氣を纏い、瞬速の一刀を放つ!
『流渦槍!』
姐さんはこの速度に対応し、スキルを発動してきた。
そう来ると思ったよ。
剣と槍、その穂先が激突した……ように、誰もが思った。
『――雷火無刀』
ぼそりと呟く俺。
俺は限りなく姿勢を低くして、最下段から神速の突きを繰り出す。
雷氣を纏った貫手。
そう。俺は剣をアッサリと手放し、格闘戦へと切り替えていた。
姐さんの胸と肩の間を貫手が貫き、血が吹き出すのが見えた。
そう。龍炎刃から連なる動きは、全てこの為の偽装。
雷火絶刀、雷火無刀……この両スキルは、表裏一体の顔を持つ。
雷火絶刀は踏み込み速度は早いものの、その実シンプルな斬撃技。
雷火無刀も同様だ。踏み込み速度が早い、シンプルな貫手技。
しかし、この技の真価は対抗してきた相手へのカウンターにある。
斬撃が来る――そう身構えさせ、意識外から隙を突いて貫手を差し込む。
言うなれば、スキルモーフィング。
1つの動作が終わる前に、もう1つの動作を仕込んでおき、すり替える。
斬撃がいつの間にか貫手へと変わっているのだ。
何せ、リーチも攻撃タイミングも違う。
まさか、剣を捨てて格闘戦で急襲してくるとは誰も予測できまい。
姐さんは驚いたのか、傷の痛みからか、大槍をその場に落とす。
が、それも束の間。
ニヤリと笑って、こちらの貫手を掴んできた。
いかん、よく見ると傷がそこまで深くない!!
当たる直前、こちらの攻撃を少し避けたのか?
それとも何かのスキルか!?
俺は危険を察し、貫手を抜いて距離を取った。
「まさか、こんな”手”を使われるとは思わなんだわ」
「あははははは!! 楽しいどすなぁ! お主相手なら、本気を出してもよさそうじゃ!!」
5/26 シルシを元にしたキャラクターが大暴れのご様子!
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ありのままにわがままに僕は君と異世界をいく。-史上最強のスキルを願って手に入れたのは、四人のヒロインでした- byいのれん先輩




