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自己紹介

まったり更新

 ——アイリside——


 突然わたしの前に現れたユニコーン型の機獣。

 それはまるでクィーンから、わたしを守るように立ちはだかった。


「≪天角解放≫」


 そんな男の声が聞こえて、周囲にぞっとするような魔力があふれた。

 ユニコーンの頭部にある角が割れて、そこから電撃がバチバチと音を立てて周囲にバラまかれ始める。


「ひっ!」


 地を走る電撃はかなり凶悪な威力を持っているようで、恐怖のあまり身がすくんだ。


 電撃が通った地面が焦げ付いてるんだけど!!

 

 これ、わたしが当たったら死んじゃうヤツだよね!?


 いっぱいいっぱいになっているわたしをまるで意に介さず、ユニコーン型の機獣はさらに続けてスキルを使用した。


「≪天穿テンセン≫」


 周囲に散らばっていた電流が角に収束していき、轟音とともに光を放つ。


 その光とともに凄まじい衝撃破が発生し、付近に居たわたしはそれを無抵抗に浴びてそのまま意識を失った——




 身体が揺すられ、耳元で誰かの声がする。


「——の、大丈夫か? おーい?」


 わたしを呼びかけるその声に少しずつ瞼を開いていく。

 ……誰の声だろう?

 聞いたことがない男の人の声だなぁと、声のする方へ眼を向ける。


 「ッ!?」


目を開いたわたしのすぐそばに、ユニコーン型の機獣の顔があった。



◇◆◇



 ——ハヤテside——


 やってしまった!


 守るつもりだった少女そっちのけで、戦闘のことしか考えてなかった。

 クィーンとの戦いによって周囲の地面は焦げ付いたり、切り裂かれたりしている。その他にも瓦礫が崩れている所もあって、ひどい惨状だ。

 果たしてあの少女はこんな中で無事なんだろうか?


「11時方向にある柱の陰に、砲台ごとマスターを移動してあります」


 サポート女さん!

 あんたって人は……(感涙)!

 見えないところでマジで良い仕事してるよな!


 どうやら知らない間にサポート女さんが安全なところに少女を運んでいたらしい。

 俺は急いで言われた方へと向かった。



 柱の裏にあった砲台で少女が気絶しているのを発見した時は焦ったが、サポート女さんいわく命に別状はないそうだ。

 しかし、少女を起こそうにも馬の身体では肩を揺さぶるといった細かなことがやりづらい。

 心持ちやさしく、頭で少女の身体を揺すってみた。


「あの、大丈夫か? おーい?」


 命に別状はないと言われても、このまま目覚めないんじゃないかと少し不安になる。

 鼻先で彼女の肩を揺すり、声を掛け続けた。


 すると彼女の顔が僅かに動き、少しずつ目蓋が開いていく。


 寝ぼけたような顔でゆっくりと俺を上から下まで眺め、最後には見つめあう形になる俺と少女。


 少女は俺を認識した途端に驚愕の表情を浮かべ、


「ッ!? にぎゃぁぁぁ!」


 と間髪いれずに乙女らしからぬ悲鳴を上げた。

 

 ちょっと傷ついたんだが……。

 こちとら心配して覗き込んでたのに。


 あわあわと俺から距離を取る少女に、若干凹みながら俺は彼女が落ち着くまで黙って様子を見守ることにした。

 敵意が無いアピールだ。

 決して落ち込んだからじゃない。


 その間に、彼女の事をよく観察してみる。


 歳は人間だった頃の俺より少し下で、多分15~6歳くらいだろう。

 馬の視点だと分かりづらいが身長もその年代の女子の平均くらいだと思う。


 まず目に付いたのは日本じゃ見掛けることがない、淡いピンク色の髪だ。

 桜の花びらを連想させるようなその髪を、肩の少し上で切り揃えていた。


 そしてそのショートカットの前髪から覗く瞳は、綺麗な水面を覗き込んだような透き通った水色をしていた。


 白い肌には傷もなく、女性らしい柔らかさを感じさせる。こんな埃っぽい場所で、煤まみれで汚れていても美人だって思えるんだからすごい。


 ふと視線を彼女の頭の上にやると、そこで深紫色のリボンが小さなウサギの耳のように揺れていた。

 そのすぐ下の額には近未来的なゴーグルのようなものをしている。

 なにあれ、カッコイイ。


 肩や胸などの急所を覆うように、革で作った防具を身に纏っており、その下には清潔感のある可愛いシャツとホットパンツのような服を着ている。

 装飾品もいくつか確認できた。


 どんな時でもオシャレに気を配るタイプなのだろうか?



 と、ついついそんな風に上から下まで観察してしまったが、彼女もそろそろ理性を取り戻したようなので声を掛ける事にする。


「おい、身体は大丈夫か? ……怖い思いをさせて悪かった」


 取りあえず、最初に言っておきたかった謝罪をした。


 初めての戦闘で頭がいっぱいだったとはいえ、少女が近くにいるにも拘わらず危険な技を次々使ったうえに、その存在をすっかり忘れていたからな。

 かなり罪悪感があった。


「え、あ、はい。……あのさっき話した時と声が違うけど、もしかしてメインユニットさん?」


 ん?

 さっき話してたっていうのはサポート女さんの事か。

 メインユニット……ああ、そういう扱いらしいな。


「ああ、主人格メインユニットのハヤテだ。……いや、もうハヤテじゃないのか?」


 最後のほうは呟くような声になってしまった。

 今の姿でハヤテと名乗っていいものだろうか?


