弩使いミリアム その2 ☆
とはいえ、このまま避け続けるだけではジリ貧になるだけだ。
やはり、手札をどう使うかが重要だ。
俺は深く思考する。
相手は弩使い。
防具は付けてないし、完全に遠距離特化。
遠距離相手のセオリーはダメージ覚悟の接近戦だよな。
まずは距離を詰める手段が欲しい。
昨日反省したばっかりだが、アレに頼るしかない。
また、いざという時の防御スキル。
手持ちに殆どないんだよなぁ。
これも覚えたてのスキルを使うしかないか。
んで、接近してどうするかというと……
彼女の最大の利点、それはあの武器だ。
期を見て奪うか、破壊する!
そうすれば流石に負けを認めるだろう。
何も相手を倒す必要はないはずだ。
え? 武器が無くなっても、殴りかかってきたらどうするかって?
……その時はその時考える!
今思うと、俺って遠距離相手に有効な手段が少ないな。
けど悲しいかな、今は決闘の最中。
今ある手札で戦うしかないのよね!
持ち手札が少ない以上、無闇に手の内を晒すのは避けたい。
スキルは切るべきタイミングで切らねば意味が無いのだ!
俺は開眼を解除する。
尖鋭の一射が左肩に着弾した。
ぐっ!!
やっぱり完全には避けきれなかったか!
しかし、攻めるなら今のタイミング!
『雷迅脚!』
隙は相手の僅かなリロード時間のみ。
距離を詰める為、俺は闘気を巡らせ、片っ端から雷氣に変換していく。
「わっ!!」
少女はこちらの突進に一瞬驚いたが、すぐさま構え直してスキルを発動してきた。
「助けて、アーちゃん!!」
『飛散撃ち!!』
クロスボウから散弾銃のように広範囲に矢が発射される。
これ、まともに受けたら再起不能必死だな。
つまり。スキルの切り所は、ここだ!!
俺は散弾の中に突っ込んだ。
『龍気!』
腕をクロスさせ、赤い闘気を身にまとう。
全身に衝撃を受け、HPがぐんと減るのを感じる。
が、怯んでもいられない!
俺は高速移動を続けながら、剣を抜き放つ。
狙いは少女の持つクロスボウ。この一点!
『一刀繚乱!』
距離にして5メートル程。
この高速剣技なら間違いなく届く!
少女は俺の狙いに気付いて、慌てだした。
「わひゃっ……だめ、ダメですーーー!!」
その時、少女は驚くべき行動を取った。
……身を挺して武器を庇った!?
いかん、このままじゃあの子諸共ぶった斬っちまう!!
キャンセル――は、間に合わん!
『突進!!』
俺は片足だけ大きく踏み込んでスキルを発動することで、進む角度を急変更する。
それが功を奏し、少女を斬ることなく、横を通り過ぎる事に成功した。
……まぁ、急すぎる変更なので、俺は受け身も取れない訳だが。
「ほげえええええ!!!」
ゴロゴロゴロゴロッ
俺はしばらくグラウンドを転がり、ずしゃあと頭から大地にぶつかって、ようやく勢いが止まった。
砂! 砂がァーーー! 目と口に入る!!
ぺぺっと吐き出し、顔を拭きながら立ち上がる俺。
ちょっと、いやだいぶダメージを受けたが、まだ続行は可能だ。
なのだが――
少女はさっきの場所でへたり込んでいた。
クロスボウを抱え込み、目を瞑ってぷるぷると震えてる。
……そのクロスボウ、君の子供か何かなの?
話しかけたり、少し待ってみたが反応がなかった。
ふむ、ちょいと意地悪しちゃおうかな。
『欺きの手腕』
こいつはアイテムを盗むスキル。
ちょっと癖があって使いにくいのだが、ここまで近づいていれば外しようがない。
少女の懐からクロスボウを奪い取る。
重っ! こんな重い物持ってたのかよこの子!!
「あれ? ああーっ!? あたしのアーちゃん!!」
「返して、返してよーーっ!!」
腕の中からクロスボウがない事に気づき、涙目になって訴えてくる少女。
「返して欲しくば……分かってるな?」
「脱ぐの!? 脱げばいいのっ!?」
「違うわい! 降参しなさいって事!!」
「します! しますから返して! あたしのアーちゃん!!」
わーん! と泣きじゃくる少女。
なんか罪悪感が出てきた。
クロスボウ持ってた時の強気さは何処行ったんだよ。
「勝者、ユーリ!」
こうして勝負は決した。
可哀想なので、クロスボウはすぐ返してあげた。
いやでも、この子の攻撃すげえ痛かったんですけど!
あと、ぶった斬らないよう超頑張ったんですけど!!
でも泣かれると、こっちだけが悪く感じるのは何故だろう。
これだから女の涙はずりーよなぁ。




