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海沿いの町 シマノエ 2

ようやく20話!

説明回でもあるので、ちょっと長めです。


 海の沿いにある町「シマノエ」


 丘を背にして海へ斜面上になっているこの町は、自然と建造物が調和している港町だった。


 しかし調和されたその外観の中で、いくつか他より目を引く部分がある。

 

 その中でも特に目立っているのが、町のシンボルにもなっている巨大な砲台だ。

 高層ビルほどありそうなその砲台が中央広場の真ん中に設置されており、そこを中心に繁華街となっている。

 

 さらに町のところどころにも、大小さまざまな砲台が設置されており、その砲口は海へと向けられていた。


 そんな軍事拠点のような様相を呈しているシマノエであるが、町そのものは海運業と、それに伴う大市場、さらには工場や工房があって非常に栄えており、平和だった。




 朝日を浴びる街並みは機械的な中にも緑が各所にあり、のどかな空気が流れている。

 海の方へ眼をやれば、西側の方には突き出たような半島があり緑が溢れている。


 そんな中で俺は町の東門へと向かっていた。


 人間だった頃の日課であった、朝のジョギングをするためである。

 この時間帯のジョギングは人通りが少なく、暁に照らされる景色は綺麗で走っていても心が洗われるようだった。

 中学生の頃から、俺はこの日課を非常に気に入っていた。


 シマノエに到着した初日、俺はジラによる戦闘訓練で精神的に疲れてしまったので帰宅後スリープモードで爆睡してしまった。


 朝日が昇る共にスリープモードは解除されたので、俺はアイリの家の外へと繰り出した。

 この時間帯になるとどうしても走りたくなってしまう。


 アイリによると、朝は機獣たちに命令して外へと送り出すマスターが多いらしい。

 

 なんでも1日に必要な魔力を、魔物を倒す事で補充できるそうなのだ。

 魔物は夜の間に生まれるので、まだ弱いうちにそれらの魔物を処理できるという町の住人の利益とも一致している。

 毎朝、機獣たちによる魔物の一掃はシマノエの町ではいつもの光景となっているようだ。


 そのおかげで俺も気兼ねなく町から出入りできるのだから、ありがたい話だ。


 当然、俺は魔物の駆除をやる気はない。

 昨日の夜だけでも、十分疲れたからな。


(——いいえ。あれは私がレクチャーしたに過ぎません。メインにはもっと実践を経験していただきます)


 あーあー!

 聞こえないー!


 とにかく、今朝は楽しく走るだけ!

 魔力の補給は全く必要ないが、スキルのおかげで俺は走るだけでも強くなるらしいので一石二鳥だ。



◇◆◇



「ん? おお、昨日の機獣か。魔力補給のようだな」


 東門へ行くと、昨日魔物を倒したときに見かけた見張りが居た。

 その見張りは、明るく笑って俺を送り出してくれる。


 門とは言うものの、町全体が石壁や柵で覆われているわけでなく、街道などに繋がっている場所にアーチ状の出入り口があるだけだ。


このアーチの内側には結界が張られてるらしく、町中ではこの結界の影響で魔物が発生する事が無いそうだ。


 また、魔物やバグズなどの町の脅威となるものが浸入すると各所の警報が鳴るようになってるらしい。


 しかし、一見するとかなりオープンなのは変わりない。

 こんな警備で大丈夫なのだろうか?


(——海からくる脅威から逃れる際に、出入口が狭いと非難しづらいという事に配慮したんだと思われます)


 ああ、なるほど。

 砲台も海に向けられてるもんな。

 視界が開けている街道方面より、海中から現れる敵の方が怖いのか。



 俺は霊機であることを隠すために、無言で目立たないようアーチ状の門をくぐった。


 昨日アイリと決めたことだが、しばらくの間はエンジニアのクチール、町長とその息子たち、ギルマスのボーン以外とは会話しないことにしたのだ。

 ギルマスからもあまり霊機について吹聴しないよう言われているしな。


 そんな事を考えながら町を出た俺は、

 町から少し離れるとすぐに駆け出した。



 俺たちがシマノエに来たときは違う方角に湾岸道と呼ばれる海沿いに伸びる道があった。


 そこは海を見える石畳の道で、昨夜走った草原とはまた違った気分で走る事ができる。


 今はジョギングなので、全速力ではない。

 あまり町から離れすぎると戻るのにも時間がかかるしな。

 まだ寝ているアイリのそばには眷属の蜘蛛機械を置いてきているが、それでもアイリが目覚める頃には町に戻っておきたい。


「ふん♪ ふ~ん♪」


 よく聴いていた好きな曲を口ずさみながら軽快に走る。


 走るたびに魔力を消費しているはずだが、その魔力もスキルによって全く減らないどころか逆に増え続けている。


 つまり、今の俺は無限に走り続けられるのだ!


