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海沿いの町 シマノエ 3

まったり更新


 「美少年モード」と名付けた変形が可能となった次の日。

 せっかく人型の姿になれたので、今朝はこの状態で日課のジョギングを行った。

 麒麟の姿とは違って、町中を走っても大丈夫そうだったので大通りを中心に走り回ってみる。


 しばらく走ってみて分かったが、

 この人型状態でも身体能力が非常に高い。


 試しに壁を蹴って昇ったり、高い所から飛び降りたりといったパルクールみたいな動きをしてみたら、いとも簡単にできたので驚いた。

 実は前世で動画などを観て憧れていたので、ついつい色々チャレンジしてしまった。


「……よっと」


 高台に上って、周囲を見渡す。

 そこからは朝日を浴びる街並みが一望できた。


「んっ~!……はぁ」


 俺は伸びをして身体をほぐし、息を付く。


 こちらの世界に来るまでは、数か月も病院のベッドの上だった。

 この世界でもずっと馬の姿だったので2本の脚で走るのは、とても懐かしく感じた。


 流れる町並みと吹き抜ける風。

 躍動する身体を実感して、楽しい気分になる。


 やっぱり、俺は走るのが大好きだ。


(——メイン、マスターが朝食の時間だと。帰宅して下さい)

 

 お。

 アイリに渡してある眷属の子蜘蛛から伝言が来たらしい。

 今日は俺の身分証明として、ギルドに冒険者登録をしにいく予定だ。


 いつまでもアイリの世話になってばかりもいられない。

 この世界での、生活の基盤を作らないとな。



◇◆◇



 ギルドに到着して、中へと進む。

 建物に入ってすぐに、総合受付が見える。


 公共の設備という雰囲気がある綺麗な室内に、筋肉質な荒くれ者っぽいや、ゴテゴテとした装備を全身に纏った戦士、アイリくらいの年齢の少年少女といった冒険者たちがちらほらと居た。


