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人型

夢がある。という理由で設定が追加されていく……。


 その人形は、窓からの光に照らされていた。


 暗闇に包まれた物置にある、ぽっかりと明るい陽だまり。

 その中で座り込んでいる姿は、幻想的とも言えるほど不思議な雰囲気に満ちていた。


 深淵のような黒髪を頬に垂らしているその顔は、目を閉じているからなのか、中性的に見える。

 男とも女とも取れるその姿は、人形だからこそ出せる美しさなのかもしれない。


 関節部分には、機械としての名残ともいえるパーツの繋ぎ目が見えた。

 だが、もしそれがなかったら本物の人間と区別がつかなかっただろう。

 それほどまでに精巧な作りだった。



『この子』

「……。ああ、何て言うか。本当に人間みたいなんだな自動人形オートマタって……」


 思わず口籠ってしまった。

 一瞬うまく声が出なくなるほど、そのどこか不思議で綺麗な姿に感動していた。


「この人形は、男……なのか?」


 その人形の体躯はアイリと同じくらいで、前世の俺よりもかなり年下のそれだ。

 身体に女性特有の起伏などがないことや、骨格となっているパーツの様子から男性がモデルなのではないか、と俺は予測した。


『そう。とっても貴重な機械。ボロボロだったのをアタシが直した。だけど……』


 クチールがその自動人形オートマタを見つめながらゆっくりと語る。


『この子は中身が無い。外側だけしか見つからなかった』


 残念そうに語るその言葉には、どこか人形に対する哀れみのようなものも感じた。


 クチールは一体どういうつもりでこの人形を直したんだろうか?

 エンジニアという仕事をする中で、彼女にとって機械とはいったいどんな存在なのだろう。

 そんな事がちょっと気になったが、口から出ることはなかった。


「もし、俺がこの人形の姿に【擬態】したいから、欲しいって言ったら……。譲ってくれるか?」

『【擬態】?』


 俺はその場でクチールにざっくりとそのスキルの効果を説明する。

 実際にやってみたことがないので、どうなるか俺も詳しくは分かっていないが、スキル詳細に載っていたことを元に話した。


『そっか……。この子の姿を使って、動けるんだ』

「ああ」

『……』


 黙り込むクチールに、俺はやっぱり駄目だったかなと諦めの気持ちになる。

 本人はくわしく語らないが、この自動人形オートマタに並々ならぬ想いがあるというのは俺でも分かる。


 それを譲ってくれとは、無理に頼みづらい。


 最初こそ、どんな事をしても手に入れたいと思っていたが、今のクチールの様子を見ているとそうも言えない。


 この世界の人々と、機械の関係性を俺は未だに掴み切れていなかったのだ。

 俺が、どこまで気軽な気持ちで踏み込んでいいのか全く分からない。

 なので、手探りで相手の様子を探っていくしかない。


 じっとクチールの様子を伺っていると、彼女は下げていた視線を上げて、こちらを見た。


『いいよ』

「え」


 俺を見つめるその瞳には迷いがなく、むしろ俺が気後れするほどの強い光があった。


『ただし。一生、使って』

「……。一生?」

『うん。死ぬまで』


 えっと……。

 機械の俺に死ぬってことがあるのかは謎だが。

 それくらい大事にしろってことだろう。

 俺は覚悟を問われているらしいが、そこまで心の準備はしていなかった。


 もう一度、自動人形オートマタの方を見る。


 まるでそこで眠っているだけのように見えるその美しい姿に、心が奪われるようだった。

 一生の付き合いか……。


 クチールに向き直って、その瞳を真っ向から見つめ返す。


「ああ、わかった」

『……。そう、ならいい』


 少しだけ、はにかんだ笑顔をしたクチールは俺にそう言ってくれた。


 信頼を得られたわけではないだろうが、信じてみようと決めてくれたようだ。



◇◆◇



 さっそくその自動人形オートマタを【擬態】に登録しようと思い、ジラのアナウンスにしたがってスキルを起動する。


「——【擬態】の登録を行います、対象に触れてください。

 ……異常発生。

 【次元収納】と【アライメント調整】が連結起動するのを確認。

 スキル効果が上昇しました。

 パーツ構成を最適化しています………………」


 自動人形に触れてすぐにその姿が、次元収納の中に掻き消えた。

 その後、俺の身体が光りはじめ、色々な所のパーツがガチャガチャと音を立てて動いている。


 な、なんだ!?

 何が起こってる?

 これ大丈夫か?

 肩の関節とか、すんごい事になってるけど……。


「……完了。「人型」が登録されました」


 どうやら無事に登録は完了したらしい。


(——いえ。予定外の事が起こっています)


 おや?

 ジラさんから、また問題発生の報告がくる。

 そういえばさっきも異常発生って言ってたもんな。


(【次元収納】と【アライメント調整】が起動したのは予定外です)


 ああ。

 俺のスキルの中でも、

「効果が1番実感できる」ヤツと

「イマイチ効果が実感できない」ヤツね。


 それがどうかしたのか?


(【アライメント調整】の効果で、【擬態】が【変形トランスフォーム】という能力に変化しました……)


 んん?

 どういうことだ?