(さすがにメンテナンス無しでは、身体の耐久が限界を迎えると思いますが……)


 そういう真面目な返答はいらん。

 気分の問題だ、気分の!



 往復30分ほどのジョギングを終え、

 俺はアイリの家へと帰宅した。



 朝日も完全に登り切り、アイリも目を覚ましたので一緒に朝食を食べる。

 今朝は俺も食事を取ってみたが、どうも魔力の回復はあまりしないようだ。


 アイリによると、良い魔物の肉や素材ならもっと魔力も回復するそうだ。

 しかし、市販のマナマテリアルや魔物の魔核まかくの方が回復効率が良いため、そちらを使うのが一般的らしい。

 だがそもそも俺は魔力が自然に回復するし、走っても回復するので魔力回復は必要ない。

 完全にアイリと一緒にご飯を食べたいという願いのための食事である。




 アイリは、朝はギルドに顔を出すのが日課らしいので朝食後は身支度を整えてギルドへと向かった。


 昨日倒した猪の魔物もギルドに運び込まれていて、それの解体作業もそろそろ終わっている頃だろう。

 素材の売買やアイリの取り分などについてを、ギルド側と話さないといけないそうだ。


 俺は初めてのギルドということで胸を躍らせて、アイリの後を付いて行った。


 しかし、今の身体では場所を取るという事で、ギルドのそばにある機獣の待機所で留守番をすることになった。


 当然、蜘蛛の眷属をアイリの肩に乗せさせてもらっているので、それを使ってギルド内を覗くことはできる。



 シマノエのギルドは町の象徴とも言える、巨大な砲台の足元にあった。


 近くで見るとその巨砲は縦長のマンション程のサイズがあり、ざっと10階くらい高さがあるように思えた。


 町にある他の建物は2~3階ぐらいな事を考えても、群を抜いて高い建造物だ。


 ギルドはその巨砲の足元を支えるような3階建ての建物で、1階にある総合受付らしき場所があるロビーは天井が高く広々としていた。



 アイリはその受付の方へ歩を進め、1人の女性の前で立ち止まった。


「あら、アイリちゃん! 昨日は色々と大変だったみたいねぇ」

「おはようございますマーヤさん、大変って……魔物のことですか?」

「うふふ、それもあるけど昨日ギルマスがアイリちゃんを追いかけていったからねぇ。あの人に絡まれると大変ですもの」

「あはは……、大変というほどの事はなかったですけどね」

 アイリは苦笑いで応えた。

 本人に悪気はないのだろうが、あのギルマスがいると周りの人は委縮してしまうからな。


「そういえば昨日の魔物の解体が終わってるわよぉ。それにしてもすごいわねぇ! マッドイーターなんてアイリちゃんのランクで倒せるものじゃないんだから!」


 マーヤという受付の女性は笑顔でアイリのことを褒めてくれる。

 ここまでのやり取りで分かったが、この人はかなりアイリに対して好意的なようだ。

 優しいお姉さんといった感じで、俺も安心して見ていられる。


「じゃあ、話は通しておくから解体所の方へ行ってきてね」


 アイリは受付のお姉さんに手を振って別れ、解体所と呼ばれる場所に向かう。

 そこに居たのは小柄だが、筋肉質な男だった。

 その男はアイリと目が合うと、こちらを品定めする眼で話しかけてきた。


「お。嬢ちゃんがマッドイーターを倒した冒険者かい?」

「はい、そうです」

「へぇ。噂には聞いてたが、本当にまだ若い女の子が倒したのかい。すごい機獣を持ってるって話だが……?」

「ええと……。まぁそんな感じです」

「ああ、わるいな。冒険者に無用な詮索はご法度だな。取りあえずマッドイーターの解体は終わってる。素材の売買について話したいが、欲しい素材はあるか?」

「えーと。皮と肉を少しと、あとできたら魔核まかくが欲しいです」

「ふむ。そうだな……皮と肉の上質な部分をギルドと半々で分けて、魔核を嬢ちゃんに。残りは買い取りって事でどうだ? 皮もこれだけあれば、1人分の装備なんかは軽く賄えると思うぜ」

