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猫の恩返し【5】
時は少し遡り、とあるマンションの一室
榊原義雄は怯えていた。
ここに隠れてもう1週間が経つ
教団の連中は俺の居場所を突き止めただろうか…
榊原は懐から不気味な本を取り出す。
教団の最高機密か何か知らないがこの本は俺のものだ
絶対に渡してなるものか
榊原は本をうっとりと見つめる。
ただあの教団はマジでヤバい
居場所を突き止められれば容赦なく俺は始末される
団長はこの本にそこまで頓着していないようだったが他が黙っていない
榊原は頭を掻き毟る。
ここ最近不安でろくに睡眠を取れていないため目の下にはクマが出来ていた。
彼はおもむろに部屋の片隅のケースを目の前に持ってくる。
ケースの中には薬で眠らせた猫が入っていた。
俺はやれる、俺は強い、大丈夫、大丈夫
榊原は大きく深呼吸をしてニヤリと笑う。
彼の手には鋭利な刃物が握られていた。