 前回は眷属の蜘蛛越しに見ただけだったが、実際に見てみるとすごく広い。


 中心にギルド職員がいる受付あり、壁沿いには素材の解体所と売買を行うカウンター、入口の横には簡易な酒場なような飲食施設がある。

 そして余っている空間には、不思議な端末が並んでいる。 パッと見ると、銀行に並んだATMのようだった。



 俺はアイリと一緒に総合受付へと足を運ぶ。


「おはようございます、マーヤさん」

「あら、アイリちゃん。……あら、そっちの子は?」

「あ、この子はハヤテって言って、私のおじいちゃんの親戚です」 

「えっと。初めましてハヤテです」


 アイリに紹介された俺は、取りあえず挨拶する。

 どうにも、子ども扱いされることにまだ慣れない。


「今日はハヤテの冒険者登録をしにきたんです」

「そうなの。ハヤテ君、何歳?」

「じゅうな……14」


 とっさに、前世での年齢を答えそうになってしまった。


「14歳か、じゃあ冒険者登録できる年齢ですね」


 12歳から冒険者登録ができるそうだ


 年齢を誤魔化すことに抵抗はある。

 今後は13、4歳として過ごさないといけないしな。


 だが多少、生意気だと思われるかもしれないが普段通りの言動でも問題がないくらいの年齢だ。


 あまり気にしないようにしよう。



「じゃあ冒険者カード作成料とステータス確認に、5000Eイーかかります」

「はい」


 アイリから受け取っておいたお金を取り出す。


 この世界の通貨は「Eイー」というもので、特殊な金属でできているコインと棒状のものだ。

 少額だとコインで、1000Eを超えると棒状の通貨になる。

 なんというか棒状の方は、麻雀の点棒を思い出す形状だ。

 何にしても前世の通貨とそこまで差がないので、使いやすい。

 受付の人に、1000Eの棒を5本を取り出して渡した。


「はい、確かに。ではこちらでステータス確認を行います」


 案内されて連れていかれたのは、ATMのような機械が並ぶ場所だ。

 その中でも、他の物とは違う、立派な端末の前に立つ。


「それでは、この機械に入ってください」

「わかりました」


 なんとそのATMもどきの端末は中に入れるらしい。

 恐る恐ると中へと入っていくと、端末の中は全面に明かりが灯っており、真っ白な空間になっていた。


 扉が閉じられて四角い白い空間に取り残される。


「ではこれからステータス確認をします。楽にしててください」


 どこかにスピーカーでもあるのか、受付の女性の声が聞こえてきた。

 機械が動く駆動音が聞こえて、身体全体に青い光がレーザーライトのように当たるが痛みなどは無い。


「……はい。終わりました。扉を開けますね」

「ふぅ」


 どうやら問題なくステータスの確認が終わったらしい。


 一応、【変形トランスフォーム】の効果で俺のステータスは14歳の人族の子供に設定してある。


 麒麟に関わるスキルはほとんど非表示にし、雷属性の魔法が使えることにしている。


 魔力量や行使力に関しては悩んだが、強い分には問題ないだろうとアイリのを参考に高めに設定した。


 あとは精霊適正だが、魔法の才能に関係しているらしい。

 雷属性を使えるのは風属性に適正がある人らしいので、そこも少しイジっておいた。


 受付の女性が、検査結果のデータを見せてくれた。

 今の俺のステータスはこんな感じだ。



◇————————————◇

 名前:ハヤテ

 年齢:14

 種別:人族・男


 魔力量:4000/4000

 魔法行使力:250


 【スキル】

 ・雷属性強化



 【魔法】

 ・雷魔法

 ・生命魔法


◇————————————◇



 スキルの欄がスカスカになってしまって寂しいが、これでも俺の見た目からは想像が出来ない程に強いらしい。


 ちなみにアイリに見せてもらったステータスはこんな感じだった。



◇————————————◇

 名前:アイリ・ラスト

 年齢:15

 種別:人族・女


 魔力量:2200/2200

 魔法行使力:180


 【スキル】

 ・消音

 ・魔力探知カット

 ・熱源探知カット



 【魔法】

 ・火魔法

 ・風魔法

 ・水魔法

 ・生命魔法


◇————————————◇


 俺より魔力量や行使力は低いが使える魔法の種類が多い。

 ジラによるとアイリは精霊適正が非常に高いそうなんだが、ギルドでは精霊適正については調べられないそうだ。


 ジラがアイリの精霊適正の高さに驚いていたが、確かに火・風・水魔法がアイリは使える。

 さらに土属性も適正はあるらしい。これで四大属性はコンプリートだ。

 


 生命魔法についてジラさんに聞いてみると、回復魔法や身体強化魔法などが使えるようになるという話だ。


 俺も身体強化の魔法を無意識に使っていたらしい。

 使える魔法はスキル欄には表示されないので、使えること自体を知らなかった。



「……ハヤテくん、すっごく強いわね!」

「ん?」


 俺が無事にステータスを誤魔化せたことに、ほっとしていると受付のマーヤさんが話しかけてきた。


「14歳で雷魔法が使えて、この魔法量と行使力って今まで見た事ないわよ。天才だわ! それもこんな可愛いのに……!」


 マーヤさんはえらく興奮しているようだ。

 あれ? 思ったより評価が高いな。

 本当は、このステータスの3倍は強いのだが……。


「ど、どうも」

「期待の新人さんね♪ これが冒険者カードよ。あと冒険者について注意事項なんかを説明するわね」



 その後、マーヤさんから冒険者をやるにあたっての諸注意と説明を聞いた。


 と言ってもこういうのは、ゲームや小説などで慣れているのでさっくりと理解できた。

 

 「ギルド」は冒険者が集う組織で、各国とは対等な協力関係を築いている


ランクはFから始まり、最終的にはSという風に推移していく。


 冒険者にはカードや端末が与えられるらしい。

 F、Eは冒険者カード。

 D~Sは冒険者端末が貰えるそうだ。


 「冒険者カード」はただの金属の板で、

 「冒険者端末」はスマホのように画面があって情報を調べたり記録したりでき、上位のランクの物は通信ができるものもあるらしい。



 主な仕事は、依頼クエストのかたちで要請される。

 魔物の討伐、素材の採取に加えて、アーティファクトの買取、遺跡調査などいろいろある。


 あと、ケガや死亡に関してギルドは責任を負わない代わり冒険者には相応の自由権があるそうだ。

 まぁ、何があっても自己責任ってことだよな


「説明は以上です」

「わかった」


 何か分からない事があったら先輩のアイリに聞けばいい。

 これで俺も晴れて冒険者だ。

 

