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二つ顔ロビン その1 ☆

 俺はいつものように、闘技場のグラウンドに立つ。

 お姉さん、どことなく態度が変だったよな。

 この対戦相手に何かあるんだろうか?

 なんて言ってたっけ。

 トゥーフェイス……だったか。

 俺は相手を見る。


 決闘けっとう相手は体格のいい青年だった。俺より背が高い。

 白いシャツに灰色のジャケットを着ている。

 あまり闘技者ファイターらしからぬ格好だ。

 体格から察するに、相当鍛えているように見える。

 ……強そうだな。


 試合開始のゴングが鳴った。

 俺は鞘から剣を抜き、相手の動きに注視する。

 男は武器である棍棒を足元に置いて、何も持たずにこちらに歩いてきた。


 なんだ? アイツ、何をする気だ?

 男は止まり、こちらに片手を伸ばしてきた。

 訳も分からず困惑する俺。

 男の手を伸ばす行為には、敵意が感じられない。


 動けば剣が届く距離だぞ。

 そんな距離で手を出すって事は……

 もしかして、握手を求めている、のか?

 はきはきとした声で、男は話しかけてきた。


「君も戦う理由があってきたんだろうが、詳しくは聞かないよ」

「全力を尽くし、正々堂々と勝負しよう!」


 キランッ

 白い歯を輝かせて、にこやかに笑う青年。

 爽やかイケメンじゃねえか。

 男は握手を求める姿勢で止まっている。


 う、うーん。

 まさか、武器を置いてまで握手を求めるとは思わなかった。

 決闘けっとうが始まってるとはいえ、丸腰相手に斬りかかるってのは流石になぁ。

 ……まあ、握手くらい別にいいか。

 何か裏があるかと思ったけど、考えすぎかもしれない。


 俺は剣をしまい、男の握手に応じた。

 ガタイがいいだけあって、男は力強い握手をしてきた。

 男のさわやかな笑顔につられて愛想笑いを返そうとした、その直後。

 突如、男の顔が無表情へと変わった。


『チェインバインド』


 ジャラジャラジャラ……ガチンッ


「へっ!?!?!?」


 俺は、いつの間にか現れた鎖に全身を拘束されていた。

 腕を動かそうとしたが、ピクリとも動かない。

 地面を見ると魔法陣が出来ていて、そこから鎖が生えている……じゃなくて!

 えっ、えっ? 突然の拘束? 何故にホワイ!?


 どういう事か分からず、鎖と男を交互に見る。

 男はこちらを見下し、ふっ、と馬鹿にするような溜息をついた。

 ……俺はようやく、自分の置かれた状況を理解した。


「卑怯だぞこの野郎ーーーーっ!!!」


 おのれーー! これのどこが正々堂々じゃい!!

 というかあの男、筋肉隆々のくせして術士タイプなのかよ! 見た目詐欺すぎるわ!

 あのクソ野郎を今すぐぶん殴りたいのに、意思に反して体がまったく動かない。

 一応喋れるけど、握手のポーズで固まったままとか笑えねーーー!

 今の俺、情けなさすぎぃ!!


 そ、そうだスキル。

 相手が使ってきたスキルを使い返せば……って

 うああああああ!

 俺、魔法は使えないんだったああああ!!

 やばいやばいやばい。

 この状態で殴られでもしたら抵抗できないぞ俺!?


 棍棒でメッタ打ちされる恐怖に震えていたが、男はその場を動かずに何かぶつぶつと呟いていた。

 あれ、殴りかかってこない……?


『ポイズンシックネス』


 また術か! 今度は何だよ!!

 目に見える変化が無く妙に思っていたら、すぐにその恐ろしさを知る事になる。


 あ、あれ……? なんか体が重い。

 それに変な汗が出てきたんですけど。

 何か、どんどん体調が悪くなっていないか?

 まさか、病気にする術……!?

 拘束されてるから逃げようがない!


 さらに寒気と頭痛がして、手足が震えてきた。

 こ、これまずいんじゃない!?


 焦る俺に、男は優しい口調で語りかける。


「僕はね、そのへんの野蛮な奴とは違う。だから一方的に殴ることはしないよ」

「仕方ないんだ。これも攫われた妻と子を見つけるためなんだ。勝ち進めばきっと妻と子の手がかりがつかめる。僕は勝ち進むしかない」

「だから、君がここで負けるのは仕方のない事なんだ」


 なんじゃいその論法!

 ぶん殴りたい衝動に駆られるが、相変わらず動けない。

 いかん。無理に力を入れたからか、頭がくらくらしてきた。


「無駄だよ。僕のバインドは破れない」

「……さて、そろそろ素直に負けを認めてくれないかな。君もだいぶきつい筈だ」

「ああ、そうそう。耐えて良いことは何ひとつないからね。ちなみに、このまま毒を受け続けると……頭が破裂するよ?」


 あはっ、と男は笑う。

 その目は狂気に淀んでいた。

 オカシイよこいつーーー!?


 俺の力はこの程度なのか。

 たったの4戦目にして負けるのか。

 ここで、おめおめと敗北するのか―――


 鼓動が鳴り止まない。

 体から滝のような汗が吹き出す。

 耳鳴りがして、一瞬、意識が遠くなった。


 ふと、脳裏に。

 耳長族の少女(エルクーシア)と、妖精(ナビコ)の姿が見えた。

 そして、師匠オッサンの背中も。


 ―――いや、そうじゃねぇ!

 勝負も付いていないのに、諦めるんじゃねえ!

 

「俺は! こんな所で!! 負けてられねええええんだよ!!!!」


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