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昇格戦

 俺は治癒してもらう為、先にナビコと合流した。

 人通りの少ない場所に移動する。

 流石にこの状態で人目に着くのは避けたい。

 肩に矢刺さってるし、全身傷だらけだしな。


「また派手にやられたわねー」

「スキルのお陰でこの程度で済んだ、とも言えるがな」


 龍気ドラゴンオーラがなかったらもっと大怪我になっていただろう。

 拳法家の少年には感謝しないとな。

 ま、俺が勝手にラーニングして使っただけなんだけど。


「動くんじゃないわよ」


 ナビコが翳した手から緑色の光が発する。

 その光に当たると、徐々に体の傷が再生していく。

 何度見ても不思議な光景だ。

 こういう時だけは妖精っぽいな。

 暫くして治癒は終わり、傷はなくなった。


「サンキュー、悪いな」

「……ユーリ、なんであの子助けたのよ?」


 ん? 改めて問われると何でだろう。

 闘技場にいた時は、それが最善としか思えなかったしな。


「ここじゃ、死んでも復活するんでしょ。無理に助けなくてもよかったんじゃない?」


 そうしても勝てたでしょと、ナビコは言った。

 うーん。理屈は分かるが、そうじゃないんだよなぁ。


「……そうだな、例え話をしよう。ナビコ、お前は林檎を食べるのが大好きだとする」

「楽しみにしてた林檎を、俺が誤って落として粉々にしたらどうする?」

「コロス!」


 即答かよ。食い意地張り過ぎだろ。


「だから、そういう事だよ。あの子があれほど武器に思い入れがあるとは、思ってなくてな」

「もしあそこで踏みとどまらなかったら、あの子諸共武器も粉々にしてただろ。そうなりゃあの子、例え復活しても俺のこと恨むぞ。きっとな」


 説明しても、ナビコは腑に落ちない顔をする。

 ああうん。そうなると思ったよ。

 感覚的な話だからな。

 ま、俺も途中までは粉々にする気マンマンだったし、詭弁といえば詭弁だ。


 それに、年下の女の子を見るとなんか思い出すんだよな。


 ――俺がお前を助けてやる! だから泣くな!――


 そういえば、そう言った事もあったっけ。

 随分と昔の話だ。


「ユーリ。そんな甘さで今後も勝てると思ってるわけ?」

「そんな事言われてもなぁ。なるようになるさ」


 フン、とそっぽを向かれた。

 俺、おかしい事言ったか?

 まあいいや。ナビコはしばらく放っておこう。


 それにしても次の決闘はどうするか。

 HPは全快だけどSPが残り半分ちょいだ。

 開眼が思ってる以上にSP消費するんだよなぁ。

 今のSPだと少し心許ないかも。

 次、昇格戦だったっけ。

 挑むかどうかは別として、とりあえずお姉さんの話を聞いてみるか。


「ナビコ、受付行くぞ。ついて来いよー」


 無言だったが、ナビコはちゃんと着いてきた。


「ユーリさん凄いですニャ! 怒涛の快進撃ですニャー!」

「ま、たまたまですよ」

「余裕そうですニャー。昇格戦はいつ挑まれる予定ですかニャ?」

「その昇格戦について、詳しくお聞きしたいんですが。何か特別な事ってありました?」

「特にないですニャ。例え負けたとしても、次も昇格戦だから安心して欲しいですニャ」


 そうか。最下ランクだし、ランクダウンはないか。

 いくらでも挑めるってのは気楽でいいな。


「もし勝ったら晴れて次のランク、戦士ウォリアーランクに昇格ですニャ。しかも賞金が次のランクの額で貰えるニャ。これは昇格戦だけの特別措置なんですニャー」

「ほほう。そいつは嬉しいですね」

「けど何故か、昇格戦は普段より強めの闘技者と当たる確率が高い、なんて噂が立っているらしいですニャ」

「うちのシステムは闘技者の能力に合わせて最適なマッチングをしているから、そんな事はあり得ニャいんですが、中々ご理解頂けないんですニャー」


 ふーん。やっぱそういうジンクス的なのはあるんだな。

 俺にとって闘技場は異世界転移にしゅうめからの要素だけど、この世界では歴史のある闘技大会になっている。

 闘技場七不思議とかあってもおかしくなさそうだ。

 ……ま、ルーキーの俺にはあまり関係ないけどね!


「昇格戦は全力で挑みたいんで、明日また来ますね」

「はいですニャ!」


 賞金を貰って、その日は休息することにした。


 * * *


 翌日、日課のように受付へと来る。

 そういや王都に来てから4日目か。

 だいぶ慣れてきた感はあるな。


 お姉さんはちゃちゃっと昇格戦のマッチングをしていた。

 こちらからは見えないが、どうもパソコンみたいな端末コンソールを使っているらしい。

 だから何でそういう所は技術が進んでいるんだよ。


「あ、出ましたニャー! お相手のお方は……」


 一瞬固まるお姉さん。

 ん、どうしたんだ?


「……二つ顔(トゥーフェイス)


 ぽつりと言葉を溢す。

 トゥーフェイス? なんだそりゃ?


「お姉さん?」

「な、なんでもないですニャ! お相手の闘技者名ファイターネームはロビン。棍棒使いのロビンさんですニャ!」


 いつものように笑顔になるお姉さん。

 しかし、その笑顔は何処となく影を落としていた。


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