獅子のバロン
ようやく10話分まで来たので、これまでの誤字脱字を見つけられる限り修正しました。
その他にも読みづらい箇所を直してたら一日が吹っ飛んだという……。
毎日投稿への道のりは遠い。
前の世界でいう暴走族のように、騒音を鳴らしながら土煙を巻き上げて、こちらに迫ってくる犬型の機獣たち。
眷属の機械蜘蛛を使って確認してみると、その上にはどうやら人間が乗っているようだった。
「人が乗っているみだいだな。えーと、数は8人だ」
4人のチームが2つといった感じで分かれており、片方のチームが好き勝手に暴走しているように見える。
そして、この集団のリーダーなのか1人だけ一回り大きい獅子のような機獣に乗った大男が、騒音を鳴らして暴走してるチームに注意を促していた。
俺が集団の特徴を伝えると、アイリは少し困惑した顔になった。
「街道付近で暴走してる犬型の機獣と、獅子型の機獣……? それ、もしかしたら街道の巡回警備隊かも」
え。
その名前からすると街道をゆく人を守る仕事の人たちか?
どちらかと言えば、他人から金品を巻き上げる側にしか見えないのだが。
「街道を北へずっと進むと大きな街があってね。その周辺を魔物とかから守ってるんだって。だから、ここら辺まで来るのは珍しいと思うけど……」
ふむ。
つまり大きな街の衛兵みたいな人たちなのか。
でもどう見ても荒くれ者の集まりなんだよなぁ……。
アイリの勘違いとかじゃなかろうか。
そんなことを思っていたら、もう俺たちから見えるところまでその集団は近づいてきていた。
◇◆◇
「頭ォ! 多分アイツがセンサーに反応があった奴ッスよ!」
暴走していた機獣の上から、唾を飛ばしながら叫ぶ細身の男。
その周りでニヤニヤ笑ってるのも、さっき騒がしく暴走していた者たちだろう。
そして、それに対して額に青筋を走らせ怒鳴り散らす大男こそ、この集団のリーダーのようだった。
「テメェ! 何度言えば分かんだッ! 仕事中に頭って呼ぶんじゃねェよ! つーか、いい加減に昔みたいな走り方すんのは止めやがれアホタレがッ!」
怒鳴るリーダーらしき大男の後ろにいた3人も渋い顔をして、ニヤニヤ笑っている男たちを睨んでいる。
どうやら酷い職場環境みたいだ……。
世界が違っても、こういう所が変わらないのは人の業なのだろうか。
そんな中、アイリがその集団に声をかけた。
「あの……、もしかして巡回警備隊の人ですか?」
刺激しないよう、おそるおそるといった感じで問いかけるアイリに、リーダーらしき大男が返事をする。
「ああ、そうだ。騒がしくてすまねぇな嬢ちゃん。こんなヤツらでも結構腕が立つもんでな、下品だが大目に見てやってくれや……」
バツの悪そうな顔でアイリに謝る大男。
2メートル近い身長のその男は、顔にいくつも古傷があった。
所々に黒色が交じった金髪はヤンキーみたいで、ピアスなどもたくさんつけていて、人を威嚇するような容姿だ。
しかし、言葉使いこそ荒かったが見た目に反して優しい声音で話しかけてきた。
正直、少し意外だったと言わざるを得ない。
アイリもちゃんと話が通じる人のようで安心したのか、幾分かほっとした顔になる。
「えと、大丈夫です。……ところで、この辺まで警備隊の人が来るのは珍しいですけど、何かあったんですか?」
「何かあったというか、街の上層部から依頼があってな。なんでもこの辺りで新しい遺跡が発見されたらしい。それの確認と調査ってやつだ」
ん? それ、めっちゃ心当たりがある話なんだが。
「あ。それってもしかして、海岸沿いにある遺跡……ですか?」
アイリも気付いて問いかける。すると大男は片眉を上げて、こちらを伺うような目で見て来た。
「ォん? 多分そうだが……もしかして発見者ってのは嬢ちゃんの事か?」
「はい、そうです」
アイリが頷くと、大男がニヤリと笑って近づいてきた。
「へぇ。もう中は調べてみたのか? どんな感じだった?」
「あ、はい。警備システムがまだ生きてて危ない所でした。でも今はもう機能が停止してます!」
迫ってくる大男を見上げるような形になりながら、アイリは慌てて答える。
「ほぅ。……こりゃ無駄足にはならずに済みそうじゃねーか」
スッと俺の方にも目線を向けて、大男はそう呟いた。
なんだろう、嫌な感じではないけども妙な迫力があるな。
さっきまではどこか事務的な雰囲気だったのに、今は獲物を前にした獣みたいな空気が滲み出ている。
襲われたりしないよな?
「貴重な情報提供ありがとな嬢ちゃん。俺らは、そろそろ行くとするわ。……よかったら嬢ちゃんの名前、聞かせてくれっか?」
そう言いながら、手を振って周りの男たちに出発の合図を出す大男。
名前を聞かれたが職務質問なんだろうか。
名乗っても大丈夫かなこれ……
「あ、アイリ・ラストです!」
そんな俺の心配をよそに、素直な我らがマスターはあっさりと名乗ってしまう。
「アイリか。俺はバロンってんだ。またどっかで会ったらよろしくな」
そう言ってそのまま獅子の機獣を翻し、去っていくバロンたち。
しかし、バロンというと前の世界では「男爵」って意味だった気が……。
もしかして貴族の人だったんだろうか?
いや、貴族より義賊とかの方がよっぽど似合う男だったけども……。
「はぁー……」
突如として現れた荒っぽい集団がようやく去った事で、緊張の糸が切れたらしいアイリが気の抜けたような声を上げた。
「変な奴らだったな。お疲れ、アイリ」
貴重な機獣らしい俺が話に加わるとややこしい事になるかも知れないと、ジラからも進言があったので見ているだけだったが、せめてもとアイリを労った。
「うん。途中からちょっと怖かったかも」
あはは、と微笑みながら言うアイリに申し訳ない気持ちになる。
こういう所でもアイリの力になれたらいいな。
何か方法を考えておこう。
——しかし、それとは別に俺はあることを心配していた。
「あの遺跡にあった目ぼしい物って、俺が全部持って来ちゃってるけど大丈夫だろうか……」
そうなのだ。
さっきの大男がアイリを見ても、俺以外に大して収穫があったように見えなかっただろう。
しかし、こちとら異次元に収納スペースを持つ身である。ジラさん指導の下、価値があるものは全て俺の【次元収納】の中だ。
しかもアイリが寝ている夜中の間にやったことだったので、実はまだアイリには話していなかった。
……怒るかな、あの大男?
アイリと大男が会話している間、ジラさんは機械蜘蛛たちで暴走集団をこっそり包囲してました。
もし変な事してたら、ヤバいことになってたと思う。




