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異世界冒険者の遭難事情

初めての小説、初めての投稿となります。

設定の甘さ、表現力が足りない部分などがありますがどうぞお手柔らかによろしくお願いします。


 ——透き通る空、彼方に見える水平線。


 空を見上げると、白い翼を広げた鳥が飛んでいた。

 海風を受けて気持ちよさそうに滑空している。


 わたしは、そんな景色をただ眺めていた。

 心はだんだんと凪のように静まってきて心地が良い。


 目を閉じて、ひとつ深呼吸をする。


 さて、落ち着いたな。

 これからどうするか考えなくては。


 まずは、もう一度状況を確認しよう。


 座ったまま、そっと左手を伸ばす。

 その先には縦横1メートル程の機械が鎮座していた。

 わたしの相棒で、犬の形をした機械の「機獣」である。

 操作パネルにある電源ボタンを押す。


「——起動しました。魔力源が不足しています、補給してください。システムエラー、エンジニアによるメンテナンスが必要です」


 先ほど聞いたのと同じアナウンスがその場に響きわたり、私はそっと顔をうつむかせた。


 ……まぁ動力を落として放置しても魔力が回復したりするわけないよね。うん。分かってたよ!


 ちょっと現実逃避してただけなの。


「つまりアレだ。遭難したって事だね……」




 ——わたしの名前はアイリ・ラスト。15歳の冒険者。


 趣味は機械集めに遺跡探検。


 現在、町から遠く離れた地にて孤立無援の状態です——



◇◆◇



 ——そもそもの失敗は、ちょっと調子に乗っていた事だ。


 先日、海沿いを散策していたら発見した遺跡。

 そこは一見すると苔がびっしりと生えた石造りの建物だったが、その奥には先代文明の施設が隠れていた。


 おそるおそる内部を調べてみると、そこには先代物資アーティファクトがいくつも残っていた。


 「先代物資アーティファクト」とは、魔法と科学技術が全盛期だった時代の人たちが作ったものだ。


 今のわたし達では考えられないくらい、遥かに進んだ技術が盛りだくさんなのが先代物資アーティファクトである。


 そんな物を発見したのだから、もうテンションは最高潮だった。


 1回目の探検で持ち帰った先代物資アーティファクトを専属エンジニアに見せたら、口が閉じられない程に驚いていたし。

 徹夜でそれをわたしの機獣に組み込んでくれた。


 風属性を持ったそのパーツの試運転も兼ねて、再び遺跡に向かったのだが、この新パーツが高性能で姿勢制御が大幅に改善されていた。

 おかげで、道中は快適でテンションが上がったまま警戒心が薄れていたのだ。


 ……いや。1度探検して無事だったから大丈夫だと楽観視していたんだと思う。



 そこは荒廃してても最高の技術力を持った先代の遺跡。

 その警備システムは長い年月が経ったにも関わらず、まだ生きていた。


 わたしが正面口に無警戒で機獣を乗り付けた直後、

 大量の警備機械……それも人間を見境なく襲う機械、通称『バグズ』となった機械の虫たちと遭遇してしまった。


 慌てて逃げだしたのだが、その際に機獣の魔力源タンクをやられてしまったらしい。


 こんな時に限ってなんで魔力結界は仕事しないのよ……。


 通常であれば、警備用の機械の虫(機虫)の攻撃なら、機獣に搭載されている魔力の結界で防げたはずだ。


 おそらくアナウンスの「システムエラー」というのが結界系統の問題を指しているんだろう。

 おかげでこの場で身動きが取れなくなってしまった。




「うあ゛ー、どうしよっかなー」


 突然の面倒事を前に、乙女らしからぬ気怠げな声を上げてしまう。


 実際かなり面倒な事態だ。


 私が住んでいる町はここからかなり距離がある。


 いつも機獣に乗って長距離を移動していたので、今から徒歩で帰ると日が暮れてしまう。

 ここから町までの道中では魔物の数は少ないが、それでも機獣なしで少女1人が夜を過ごすのはかなり危険だ。


 ではここで誰か助けが来るのを待つというのはどうか?