「はい。それでいいです」


 小柄のおっちゃんと取り分について話し合うアイリ。

 必要な素材を優先的に貰って、残りを換金してもらうらしい。

 まぁ良い所を貰えるし、こちらに次元収納があるって話が出来ない以上、たくさん貰いすぎても悪目立ちするので悪くないと思う。



「チッ。あんなガキがマッドイーターを倒すってどんな冗談だ……」

「機獣使いはいいよなぁ。弱っちくても機獣が手柄立ててくれるんだから」

「けっ。チビガキのくせによう、ジジイからもらった機獣で楽しやがって……」


 と、アイリがおっちゃんと話しているのを遠目から睨んで陰口を叩いている奴らがいた。

 耳を澄ませると、どうやらアイリがマッドイーターを倒したという話を知って、それが信じられないようだ。

 言い分を聞いてると単なる嫉妬ややっかみの類だ。


 どうやら機獣を使っている冒険者というのは全体から見るとかなり少数のようだ。

 アイリみたいに誰かから譲ってもらうか、信じられないほど高いお金を出して新しく購入するか、遺跡などから発見して修理するしかないらしい。


 アイリにはその男たちの声が聞こえていないようだから良かった。

 しかし、これはギルドで他の冒険者に絡まれるというテンプレなイベントが起こりそうな予兆を感じる。


 取りあえず、アイリに不満を持っていた3人の男の事は記憶の片隅に覚えておこう。



 その後、高い収入にほっこりした顔のアイリと合流してギルドから離れた。


「じゃあ次は、クチールのところへ行こうね」



◇◆◇



 俺たちが工房の扉をノックして中に入ると、そこには突っ伏して倒れている白いパーカー少女こと、クチールがいた。

 スヤスヤという寝息を立てながら、地面で寝ているようだ。

 どうやら昨日別れてから、夜通しクィーンの残骸に熱中していたらしい。


 部屋の中央にはバラバラになっているアラクネ型バグズ・クィーンの残骸があった。


 綺麗な女性の上半身は、昨日は空いていた大穴が何故か塞がれており、元の美しいというか淫靡な姿に戻っている。



「クチールー? 昨日言ってたお土産を持って来たんだけど。起きられそう?」


 優しく起こすアイリの声にクチールがもぞもぞと反応した。

「……ん。おきる」


 スピーカ替わりのマスクを付けていないので、囁くような可愛い声が聴こえてくる。

 絶対マスクを付けない方が良い。

 強くそう主張したい。


 そんな俺の想いは当然届くことなく、クチールはマスクを付けて起き上がった。


『このクィーンの機虫すごかったよ! アラクネ型については前に資料で見たことあったけど、その情報と魔導武装や構造が全然違ったから、多分特殊個体だね』

「あ。ジラさんもそんなこと言ってたよ」


 鼻息荒くクチールはクィーンの残骸に触れている。


『あんまりにも立派だったから、身体に空いてた大穴をこっちで勝手に塞いじゃった』

「みたいだねぇ。綺麗になってて驚いたよ」

『えへへ。でしょー! 勝手にやっちゃってごめんね』

「うん。大丈夫」 


「ハヤテ、じゃあ次元収納に仕舞ってる先代物資アーティファクトを出しちゃって」

「おう」


 とは言っても、このガレージ内だと半分くらい出すのがいいところだな。


 俺はそう思って、次元収納に仕舞われているお土産の半分ほどを工房の空いてる場所に出した。


『ひゃぁぁぁぁあ!!』


 ガラガラと音を立てて現れた大量に先代物資アーティファクトを前に、クチールが奇声をあげた。


『なにこれ、なにこれ、なにこれ!』

「く、クチール! 落ち着いて! ねっ!」


 テンションが降り切れて暴走しているクチールの両肩にアイリが手を置いて落ち着かせている。


 まぁ。こうなるよな。


『これ全部アタシのものっ!? アイリ! 結婚しよ!』

「……はいはーい。落ち着こうねぇ!」

 ——ビシッ!

