指紋
トキ達は殺害現場の部屋の前で
靴を脱いでから手袋を着けて入っていく。
「戸川さん?前もそうでしたが
何故手袋をするんですか?」
「それはね・・・指紋を残さない為だよ?」
「指紋をですか?」
ヴァイスは分からないと首を傾げて
ルティもシルも同様に傾げる。
「指紋って言うのはね・・・」
「指紋とは指先の皮膚にある汗腺の開口部が
隆起した線により出来る紋様。
またはこの隆線の形作る模様が
物体の表面に付着した跡の事だ。
指紋の形状は人によって全て異なり、
終生不変という特徴を持つと言われている。
掌紋や足紋(足の裏の紋様)も
同様の特性を持っている。
・・・と図鑑に載ってるな!」
トキが戸川のセリフを横取りして
図鑑を見ながら話す。
「ちょ、俺の説明だろ、ここは!?」
「ん?ここで駄弁っても先に進まないだろ?
なら代わりに俺が話しても問題ないだろ?
サブキャラがメインキャラ気取るんじゃない!」
「セリフ取られて怒られるってなんなんだよ…
サブキャラだって出番あって良いじゃんか…」
戸川がぶつくさ言いながら部屋の中を確認していく。
「先生?良くわからないんですけど?」
「今から実証してやるから見てろ!」
トキは降ろされた死体のロープを掴んで
ストレージから敷物と粉末を入れた瓶を取り出す
敷物の上にロープを置いて
「これはある粉末なんだがこれをロープに少量まぶす。
そして揺らして粉を落とすと・・・」
ロープに幾つか小さな渦巻きが重なった紋様が現れる。
「これはロープを使った時に使用した人の指の表皮に
付着していた油分がロープに付着したのを
粉末が吸着し紋様を表した物だ。
これを見ると幾つも指紋が着いてるが
殆どが同じ紋様のようだな?」
「え?」
「分からんか・・・
簡単に言えばこの人を吊るしたのは
複数ではなく1人で犯行を起こしたって事だ!」
「粉を振りかけただけで分かるのですか!?」
ヴァイスへの説明中に警備隊のクルス隊長が
驚いて話に入ってくる。
「ああ、これを見る限りではな?
人の指には汗が付着していて
汗に油分が混ざっているんだが
これは新しいものほど鮮明に出てくる。
これをこの特殊な粘着シートに着けると・・・
指紋が取れた!これを重ねるように
同じ粘着シートを貼り付けて保存が出来ると…」
「へぇ…これが犯人の指紋?ですか・・・
もしかして戸川君が手袋を着けろと言ったのは…」
「指紋を消させない為だな!
後、指紋を残させない為にさせたんだろう。
もし自分の指紋がロープに付着していて
犯人と疑われたら嫌だろ?」
「ほぉぅ・・・こんな検分があるとは…
世界とは広いものですねぇ・・・」
クルスが取った指紋を見て感嘆の声を上げる。
「さて、最初の関門はクリアしたから
後は何か証拠でも残ってたら良いが・・・
あ、戸川とクルスは関係者の指紋を取ってきてくれ!
紙とインクを渡すから全部の指紋頼むな!」
「分かったよ…しかし粘着シートは
いつ頃作ってたんだ?」
「スーサイドで暮らしていた頃にちょっとな!」
トキは紙とインクをストレージから取り出して
戸川に渡してクルス隊長と共に戸川が
部屋から離れていく。
トキは扉から出ていくのを確認して
部屋の中を見渡す。
部屋は応接間の様になっており、
部屋の外で窓に繋がれた警備隊の遺体と
部屋の梁に物干しされてるように
吊るされていた痕を見つける。
床を見ると遺体が並んでおり
しゃがんで見てるとソファーの下に
手紙が落ちてるのを見つける。
トキは警備隊に聞いて手紙の中を確認する事にした。
「・・・この度の事件は私達が行いました。
旦那様に言われてある場所を得るために
その場所を保有する『先生』と名前の人物との
交渉を行いましたが決裂してしまい
旦那様から『先生』の信頼を貶める様にと
仰せられて複数の事件を起こして来ましたが
これ以上は耐えきれなくなり
すべての罪を私達の命で償う事にしました・・・」
トキは読み上げて手紙を折り直し
机の上に置き腕を組んで険しい顔になる。
「これよ?罪を認めて自殺した手紙か?」
「え?違うんですか?
私達の命で償いますって書いてありますよ?」
ヴァイスがトキが折り畳んだ手紙を見て答える。
「それは後半だろ?問題は前半だ!
『先生』って誰だ?
この手紙は更に誰かを貶める手紙になってるぞ?
俺はこのドルア男爵とやらの
関係者と会った事ねえし!」
「・・・そう言えばそうですね?」
ヴァイスは再び手紙を見直して
手紙の内容に疑問を感じた。
「一度容疑を晴らしといて
再び容疑を掛けられるなんて馬鹿げてる!
そうなる前に証拠でも探すぞ!」
トキは小さな物でも探すように集中して
現場の証拠探しを始める。
机、ソファーの下、梁の上、ゴミ箱など
漁れる所は全て漁り遺体の服のポケットに
膨らみを見つける。
トキは最初はハンカチと思って探さなかったが
ハンカチにしては・・・
「指輪?それと・・・」
「先生何か見つかりましたか?」
「こいつのスーツのポケットからこれが
見つかったんだけどなんだと思う?」
「指輪と割り府ですかね?」
「やっぱりそう思うか?」
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ここで割り府についてウィッキー先生の授業です!
割り府とは?
文字やしるしを木片や竹片などに書き、
それを二つに割ったもの。
それらを別々に所有しておき、
のちに二つを合わせて真偽確認の証拠とした。
「割札」「割符」「切符」ともいう
以上、短い授業でした!
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トキが取り出した物は指輪と
カードサイズで端がギザギザに
加工されてる木板を見つける。
「割り府の左側みたいだな?
何か書かれてる。鳥の片方の羽?
それとFANT?ファンか?」
「これ重要な手掛かりになるんじゃないですか?」
「そうだな…」
トキは周りを見渡し誰も見てないのを良いことに
しれっと素知らぬ顔でストレージに入れた。
「先生!?なにを・・・」
ヴァイスが大声を出そうとしたのでトキが手で口を塞ぐ。
「良いか?これは裏に繋がる割り府だろう…
だからこれは後で指紋を採って
ガデルに探してもらう。
そうすれば分かるかも知れないからな?
だから今は黙っていてくれ!」
何か言いたそうな顔をしているヴァイスだが
理解して頷く。
「今回だけですからね?」
「分かってるよ!」
再び手掛かりになるものを探してると
クルス隊長達が戻ってきた。
無事に指紋を採取出来たらしい。
トキは採取した指紋を孤児院で調べると言って
ドルア男爵の別荘から出ていく。
クルス隊長はどんな事をするのか気になり
トキ達の後を追いかける。
そして指紋の鑑定をヴァイス達に任して
トキは約束を果たしに別の場所へ向かった。