 俺は疑問に思って、スキル一覧から【擬態】を確認する。

◆————————————◆

【スキル】

 ・天穿テンセン

 ・纏雷テンライ

 ・厳槌イカヅチ

 ・雷伝ライデン

 ・***[ロック]

 ・***[ロック]

 ・雷属性強化

 ・魔力供給

 ・分析再現

 ・次元収納

 ・眷属ネットワーク

→・変形トランスフォーム


 ・超回復

 ・アライメント調整

 ・ランナーズハイ

 ・セカンド ウィンド


◆————————————◆


◆————————————◆

変形トランスフォーム

 登録した形体に変形できる。また部分的な変形も可能。

 登録枠:1

 種別・性能・能力の情報を改変できる。

◆————————————◆



 おおう。

 確かに【擬態】がなくなって、新しく【変形トランスフォーム】が追加されているな。

 説明文から考えても、【擬態】が【変形トランスフォーム】に変化したのは間違いないだろう。


 しかし思ったより内容が変わってないようだが、どう違うのだろう?


(——全然違います。当初は【擬態】スキルを使い、擬態先の身体の中へコアを行き来して外見を装う予定でした)


 ふむふむ。

 幽霊が他の身体に、憑依する感じだろうか?


(しかし【変形トランスフォーム】は文字通り、麒麟型から人型へ「変形トランスフォーム」します。その際に余剰な質量は自動で次元収納に入るそうですが……。異次元にあるパーツとも接続状態になるようで……、正直……、もう何がなんだか……)

 

 じ、ジラさんが未だかつて無いほどに困惑している!?

 えっと……?

 つまり、どういうことだってばよ!?


(——理解不能ですが……。あなたは自由に人型と麒麟型に変形できます。能力は麒麟の物が全て引き出せます。魔導武装なども麒麟型に搭載すれば好きなように接続できます。以上です。)


 そんな投げやりに説明しないでくれよ!

 俺のせいでこんな事になったわけじゃないのに……



 ジラの話を聞いたところ、今まで特に目立たず、大人しかった【アライメント調整】さんが大はしゃぎしたらしい。


 【擬態】によって、麒麟型→接続→人型となるところが

 【変形】によって、麒麟&人型という形になったらしい。

 しかもこのスキルを鍛えると、部分的に【変形】も可能なようだ。

 つまりアラクネみたいに、上半身は人型で下半身は馬型のケンタウロスとか目指せてしまうのである!

 まぁ別にやらないけどな!


 説明されても、どう便利なのか実感できない俺だったが、

 いちいち接続などのステップがなくなったので、手頃になったくらいに思っておこう。



 まぁ。何はともあれ。



「じゃあ、今から人型になるぞ。一応2人は離れてくれ」

「うん。わかった!」

『ん』


 2人が離れたのを確認してから俺は【変形トランスフォーム】を使おうとする。


 しかし、やっぱり「変身っ!」とか「トランスフォームぅ!」とか言った方がカッコイイのだろうか……。

 こういうのは初めが肝心だ。非常に悩む……。


(——阿呆なことを考えていないで、さっさと【変形トランスフォーム】しなさい)


 ちょ、ちょっとそんな焦らせるなよ。

 くそっ! カッコイイ台詞を事前に考えておくんだった!

 ええい、ままよっ!


「フォームチェンジっ!!」


 とっさに思いついた言葉とともに【変形トランスフォーム】を起動する。



 すると、人型を登録した時のように全身が光り出し、身体がガチャガチャと自動で動き出す。


 うぉぉお!

 身体が……二足歩行に直立させられる!

 背筋が勝手に伸びるぅ!

 首が縮んで……うわぁぁあ!


 わずか数秒の間に色々な事が身体に起こる。

 そして狼狽する俺を置き去りにして【変形トランスフォーム】は終了した。


「はぁ……はぁ……。死ぬかと思ったぜ」

「……!?」

『……!!』


 無事を確認して、ほっと息を付く俺。

 そんな俺を見て、硬直しているアイリとクチール。


 不思議に思い、そちらに目を向けると……。


『「可愛いっ……!」』


 という言葉とともに、ジワジワとこちらに近寄ってきた。

 そのまま2人にサンドイッチされるような形で纏わりつかれて、頭を撫でられる。


「お、おい。お前ら、ちょっと落ち着け!」

「ハヤテ……、すっごく可愛いよ! ホントに男の子?」

『ん。あの自動人形オートマタから天使が生まれた』


 2人と同じ身長くらいになった俺は、どうやらそうとう見た目がアレらしい。


 自動人形オートマタの姿でも綺麗だとは思ったが、今はどんな容姿なのだろうか?


「今の俺って、そんな可愛いのか? 自分じゃ分からんのだが」

「うん。とっても! クチール! 鏡ある?」

『あっちに洗面所があるから、そこに行こ』


 2人に連れられて、洗面所に行った俺は自分の姿に目を疑った。



「……どうしてこうなった」


 鏡に映っている裸の少年は、ベースこそ同じだが自動人形オートマタの時とは全く違う容姿だった。

 関節部分に見えていた機械部品なども見当たらない。

 どう見ても、人間の子供だ。


 しかし、それよりもその見た目に驚いた。


 吸い込まれそうな夜闇に似た紺色の髪。

 その髪はサラサラで、光の反射によっていわゆる「天使のわっか」が出来ている。


 透明感のある顔立ちはまだ幼いが、将来は美男子になることが疑いようもない程に整っている。


 大きな瞳は緑色で、草原に吹く風のような爽やかな印象を受けた。



 前世でもそこまで顔面の偏差値は低くなかったと思うが、この顔を前にしたら不細工だったとしか言いようがない。


 ナニコレ。可愛すぎない?

 てか、中身おれに全く釣り合わなくない?


 さっそく、後悔の念がうまれてきた俺だったが、そこにトドメの一撃がもたらされる。


(——ふふ、よくお似合いですよメイン。ちなみに【変形トランスフォーム】の登録枠の関係で、その形体以外には変形できません。ご留意ください)



 どうやら、今後はこの美少年モードとうまく付き合っていかねばならないようだ。



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