ヴァイスとサイコロ
「・・・なんでヴァイス君いるの?」
俺はテイマーギルドの騒動を終えて
最初からの疑問に立ち向かう。
ずっとあえて触れなかった部分だ。
クリプス辺境伯の家から出て行く時に
フィルとオブさんの別れを見て
仲良くなったことに嬉しさを覚えた。
だからルティとの別れについても
何かあると思っていたが
クルス隊長も何も言わなかった。
宿でも人数分の宿代を払ってる。
ヴァイス君の分もなぜか・・・
アウレさんとルーラさんも
触れなかった。貴族だからだろうか?
テイマーギルドの俺の怒りの中でも
ギルド内にいたらしい。
俺の朝練での殺気に慣れたのか
普通に動いて周りの看病していたとか。
外の貴族への対応もギルド内が怒気で
営業麻痺していたので代わりに動いていた。
将来が恐ろしく思える子供だ。
さてその子の事を冒険者ギルドに行く前に
調べなくちゃいけない。
だってこの流れなら一緒に冒険者をする
流れへと自然となるからだ。
後、何故今なのか?
今までヴァイスと思えない姿をしていたからだ。
貴族だと今でも思っているが
ずっと皮の鎧をして剣を持っている人間の
頭にルティが乗っており、
顔をルティの2つの尻尾に挟まれながら
動いてたからだ。
端から見ても狐を乗せた少年剣士?と
聞きたくなるぐらいに
たくましい揉み上げをつけてる様に
見えてしまい俺がスルーしてたからだ。
今はテイマーギルドの騒動が終わり
ルティを体の前に抱いてる。
今までと違う姿なので聞けるが
俺の質問を聞こえてないのか
ルティと戯れている。
もう一度質問を行おう…
「ヴァイス君?」
「は、はい!先生!」
今度は聞こえたようで慌てて答える。
「疑問なんだが何故いる?」
「一緒に冒険者となるからです!」
なんとなく予想していた答えが出てきた。
「・・・えっと…スーサ殿知ってるの?」
「あれ?聞いてないですか?
話しておくと言ってたのですが…
今10歳ですが領地を継承するまでは
時間があるので自由にしなさいと言われました!」
「聞いてないぞ?そんな事…」
「そうですか・・・忘れてたのでしょうね!
それでですね!継承するまで先生と
行動した方が良いと思い
お父様とお母様に伝えたら喜ばれました!
トキ君なら安心して任せられると!」
「本人の了承とれよ・・・過保護の馬鹿親ども!
連れて行くとはまだ決めてないんだけど…」
「え!?駄目ですか!?」
ヴァイスは断られるとは思わず驚いている。
フィルとルティとクルス隊長も驚いている。
・・・知ってたのか?お前ら・・・
「まだ決めてだけだ!駄目とは言ってない!
とりあえず継承までは自由と言ってたが
いつまでなんだ?その継承は?」
「お父様が引退するまでです!」
「・・・当分先じゃないか…
あの人30年後も領地を経営してるぞ?
悪い事が起きない限り切り抜けて
経営してるイメージしかないぞ…」
「僕も同じイメージですね!
流石先生!同じ事を考えるなんて!」
「ヴァイス君それ誉めてるのか?
まあ、なるようになるか!
最悪あそこで修行すれば確実に
クルス隊長を越えた強さを持てるし…」
「そんな場所あるんですか?先生!」
「ああ!あるぞ!俺達はそこで生活してたし
あ!これは内緒だった・・・」
「主殿・・・」「キュゥゥゥン・・・」
ついスーサイドの事話してしまった。
フィルとルティに呆れられてしまった。
「まあ、おいおいな!とりあえず
一緒に行動するのを認めてやるが
冒険者は死が隣にある生活だぞ?
貴族がやるような生活じゃないと思うが・・・」
「先生!実は前列あります!貴族で冒険者の人が!
冒険者から成り上がり貴族になったのではなく
貴族のまま冒険者になった人が!
僕の祖父ヴァルカ=クリプスです!
ランクは現在Aランクで後少しでSになる人です!」
「おい!今何て言った?祖父が冒険者?