「あ。そういえば、すでに狩ってる魔物が討伐依頼にあったら達成になるのか?」

「依頼がされた日以降に、討伐したが確認されれば大丈夫ですよ。何を討伐されたんですか?」

「ブラック・ウルフっていう魔物なんだが……」


 俺はアイリに視線を送る。

 これは事前に話し合ったことだが、

 俺の【次元収納】について秘密にするのはいいが、どうしても不便になる。


 そこでクチールに相談してみたら、「格納鞄ストレージ・パック」という、次元収納のような魔導具があるのでそれを使っているように見せたらいいと教えてもらった。


 クチールが容量が少なく不良品の格納鞄ストレージ・パックを持っていたので、それを先代物資アーティファクトと物々交換で譲ってもらい、今はアイリが持っている。


「今は格納鞄ストレージ・パックに入れてある」

「そうですか。ブラック・ウルフなら常時、討伐依頼が出てますね。……では解体所まで一緒に行きましょう。そこで魔物の確認をします」


 ということで解体所へと移動する。

 そこには一昨日も見かけた、小柄な男が受付に居た。



「お。一昨日のマッドイーターを倒した嬢ちゃんか。今日も素材の買取か?」

「あ、今日はわたしじゃありません」

「俺が素材の買取を頼みたいんだが、結構な量がある。どこに出せばいい?」

「モノは何だ?」

「ブラック・ウルフを30頭だ」

「さ……30頭!?」


 話を横で聞いていたマーヤさんが、俺の言葉に絶句する。

 俺がやったわけじゃないよ?

 ジラが戦闘訓練と称して、大量殺戮しただけだ。


「……おい、坊主。見ない顔だが、王都から来たのか?」

「あー。いや、俺は山奥というか、田舎の出身だ」


 自分の出生について詳しく話すわけにもいかないが、かと言って王都から来たというのも無理がありそうなのでお茶を濁すような返答をする。


 詳しい設定を決めてないから、あまり突っ込んで聞かないでくれ……。

 そんな俺の想いが通じたのか、小柄な男はそれ以上は聞いてこなかった。


「ブラック・ウルフを30頭ってなると、ここじゃ無理だな。裏に来てくれ」


 そのままギルドの奥に進み、広い空間へと連れていかれる。


「ここに出してくれ」

「おう。アイリ、頼む」

「はーい」


 アイリが巾着くらいの大きさの革製の袋を取り出して、それを下に向けて口を開く。

 そこから魔法陣みたいなものが現れたので、そこに俺の【次元収納】から出したブラック・ウルフを出現させる。


 これでぱっとみると、袋から狼が出たように見えるだろう。



「ホントに30頭いるみてぇだな……、マッドイーターのお嬢ちゃんといい、最近のガキはとんでもねぇヤツばっかりだな」


 こんもりと山になった、狼の死体を前に呆れた様子の男に受付のマーヤさんも頷いて同意していた。


「ハヤテくん……! これは要チェックの新人ね!」


 期待されるのはありがたいが、これをやったのは俺ではないぞ。


「……お、おい。あのガキ、この前の!」

「ああ。マッドイーターのガキだ」

「なんだ、あのブラック・ウルフの山……」


 俺たちがちょっとした騒ぎを起こしてしまったのか、解体所にいた他の冒険者の目にも止まったようだ。

 その中には先日、アイリの陰口を言っていた3人組の男たちがいた。

 3人は獣人のようで、こちらに対して鋭い目を向けている。その尻尾は地面を叩いたりしており、不機嫌な様子が見て取れる。


 これは、その内いちゃもんを付けられる気がする。

 今回はアイリではなく俺が原因なのだが、相手にしてみれば知ったことではないだろう。


 面倒くさいことになりそうだ。





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