「ハヤテさん? 名前が付けられてるんですか! ユニコーン型の機獣なんて珍しいですし、大事にされてたんですね」

 俺が安全な存在だと分かり落ち着いてから、少女はずっとキラキラした目でこちらを見つめていた。


 しかし、大事にされてたかどうか俺は知らない。

 そもそも現状について俺が知ってる情報は少なかった。


 自分のマスターが誰なのかってこと。

 サポート女さんが俺をサポートする存在であること。

 視界の隅に浮かぶモニターの操作方法。

 スキルの使用方法。

 あとは……


「俺はユニコーン型の機獣じゃないらしいぞ。幻獣型の機獣でモデルは麒麟キリンだそうだ」


「幻獣型……! 聞いたことありません! もしかしたらオンリーワンな機獣かもっ!? でもキリンって何だろう……?」


 あ。この子は麒麟を知らないんだな。

 まぁ俺もほとんど知らないけども。


 俺の知識で分かるのは、白虎や玄武とかに並ぶ神獣の1体ってイメージだけのものだ。


 東西南北それぞれの方角を白虎などが象徴していて、中央を象徴するのが確か麒麟だった……と思う。

 そういえば麒麟って馬と言うよりも、むしろ鹿に近かった気がするんだが。


 ってことは——


「俺は馬であり、鹿でもあったということか……」


「——つまり、馬鹿ということですね」


「おいっ! 人がわざと最後まで言わなかった事を! ってかお前にも同じ事が言えるんだからな?」


 俺の心を読んだサポート女さんがいらぬチャチャを入れて来た。

 うるせぇよ! 誰がバカだこら。


「あれ……さっきの女の人もいるの? 結局、アナタたちの事はなんて呼べばいいのかな?」


「ん?」


 なんて呼べばいいんだろうな。

 というか——


「サポート女さんって名前あるのか?」


「——私には愛称・別称などありません。現在まで麒麟と呼ばれていました」


 あれ?

『サポート女さん』って俺の呼び方は愛称としてカウントしてくれてないのか。

 まぁ俺が勝手に呼んでただけだしな。

 第一印象が悪かったのもあって、呼び名としても酷いし。


「俺はハヤテでいいよ。やっぱりそっちの方が呼ばれ慣れてるしな」


「うん、じゃあハヤテさんって呼ぶね! それじゃ女性の声の方はキリンさんって——」


「——進言。私とハヤテはどちらも個体名としては『麒麟』に該当します。個体差を図るために、私にも別名を付ける事を提案します」


 さりげなくハヤテと呼び捨てにされた。

 まぁそれはいいとして、どうやらサポート女さんは名前が欲しいらしい。

 提案と言いつつ言葉から感じる圧力がすごい。


「そ、そうですか。じゃあ何か考えてみるね。うーん……」


 少女もその圧力に少し怯えながらも、サポート女さんの名前を考え始めた。


「……キリンだから、リンちゃんとかどう?」


 あはは!

 リンちゃんってそんな可愛い名前はサポート女さんの柄じゃないだろ。

 もっと冷酷非道で、トゲトゲした感じの名前の方が似合う——っぐぇ!


「あ、あの…気に入らなかった? なんか電流がバチバチいってるんだけど……」


「——いえ。素敵な名称をありがとうございます。けれどメインの承認が下りなかったことですし、別の名称も検討したいのですが、よろしいですか」


「? わかりました」


 また電流ビリビリをやられた。

 なんでやったコイツは痛くなくて俺だけ痛いんだろう?

 理不尽な。


「……う~ん」


 再びサポート女さんの名前を考え始める少女。

 そういえば今気づいたけど、俺この子から自己紹介されてない。


 まぁマスター情報に名前が登録されてたから、すでに知ってはいるんだけど……。

 こういうのって知っていても1度は直に名乗ってもらいたいじゃないか。

 そんなことを悶々と考えていたらこっちに矛先が向けられた。


「思いつかないなぁ。ハヤテさんも何か考えてよ?」


 考えに煮詰まったらしく、俺にも意見を求めてくる少女。

 名前ねぇ。

 麒麟から捻って考えるというのは良い線だろう。

 となると……キリン……KIRIN……


「……生ビール?」


「——消滅したいですか?」


 え。サポート女さん俺を消滅させたりできんの?

 怖っ!

 上下関係とはいったい何だったのだろうか……。


「——非常に遺憾ながら、私では貴方を消し去ることはできません。非常に遺憾ながら」


 ほっ。安心した。

 ていうか遺憾ながらって2回言ったよコイツ。

 どんだけ残念なんだ!

 出来るならやってたという雰囲気に満ちている。

 悪かったって冗談だから!



 真面目に考えないとまた電撃をお見舞いされそうなので、少し真剣に悩んでみる。


 うーむ、キリンかぁ。

 ビール以外だと首が長い動物の方ばかり思い浮かぶな。

 この際、響きが良ければそっちから連想してもいいかもしれない。

 えっと、英語でキリンは……ジラフだっけ。

 じゃあ——


「ジラっていうのはどうだ? イメージに合うと思うんだが」


 俺としてはしっくりくるネーミングだ。

 性格がちょっとキツイところが、うまく表現できてる気がする。


「ジラかぁ! うん、呼びやすいし年上のお姉さんって感じでいいと思う」


「——承認。個体名にジラを追加します」


 2人も賛成してくれたようで何よりだ。

 無事にサポート女さん改め、ジラの名前が決定した。


 ついでにさっきのもやもやも解消しておこう。


「よかったら、俺にもマスターの名前を教えてくれるか? ……知ってはいるんだけどさ。一応な」


 そんな俺の申し出に、少女は笑顔で返事をした。


「そういえば、ハヤテさんにはまだ言ってなかったね。 わたしはアイリ。アイリ・ラストだよ。 よろしくね!」



こうして色々あったけども、俺とアイリ(とジラ)のこの世界での付き合いが始まったのだった。



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