 それも良い選択ではないだろう。

 わたしが見つけた遺跡は恐らくまだ未探査の遺跡だ。街道からは外れているし、人が訪れる可能性も低い。


 そうなると残った手段はここで機獣を修理して、魔力源を手に入れるしかない。


「戻れっていうの…? あのバグズの群れの中に……」


 遠くに見える先代遺跡。海に面した崖に埋もれるようにあったその中には、まだ見ぬ物資が大量にあった。

 その中には修理に使える部品もあるかもしれない。


 幸いな事に傷ついたタンクの修理くらいならエンジニアから教わったことがある。

 となれば、日が暮れるまでに魔力源と部品さえ手に入れれば町に帰ることができるのだ。



「武装は剣と、スタンシューター。残弾は……17かぁ」


 わたしの武装はこの2つ。


 刃渡り50センチ程の片手剣。

 携帯しやすく、女のわたしでも扱いやすいものだ。


 あとはスタンシューターという銃。

 魔術加工がされた針状の弾を飛ばし、対人戦では相手を1発で気絶させる。

 機械相手でも急所に当たれば1発で撃破を狙えるだろう。


「んー…消音に、熱源探知カット、魔力探知カットで…。もって2時間ってとこか」


 次に自分のスキルの調子を確認した。

 魔力は、ほぼ満タンで使用可能なのは2時間だ。


 探検で1時間、回収で1時間と考えたらやれないこともない。

 バグズを何体か破壊するだけでも、少量の魔力源となる「マナマテリアル」が手に入るだろうし。


 最悪、少し補給してここで野営だ。


「ま、なんとかなるって思わないとやってらんないかぁー!」


 半ばヤケになって叫ぶ。開き直りって大事よね!


 そうと決まればさっそく行動だと、目立つ正面を避けつつ遺跡へと向かうのだった。



◇◆◇



「正面口はやっぱりもうダメっぽいなぁ……」


 遺跡を囲むようにあった岩場から遠視ゴーグルで観察してみたが、さすがに正面突破とはいかないらしい。


 バグズたちに見つかってから警備レベルが上がったようだ。

 完全にシステムが死んでるものと思っていたが、施設のエネルギー低下に伴って休止状態だったのだろう。

 内部に先代物資アーティファクトが残っていたのも冒険者たちを寄せ付けなかったからかもしれない。


 また休止状態になってくれないかなぁ。

 ……わたしの排除を確認してないからダメっぽいか。


「うーん」


 これは思ったより危険かも?


 でも…

「コケツに入らずんばコジを得ず…だっけ」

 冒険者が好むことわざの1つらしいが……ようはハイリスク・ハイリターンってことだよね!


 ふん!と気合いを入れ直し覚悟を決めて、どこか内部に潜入しやすい場所はないか探し始める。



◇◆◇



「……お?」


 探し始めて数十分後、発見したのは蜘蛛型のバグス2体が警備してるの小さな通行口だ。


 遠視ゴーグルで観察してみると、この2体は標準的な小型機虫でわたしの膝上くらいの大きさだった。

 バグズになった機械特有の赤黒い光の筋が、胴体と目元周辺で光っている。


 そしてどうも整備が不十分らしく、胴体と脚の関節部や頭にあるセンサー部分などがいくつか故障しているように見える。

 かなりぎこちない動きをしており、あれでは探知系や戦闘系の機能が正常に作動するか怪しいもんだ。


「あれはチャンスだよねぇ……」


 思わずニヤリと頬が緩む。


 装備の確認と、スキルの準備をして深呼吸。


 ——よし、行こう!


