—閑話— 黒歴史・製造マシーン
煮詰まると人間、こんなしょうもない閑話も書きたくなっちゃうんですよ。きっと……。
「ふぁぁ……」
スリープモードから目覚めた俺は、あくびをしながらアイリの家を歩く。
クチールから自動人形を譲り受けて、俺は人間の姿を取れるようになった。
年齢こそ、高2から中3くらいになって身長も縮んだが、馬の姿に比べれば元の姿に近いぶん落ち着くというものだ。
いや。馬の姿を否定するわけじゃないがな。
あの姿で走る爽快感も捨てがたいと言えるほど、俺は麒麟型の自分にも愛着を持ってしまった。
ただ、あの姿だと生活をする上で、どうしてもアイリと一緒に過ごせない事が増える。
つまり、状況によって使い分ければいいって話だ。
「にしても……」
顔を洗うために洗面台まで来た俺は、鏡に映る自分を見つめる。
「この顔は見慣れないよなぁ」
鏡に映った容姿端麗な顔は、ジト目を浮かべてこちらを睨んでいる。
頬まである紺色の髪に、寝ぐせがついていた。
アホ毛みたいにひっくり返っているその髪の毛も、顔が美少年だと愛嬌があって可愛いだけである。
(——おはようございます主。寝ぐせくらいさっさと直してください)
バリッ!
と電気が流れるような音がしたと思ったら、髪にあった寝ぐせがなくなり、サラサラと流れるような髪形になる。
あ。頭の上のアホ毛が何故か残ってる……。
いや、それよりも。
「おいジラ。今何やったんだ?」
髪を梳かす手間が省けたのはありがたいが、何をやったのかは気になる。
(私たちの毛は、雷毛という魔導武装です。魔力を流す事で電気を纏い、自在に操れます)
毎度のことだが、初めて聞いた気がするんだけど?
いや、確かステータスに武装一覧があったか。
そう思って、確認してみる。
◆————————————◆
【魔導武装】
・天角 [解放・封印]
・魔導蹄
・魔導尾—雷尾—
・魔導毛—雷毛—
◆————————————◆
ふむ。
角・蹄・尾・毛が武装になってるんだよな。
何というか、モンスターをハンターするゲームの素材みたいだ。
「今は角や尻尾が無くなってるけど、どういう扱いになってるんだ?」
(——現在は次元収納にあります。もし生やしたければ、どうぞご自由に?)
あ。
【変形】スキルって、そういうオプションも可能だったか。
獣人に化けたりもできるかも?
……ダメだな。ケモ耳が生やせない。
(ちなみに、「蹄」は手が代替パーツとして扱われてます)
ふーん。
試しに、右手に魔力を流すの想像してみる。
……唸れ! 俺の右手ッ!
——キィィーンッ!
……パチッ、バチッ、バリ、バリバリバリッ!!
うぉお!?
静まれ! 俺の右手ッ!
右手を包むように球状で生まれた電気を纏う光に、慌てて俺は魔力をかき消すように右腕を振る。
すると、球体は空気に溶け込むように消え失せた。
今までの戦闘では天角を開放することで、魔力が自然と身体中に流れていた。
まさか、自分の意志でこんな簡単に操作できるものだとは思わなかった。
(魔力が流れる感覚に慣れていたからでしょう。一般的に魔力を操れるようになるためには、相応の才能と時間が必要です)
「……しかし、あぶねぇよこれ」
力加減が難しいなんてもんじゃない。延焼していく炎みたいに、危険な力が一気に広がるのを感じた。
「要、練習だな」
こっちの世界に来てから、やることばかりが増えてるな。
まぁ、全く新しい環境なのだから仕方ないことだが。
あ。そういえば髪に魔力を流せば、自由に動かせるって話だっけ?
それは危なくなさそうだし、楽しそうだ。
もしかしたら魔力操作の練習にもなるかもしれない。
試しにやってみる。
「ふんッ!ぐぐッ……、お?」
前髪に目線を集中させて、そこに「動けッ」とイメージしながら魔力を操作してみる。
すると、見ていた前髪がパリッと静電気のような音をさせて動き出した。
「おおっ!」
段々と慣れてきて、動きが大きくなってくる。
そこそこ神経を使うが、もう自由自在だ。
こういう小さいことでも、楽しいもんだな。
ゲ〇ゲの鬼〇郎ごっことかできるぞ。
「父さん! 妖気ですッ!」
ピーンッ!
(——。主はいつになったら学習するんですか。私がいるのに何を恥ずかしいことをしてるんです?)
あ。
……い、いいじゃないか。
ちょっとは見て見ぬふりしてくれよ。
ていうか、さすがにそろそろ恥ずかしさを通り過ぎて平気になってきたぞ。
ジラの事は、もう一人の自分ってことで割り切る事にした。
開き直る俺に、ジラは呆れたようなため息をつく。
(——はぁ。分かりました。もう主がそういう行動をとっている時は黙っておくことにします)
お。物分かりが良いな。
さすがズッ友、仲良くしようぜ。
せっかくだから、俺の世界でのネタを色々と見せてやるからさ。
◇◆◇
「あ、ハヤテ。おはよ……う?」
洗面所のドアが開き、アイリが入ってきた。
「……お、おっす」
驚きに見開かれたアイリの瞳は、天へと昇るように逆立っている俺の紺色の髪をジッと捉えていた。
そのまま下へ視線は移って、通称「気を溜めるポーズ」をしながら、バチバチと電気を纏っている俺をゆっくりと上から下まで眺める。
「えっと……お邪魔しましたぁ~」
そう言って、アイリがスッと壁にあるパネルを操作して洗面所の扉が閉じられる。
——俺はその場で泣き崩れた。
ドラ〇ンボー〇を知っていたら、溜めますよね「気」。
か〇はめ波も撃とうとするし、元気だって集めちゃう。
それが日本男児というものです。(断定)