しかも後少しでSランク?何歳だその人?」
「確か54歳だったと思います…
僕も最後にあったのが5歳の頃なので…
経営がめんどくさいとお父様に投げて
旅に出ました!王国内にまだいると思いますよ!」
「凄いな!ヴァイス君の祖父…
めんどくさいで済ませるなんて・・・
正直、破天荒な性格してそうで会いたくないな…」
まさか祖父がめんどくさいで貴族辞めて
いまだにAランクの冒険者とはそっちのほうが
物語として成り立つんじゃないか?
『めんどくさいので貴族辞めて冒険者生活。
アラフィフ祖父、Aランクの冒険憚』
・・・正直見てぇ!面白そうなんだけど…
設定も物語の名前である程度分かるし
どんな冒険するのか?孫との出会い、
気まずい息子との再開、ランクの壁、
過去話、若い頃の出会いと別れ。
曾孫の誕生、若者への教育。
色々考えると本にしたら売れそうなネタだ。
ライトノベルで書ける。いや食える!
くそ!何故俺は異世界にいるんだ!
冒険者よりもそっちで売れるぞ!
・・・坂口先生…あいつらに正座耐久レースを
お願いします‼健康マットの上で重石を乗せて
最低でも3時間は絶対に・・・
「先生?」
ヴァイスの声に我を戻す。
「ああ!すまん!考えてた!
これから一緒に行動するなら
ヴァイス君は長いから呼び捨てするけど
大丈夫か?抵抗ないか?」
「先生大丈夫です!逆に嬉しいです!
隔たりがある感じがしてたので!」
「難しい言葉知ってるな…隔たりって…
ならヴァイス!今から一緒に登録するか!
冒険者ギルドへ!フィルとルティと共に!」
「はい!先生!これからお願いします!」
俺はヴァイスと一緒に冒険者ギルドへ向かった。
後でスーサ殿に説教するのを忘れずに。
だが隣に居るクルス隊長の事は忘れていた。
さて冒険者ギルドの前についたが皆に伝えとく。
「さて…今からギルドに入って登録するが
入る前に覚えていて欲しい事がある!」
「何ですか?先生?」
「それはな・・・「おいおい坊主ども!
お前らが来るところじゃねえぞ!
さっさと帰ってねんねしな!
今ならママと寝れるぞ!ギャハハハ!」
・・・言う前に来たわ向こうから…
ギルドの外で素行の悪い冒険者達が
定石、いやテンプレ通り現れる。
「先生?もしかして・・・」
「流石ヴァイス!賢いな!思っている通りだ!
だから言おうとしたんだがな…」
「おいおい!ガキがガキに先生と呼ばしてるぞ!
先生ごっこしたけりゃ他所でしな!」
「言ってやるなよ!ガガバ!あれは
先生と呼ばして喜んでんだからよ!
なあ?せ・ん・せ・い!!!キャハハハ!」
「せんせ~い!どうすれば貧弱な体で
冒険者にな~れま~すか~?」
「ギャハハハ!無理だ!ウホア!
答えれない質問してやるなよ!」
「ケーボ!言ってやるな!先生だから
答えられるさ!なあ?先生よお!」
「ガーバ!ケーボ!カガバ!ウホア!行くぞ!
報酬もらってさっさと酒を飲むぞ!」
「ハイハイ!ズークリーダー様!
疲れたから行きますかね!ギャハハハハ!」
冒険者達がギルドの中に入っていく。
「先生?これはあれですね!
お父様が言っていた類いの人達ですね?」
「何を言ったか知らないが
その通りだ…避けては通れない屑どもだ!」
「あんなのが先生や祖父と同じなんて
信じられないです!」
「まだ俺は冒険者じゃないけどな!
予想として…あれ最低ランクってなんだっけ?」
「トキ君、冒険者のランクはGから上がって
最高SSSですよ!ちなみに魔物や迷宮の
危険度ランクはエクサクロスで最高SSS!
差界だとレベルが上がりXXXです!
SSSの次がX、XX、XXXと成ります!」
クルス隊長から冒険者と魔物、迷宮のランクを
教えてもらった。
「そうなんですか…んじゃあいつら最高でE、
最低でもFだろうな…」
「なんでGじゃないんですか?」
「理由は想像つくがクルス隊長!
教えて上げてくれないか?」
「私ですか!良いですけど…冒険者のGランクは
外に出れない一般人なんです!
この地域は魔物や動物の群れなどがあり
領域や迷宮が多数あります!
なのである程度、力や技術のある人は
外に出れるレベルで最低のFランクとなります!
