拳法家ジンラ ☆
俺は次なる闘いに挑むため、長い廊下を歩く。
ステータスを確認すると、レベル13になっていた。
所有スキル欄にはツンツン頭のスキルが追加で並んでいる。
特別何かをする訳でもなく、喰らうだけでスキルをラーニング出来るって便利だわ。
闘技場なら死ぬことはないし、ラーニングの有用性パない。
そして俺は、再び決闘の場に立つ。
2回目ともなると、特に緊張も驚きもないな。
相手は少年だった。
俺と同じくらいの背丈で、しっかりとした体格をしている。
袖が破れていて、そこから鍛えられた腕が見えた。
見る限り武器は持ってない。
構える少年の眼には闘志が宿っていた。
そういえば、お姉さんが闘技者名と武器種別を言っていたな。
名前はジンラ。武器種別は拳。
拳法家だったな。
試合開始のゴングが鳴るや否や、少年はこちらへと走りスキルを使ってきた。
『紅蓮脚!』
大地を踏み込んでから、少年は回し蹴りを放つ。
俺は剣を抜かず、体捌きのみで躱した。
再び地面へと着地した少年は、接近し更なるスキルを発動する。
『双炎拳!』
素早いストレートの連打が、空中に拳の軌跡を描く。
中々の速度だ。しかし動きは単調。
動きの予想が立てれるので、避けるのは容易い。
相手が一歩踏み込めばこちらは一歩引く。
それを繰り返し、俺は避けに徹した。
「ちぃ、当たらんか……仕方ない!」
『虎魂!』
少年が両手を広げた構えをすると、青色の闘気が少年の体から発せられた。
おっ、何だ何だ?
何かを纏ったようにも見えるな。
「いくぞ!!」
『紅蓮――』
さっきと同じ脚技――いや違う。
『――双炎拳!!』
回し蹴りから流れるように次の動作、拳撃へと繋がっている。
連続発動技か!
意表を付かれ、少しダメージを受ける。
少年は畳み掛けるように、スキルで追撃してきた。
『狗地牙突!』
腰を低くした突撃をして、下段から貫手の連打を繰り出す少年。
自らの闘気を雷氣に変換して緊急回避するが、鋭い角度からの貫手が完全に捌ききれない。
HPがじわじわと減っていく。
くそ、さっきとは見違える速度だ。
恐らくあの青色の闘気を纏っていると、技の出力がアップするんだろう。
連撃主体の闘技者ということか。
「どうした! アンタの剣は飾り物か! 本気でかかってこい!!」
……ああ、そうかい。
それじゃあ遠慮なくやらせてもらうぜ!
片手で鞘から抜刀し、少年に斬りかかる。
『流刃斬!』
『龍気!』
少年が両腕を交差した防御の構えを取ると、赤い闘気が少年の体から発せられた。
ガキン!!
流刃斬が当たるが、剣から伝わってきたのは硬い感触。
効いてない!? 身体強化系のスキルか!
少年は両腕を大きく回し、氣を練り始める。
この長いタメは―――何か来る!!
俺は大きくステップし後退をする。
『龍虎連王撃!!!』
『開眼!!』
あっぶねえ、開眼がなんとか間に合った!
スローモーションの世界で少年の動きを観察する。
少年は、鼻から下が隠れるよう両拳を眼前に構えて、疾走していた。
これ、ボクシングのスタイルで見たことあるな。
少年の体からは赤と青の闘気の両方が見えた。
龍気と虎魂だったか?
両方とも身体を大幅に補助する強化技みたいだな。
揺るぎ無く闘気が発せられている。
氣の性質は……、ごちゃごちゃして分かりづらいな。
えーと、ひぃふぅみぃ……げぇ、四種類!?
恐らくはこうだ。
身体強化の龍気は攻撃上昇の火氣、防御上昇の地氣。
技強化の虎魂は技巧強化の水氣、速度強化の雷氣。
確かにこれだけ重ね掛けすれば爆発的に強化されるけど、こんなマシマシな強化、長くは持たないぞ。
明らかな短期決戦狙い。何か理由があるのか?
それとも……まさかアレを知らないとか。
しかし、目の前に迫ってきているヤツを何とかしないとマズい。
龍虎連王撃って言ったか。
技名だけ聞くと乱舞技っぽいが。
龍虎連王……龍虎か。
まさか、2つの強化技がないと発動できないスキル、なのか?
だとすれば……、あの手しかないな。
俺は開眼を解除する。
少年は目の前に迫ってきていた。
俺は防御の構えを取る。
「喰らえ!」
ダダダン!! ダダダダダダダン!!!
まるで拳の嵐だ。
自分のHPがすごい勢いで減っていくのを感じる。
……いってえな、オイ!!
俺はたまらず、連撃の切れ目を狙って後退した。
「逃すか!!」
『龍虎連王撃!!!』
あんにゃろ、追撃してきやがった!
だが耐えろ、耐えるんだ俺!!
自らの闘気を地氣に変換して防御の構えを維持するが、相手の連撃はその上から削りダメージを与えてくる。
「どうした! 防御ばかりではオレは倒せんぞ!」
少年の連撃は一瞬の緩みもない。
しかし、まだ猛攻を続けるという事は……奴さん、気付いてないっぽいな。
防御の構えを崩さず、にやりと笑う俺。
「どうした、俺はまだ立っているぞ。自慢の拳はその程度か?」
「減らず口を! ならば、これでトドメだ!!」
「龍虎連お……!」
ぴたり。
少年は拳を構えた体勢で、まるでフリーズしたように止まる。
「あ、あれ………?」
何が起きたかわからない、という感じの少年。
予想通りだ。やっぱりこうなったか。
俺は防御を解き、人差し指でつんっと少年をつつく。
少年はぐらりと体勢を崩し、抵抗もせずにずーーんと後ろに倒れた。
「おのれ、オレに何をした!?」
身動きもできないまま、口だけでこちらを責める少年。
あぁうん、別に俺が何かした訳じゃないよ?
ただその状況、身に覚えがあっただけで。
「なぁお前さん。あの強化技、毎秒すげぇSP消費する事に気付いてなかったのか? ……お前さんのSP、0になってるぞ」
スキルをバカスカ使いまくるとこういう事になる。
SPって0になると全く動けなくなるんだよなぁ。
いやマジで、びっくりするほど動けないから。
どうせスキルが使えないだけだろ? とかナメてた俺は身をもって知った。
SPが自然回復するまでの間、師匠に木の枝で体をつつかれ、ゲラゲラ笑われた嫌な記憶が蘇る。
あれから俺は、SPだけは切らすまいと心に誓ったのだ。
「勝者、ユーリ!!」
動けない少年をグラウンドに置いたまま、俺は会場を後にする。
少年よ、これを機に逞しく成長するのだぞ。