「≪消音、探知カット≫」


 つぶやいた言葉に呼応してスキルが発動する。

 ≪消音≫は軽い駆け足でも音が抑えられ、≪探知カット≫は保有してる探知カット系のスキルを任意で発動するものだ。

 今わたしは熱源と魔力の2つを指定した。

 これで物理系、魔術系のセンサーから探知されにくくなる。


 スキルの発動を確認してから通行口に走りだす。

さすがにまっすぐ進むのはマズイので少し迂回しながらだが、警備してる2体がこちらに気付いた様子はない。


 わたしの攻撃範囲にバグスの片方が入った瞬間、右腰の剣を引き抜いた。

 狙うは胴体中央にあるコア(マナマテリアル)だ。脚部の根本から斜め上に向かって抉るように突きこむ。


 剣を抜いて切りかかった時点で消音スキルの効果が乱れたのでバレる可能性があったが、相手は全く反応できず、吸い込まれるように剣が突き刺さりそのまま機能を停止させる。

 しかし、相方がやられた騒音にもう片方のバグスがこちらに頭部の赤いセンサーを向けてきた。


 それに合わせて左手で抜き放ったスタンシューターでそいつの頭部のセンサーを撃ち抜く。

 バグスの表面にあった結界ごと貫いた弾丸がそのまま相手の内部に電流を流し、もう1体の機能も無事に停止させた。


「ふぅ」


 取りあえず2体分の魔力源ゲットだ。


 警報などは鳴っていないが、この2体が停止したことに気付いてこちらに増援がくるかもしれない。

 こいつらからは機獣用のタンクに使える物はないし、早い所マナマテリアルだけ取り出して先に進もう。


 スタンシューターの弾丸にも限りはある、大量のバグズを相手にできる程わたしも強いわけじゃない。

 それにこの規模の遺跡なら小型バグズを統括する大型のバグズ・キング、またはクィーンがいるかもしれない。

 そのレベルの相手に遭遇なんかしたら、さすがにわたしの人生もそこまでだろう。


 通行口から顔だけ覗き込む。

 取りあえず近くに他のバグズはいなかったみたいでラッキーだ。

 スキルはあれからずっと使いっぱなしなので、少しずつわたしの魔力が減っていく。

 しかし、これがないと危険度が非常に高くなるので切るわけにもいかない。


 ——このまま潜入だ。




 そこから、周囲から孤立している小型のバグズを見つけては狩り、マナマテリアルを回収して進んでいる。


 小型バグズのマナマテリアルは質が悪いものばかりで、町までの魔力源としてはまだ全然たりないだろう。


 蜘蛛型バグズが徘徊しているが、スキル使用時間にはまだ余裕があるし、もう少し内部構造を把握したい。

 バックにも空きがあるので、できれば1つ大物を持ち帰れたら最高だ。

 しかし、今日は痛い目を見たばかりである。

 あまり奥へ進まない方がいいのではないか、と自分を戒める気持ちも湧いてきた。


 この「踏み込み過ぎず、ビビり過ぎない」境界線を見極めるのが冒険者をやっていて一番難しいと思う。


 でもわたしの冒険者のカンが言ってるんだよね。

 この先に「何か」あるって。


 そうなると持ち帰れなくても、せめてこの目で何があるかを確認したい。


「アイツらの巡回範囲も分かってきたし、もう少し踏み込んでみよ」


 じっくり観察して、バグズたちの巡回ルートとその穴を見つけ、隙間を縫うように進んでいく。


 そしてわたしは、いかにも「大事なものが仕舞ってあります」という雰囲気の重厚な扉の前に辿り着いた。



◇◆◇



 慎重にロックを解除……することもなく、重厚な扉は手を触れると機械音と共にゆっくり開いた。


「……?」

 不審に思いながらも周囲を警戒しながら部屋の中に滑り込む。

 その部屋は元は倉庫だったのかかなり広い空間があり、部屋の隅にはコンテナがいくつか置かれていた。


 そしてそこにあったのは予想通り、というよりも予想以上のものだった。


 中央で部屋の主のように鎮座していたのは、今まで見た事ないタイプの大型な機械。


「……馬型の機獣?」


 わたしの身体より一回りほど大きいそれは、馬の形をしていた。


 1番に目を引くのは頭にある1本の立派な角だ。

 強力な力を内包しているのか、すごく存在感がある。


 外装は夜闇のような深い紺色で、今まで放置されていたとは思えない程に美しくて光沢があった。

 どんな物質で出来ているのか分からず、よく目を凝らすとうっすら光を纏っているように見える。

 

 背中の部分からは大量の太いコードが伸びており、そばに置いてあるいくつかの機械と繋がっているようだ。


 一見するだけでも今まで見た機獣の中でもダントツで構造が複雑であり、性能も良さそうだ。



「この見た目はユニコーン? おぉ…本当にお宝だよ……」


 ユニコーンやペガサスなどの獣を聖獣として崇める国もある。それを模した機獣となるとかなり価値があるものだろう。

 想像を超えるお宝を前にして、嬉しさやら感動が振り切れて言葉にならない。


「動力とか機能は生きてるのかな? 『バグズ』ではないみたいだけど……」


 『バグズ』となった機獣や機虫は総じて魔力が禍々しく変化し、コアや目の周辺が赤黒い光の筋があるので一目で分かる。

 しかし、この機獣にはその傾向は見られなかった。

 おそるおそる馬に近づき、そっと身体に触れてみる。


「んん? 微かに駆動音がしてる」


 集中しないと分からない程の駆動音、そして触れた手からは小さな振動を感じた。


「となると操作パネルは…」


 馬の体にそってくるりと回ってみると右後ろ脚の部分に操作できそうなパネルを発見した。


「お。これかな?」


 そう思って触れてみた瞬間、指先に静電気のようにビリッと痛みが走り、思わず手を離してしまう。


 と同時にけたたましく警報が鳴り始めた。


『機密区画に異常発生。機密区画に異常発生。当施設が崩壊する可能性あり。一般の職員はただちに避難してください。繰り返します——』


 機械的なアナウンスが繰り返され、わたしは激しく動揺してしまう。


 施設の崩壊って、どういうこと?


 ……っていうか、やっぱりこれってわたしのせい?



主人公がちゃんと登場するのは2話後くらいです。

あと解説されてない単語などは後ほど解説シーンが入る予定です。

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