表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/103

初めての戦い

 あれから何度も水面を覗き込んだが、何をどう見ても自分の顔しか映らなかった。

 ハーレム計画、無残にも散る。

 ……待て待て、落胆するのはまだ早い。状況を整理してみよう。


 今のこの状況、ディアグランデの二周目……だよな?

 俺は一度ゲームクリアしたし、マルチエンディングだったから、俺の性格なら直ぐに二週目を始める筈。


 俺が主人公の格好をしてるのは、俺が主人公の代わりになったってことか?

 普通に考えると俺が主役となって物語が進んでいくよな。


 それじゃ、エルフ王女のエルクーシアにも、女騎士のラスポワールにも、メイド猫のたまキャットにも会えるってことか?

 このゲームのヒロインはどれも美少女ぞろいだ。


 うおぉぉ、やっぱりモテ期到来!?

 異世界転生じゃなかったが、こりゃ未来は明るいぜ!


「なぁ妖精、聞きたいことが……って、いない」


 さっきの場所に置いてきちゃったか。

 戻ろうとした矢先、森から叫び声が聞こえた。


「ギャーーーーーーーッ!!!」


 すごい叫び声だな、オイ。

 無視する訳にもいかず、声のする先に向かう。

 妖精が触手に捕まって逆さ吊りになっていた。


「何やってんの。……触手プレイ?」

「違う! トリフィドに捕まっちゃったんだよ! このままじゃ食べられちゃうってーー!!」


 触手の主は、ドラム缶の半分くらいの大きさの植物型モンスターだった。

 やっぱいるのかモンスター。

 植物なのに顔があるし、ちょっと怖い。


「このボク、絶体絶命の大ピンチ! アンタ早く助けなさいよーー!!」

「えぇぇ……」


 モンスター相手の戦闘か。

 元のゲームはコマンド入力式RPGだったけど、コマンド入力画面が出てきたりとか……しないね。

 え? どうやって戦うの?


 ステータスオープン! や、コマンドオープン! など叫んでみたが、全く反応がない。

 異世界転生じゃお決まりの奴なのに!?


 ……やばい、思ってたのと違うぞ。

 剣振ったところで当たるのか?


「ギャーッ! たたたっ助けてーーッ!!」


 何とかコマンド画面が出せないかと悪戦苦闘していたら、いつの間にか妖精が食べられる直前だった。

 逃げようかと一瞬思ったが、曲がりなりにも命の恩人。

 ここで死なれたら目覚めが悪いよな。


「あー、もうしょうがねえなーー!」


 トリフィドに向かって走り出す。

 相手も気づいたようで、丸呑みする触手を止めてこちらを睨んで来た。

 確か植物型モンスターは動きが遅かった。

 近付いてたたっ斬れば倒せるハズだ!


 あと数歩で剣が届く所で、急に地面から蔦が生えてきた。

 蔦が片足に巻き付き、俺はバランスを崩して盛大にずっこける。

 か、カッコわりぃ……。


「なにやってんの? アンタ」

「いきなり足元に出てきたんだからしょうがないだろ!」


 トリフィドを見ると邪悪に笑っていた。

 触手を振り上げて……。オイオイ、まさか。


 ピシュンッ!!

「いでえッッッ」


 クソ、賢いなこいつ。足止めしてから攻撃かよ!

 ぱしん、ぱしん、と連撃を受ける。

 痛いことは痛いが激痛じゃない。これくらいなら体を動かせる!

 足に絡まる蔦を切り、すんでの所で迫る触手を回避した。

 再びトリフィドに向かって走り出すと、再び地面から蔦が生えてきた。


「同じ手は受けねえっ!」


 その場で勢いよくジャンプすると、現実とは思えないほど高い跳躍で蔦を回避できた。

 驚いた。まるで某配管工の大ジャンプだ。

 ゲーム世界の恩恵? 主人公だから?

 ――なら、あれも使えるんじゃないか?


 こっちに向かってくる触手を空中で薙ぎ払いつつ、着地点にいるトリフィド目がけて剣を振りかぶる。


流刃斬りゅうじんざん!」


 そう叫んだ瞬間、体が流れるように動いた。

 まるで剣の達人のような所作で、剣撃が放たれる。

 剣撃は光の軌跡となってトリフィドへ命中し、体を一刀両断した。


 流刃斬――主人公の剣術スキルだ。

 ゲームだと初戦闘でも使えたし、もしかしたらと思ったが……やればできるもんだな。


 トリフィドは灰のように崩れ去っていき、その場には赤い石が残った。

 これって魔石か。冒険者ギルドで換金できるやつ。

 手にとってまじまじと眺めていたら、視界の隅で謎の物体がもぞりと動いた。


「ちょっとー! これ解きなさいよ!」


 あ、妖精のこと忘れてた。

 妖精を触手から解いてやると、ピロンという音とともに脳内に声が聞こえた。


『――レベルアップしました』

『――スキル”鞭打べんだ”をラーニングしました』


 え、レベルアップ?

 もしかしてシステムメッセージの代わりにシステムボイスが流れるのか?

 くそっ、気になるワードを聞いたのにメニュー画面が開けれねぇ!


「何やってるの、アンタ」

「お前は知らないか? ステータスやメニューの出し方」

「知らない。妖精にはそういうのないし」


 ううむ、そうか。人間に会えば知ってるかな。

 妖精に人間の住んでる場所を聞いたら、先程の泉の先を指差した。

 歩いて2日ほどかかるらしい。遠いなあ。

 妖精に礼を言って立ち去ろうとしたら、ぐいと服を引っ張られた。


「何、置いていこうとしてるの。ボクも付いていくんだけど?」

「……ん? いやいや。お互いに助けたんだから、これで貸し借りなしだろ。お前が付いてくる必要はないだろ?」

「何言ってるの。契約したんだから、付いていくに決まってるじゃない」


 さも当然とばかりに主張する妖精。

 契約? なにそれ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