Gランクは清掃や整理などの低報酬で
小遣い稼ぎをしている人達が多いです!」
「つまり外に出れる=EかFとなる!
ランクを上げるには力や技術だけではなく
名声や礼儀を持たないと上がらない!
あいつらは武器を持っていた!
武器は清掃とかで使わないだろ?だから…」
「最低F、最高でEなんですね!先生!
礼儀のれの字も知らない人達がでしたしね!」
「そういう事だ!勉強になったなヴァイス!
しかし何気に毒舌なんだなヴァイスは…」
「先生?毒舌とは?」「知らなくて良いぞ!」
俺はヴァイスに説明をする。
クルス隊長に言わせたのはヴァイスが
一緒にくる事を言わなかった腹いせでもある。
後、絡まれてるのに何もしなかったから。
「さて…予習と復習を終えたところで
登録に向かうか!」
「先生?さっきの人達がまた来たらどうしますか?」
「そんときは流れに任せるだ!
偶然偉い人が現れて静かになるかも知れないし
黙らせるかもしれない!最悪叩きのめすだな!」
「そんな偶然あるんですか?
後、先生のほうが実力的に強いですよね?」
「わからんぞ?人の運なんて簡単に動くからな!
これを見てみろ!」
俺はストレージから六面体の箱を出す。
「先生?これはなんですか?」
「私も知らないですね!」
「あぁ!そうか!知らないのか!
これはサイコロだ!
それぞれに数の違う点がついてるだろ?
この点で数字の1~6までついている!
試し振ってみよう!」
俺はしゃがんでサイコロを投げる。
出た目は5個の点がある面=5が出た。
「これは上を向いてる面で遊ぶものだ!
今回は点が5個だから数字の5が出た!
振るときの角度や投げ方投げた場所によって
数字が変わる。1だったり6だったりな!
遊びには運がつきものだと思っている!
遊びに楽しさと共に知識も必要だが
最後に残れるかや勝てるかの運が必要だ!
試しにヴァイス振ってみよう!
振るとき近くにな!」
俺はヴァイスにサイコロを拾って渡す。
ヴァイスは言われた通りに投げる・・・
が緊張したのか落としてしまう。
出た目は点が6個ある=6が出た。
「ほう!6が出たか!これは良さそうだな!
遊び方で小さい数を出したら勝ちだったり
大きい数を出したら勝ちとかルールが変化するが
今回は大きい目を出すと勝ちのルールだ!
今のところヴァイスが1位だ!
ではクルス隊長振ってみよう!」
俺はサイコロを拾いクルス隊長に渡す。
クルス隊長も慎重に投げる。
出た目は点が2個ある=2が出た!
「あぁ残念!出たのが2!
小さい数のルールなら1位だったが
今回はルールに負けてしまった!
つまり今回の勝負はヴァイスの勝ちだ!
おめでとう!!」俺は拍手する。
「ありがとうございます!先生!
ですがこれは何の意味が?」
「あぁ!忘れていた!これはな誰が投げても
面が変わりルールで勝負が変わる!
変化する世界がこのサイコロに入ってる!
まぁ比喩!例えばの話だけどな!
今回はヴァイスは6を出した!
もう一度振ってみな!」
俺は再度拾いヴァイスへサイコロを渡す。
ヴァイスはさっきと同じように落とした。
出た目は点が4個=4が出た。
ヴァイスはさっきと同じ落とし方したのに
変化したのに驚いた。
「驚いたか!ヴァイス?これが運だ!
見えない力で違う動きを見せる!
豪運を持つ人が投げると10回すべて
5を出したりする!その確率は
本来なら6個の面の内5の面だけが当たりなら
5の面以外は外れとなり1/6が当たりの
確率となる!△/◯の◯は全体の数!
サイコロなら6の面なので△/6になる!
△は当たり目の数!1つの面が当たりなら
1/6になり5つの面が当たりなら5/6になる!
まぁ!難しい思うからおいおいな!
でだ!話を戻して10回投げて同じ目のでる
確率は1/6で有りながら1/100776696である!
簡単に言えば運を持たないと死ぬ!
どんなに強くても最後に運がないとな!」
俺は確率と持論の運についても教える。
なんとなく納得したのかヴァイスは頷く!
それを機に俺達はギルドへ入る…
ギルド中では数組の冒険者が机に座り
朝から酒を飲み騒ぐ!
その中を静かに歩いて受付に着く・・・