『あうッ!』


 いい加減に面倒になったのか、アイリがクチールの頭にチョップをした。


『いたい……。何するのアイリ?』

「ちょっとは話が聞けるようになったみたいね? 取りあえず、全部アイリのものじゃないし、結婚もしないから」

『ええ~!』

「当たり前でしょ」


 やれやれと腕を組んでいるアイリの姿は少し珍しかった。

 こうして見ると姉と妹みたいな関係っていう話も分からなくない。


 どうやら先代物資アーティファクトが絡むとクチールはポンコツになるようだ。


「出来たらコアは俺が吸収したいんだ。無くなって困る物があったら予め言っておいてくれ」

『そういえば、コアを吸収すると強くなるの?』

「そうなの。わたしもハヤテが強くなるならそうしたいなって思ってるんだけど。そんなに貴重なものないよね?」

『いやいや、コアは全部貴重品だよ? 先代物資アーティファクトの研究も全然進んでないし』


 俺とアイリの言葉にクチールが困った顔をする。

 しかし、俺としても今後の生活に大きく関わるので譲りたくはないところだ。 


「そこをなんとか頼む」

『え~』

「少しは研究に回してもいいから。ね?」


 ブーたれているクチールの頭を、アイリが撫でながら説得している。


『はぁ、アイリのものだから仕方ない』



 その後、クチールが残しておいて欲しい物をざっとまとめて、それ以外の物を俺が吸収した。


「ジラ、どうだ?」


(——解析の結果、新しい能力はありませんでした。ASIを積んでいる機械がいなかったようです)


「そりゃ残念だな」


 スキルを得るには相手がスキルを持っていないとならないそうだ。

 そして、スキルを使えるのは魂がある機械。

 つまり人工超知能(ASI)を積んでいるものだけである。


 遺跡で手に入れた中ではアラクネ型のクィーンがそれに当たるが、それ以外には居なかったようだ。


 クィーンの眷属として操られていた機械が多かったみたいだし、仕方がないな。


 しかし、コアからマナマテリアルが大量に得ることができたので、まだ再現していないスキルに使えそうだ。



「ここはやっぱり、【擬態】かなぁ」


 今、再現していないスキルは、

 【魔力感知】、【擬態】、【魔導糸】である。

 

 【擬態】は能力の隠蔽と、姿を変える力があるそうだ。

 これがあれば、アイリのそばにもっと居ることができるだろう。

 俺としても不便を感じているので是非とも会得したい。



「よし。【擬態】の再現を頼む」

(——了解しました。【擬態】を再現します)


 ジラが【擬態】を再現して、スキル一覧で確認する。


◆————————————◆

 【スキル】

 ・天穿テンセン

 ・纏雷テンライ

 ・厳槌イカヅチ

 ・雷伝ライデン

 ・***[ロック]

 ・***[ロック]

 ・雷属性強化

 ・魔力供給

 ・分析再現

 ・次元収納

 ・眷属ネットワーク

→・擬態


 ・超回復

 ・アライメント調整

 ・ランナーズハイ

 ・セカンド ウィンド

◆————————————◆


 おお。あった。

 これで人間の姿に変身できる。

 しかし、パーツが足りないんだったか……


 とりあえずスキルの詳細を見てみよう。


◆————————————◆

【擬態】

 登録してある姿に擬態できる。登録枠:1

 擬態に伴って種別、性能、能力を隠蔽することができる。

◆————————————◆


 ふむ。

 つまり人の姿を登録すればいいのか……?

 パーツが必要って話だったけど、何のパーツが必要なんだろうか?


(——人型の機械のパーツが不足しています。クィーンのパーツを使えば人間の女性には擬態可能です)


 ああ。

 人の顔とか身体になるためのパーツが必要なのね。

 うーむ……。


「なあ、クチール。使っていない人型の機械って何か持ってないか?」

『人型の機械って自動人形オートマタでもいいの?』

「ん? 自動人形オートマタって?」

『そのまんま機械の人形だよ。ただ、魂を持った機械人形たちが自分たちの事を「機人キビト」って名乗り始めてから、機人キビト自動人形オートマタは区別され始めたね』

「へぇ」


 機獣や機虫と同じく、機械の人、機人もいるのか。

 自動人形と呼ばれるのが嫌だったのか分からないが、魂があるかないかというのは、機械にとっても大きな命題なんだろう。


 取りあえず、魂の無い人型の機械が自動人形オートマタと呼ばれるという事を覚えておけばいいか。



「その自動人形で大丈夫だ。使われてないものはあるか?」

『ん。あるよ』



 そう言って、ガレージの入り口とは反対にあった扉の方へ案内するクチールに付いていくと、そこは物置のように雑多に機械類が置かれる部屋だった。



 そして、部屋の奥に「その人形」は座っていた。


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