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説教好きな冒険者~全てに怒れる召喚されし者~  作者: アールエス
新たな迷宮~冬の風物詩を添えて~
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ヴァイスの怒り

トキ達が洞窟の迷宮に入って8時間。

日も暮れ始めていた頃、べラムの街では

冒険者が今日1日稼いだお金を使って

冒険者ギルドの酒場で愉しく騒いでいた。


本来冬の時期には出現する魔物は限定され

狩猟する数も少なくなり

冒険者は最低ランクGの街の雪掻きや

通商の護衛等に出向いており

酒場に大勢集まるのも週に1回あるかないか。


だが今回は大雪の後。

山から降りてくる魔物や川から上がる魔物が

森を荒らして冬眠していた魔物を起こしてしまい

眠りを妨げられた森の魔物は怒りに暴れ

街道を通る通商や近くの街に襲い掛かる。


冒険者ギルドは未然に街への被害を軽減するために

早急に討伐依頼書を作成し冒険者達を募った。

それを知った冒険者達は魔物の被害を抑える為に

また、冬場での公私のストレスを発散する為に

受付へと行列が出来る程の人数が集まり、

討伐するために街の外へと進んでいく。


戻ってくると各自が狩猟内容を仲間に自慢しながら

冒険者ギルドの受付に依頼完了を受領して

換金出来る物を換金しそのお金で

疲れた体を癒す様に仲間と酒を飲み交わす。

それぞれが相手への健闘を称えあい、

明日からの英気を養うために

酒を浴びる様に飲んでいく。


そんな冒険者ギルドの一画。

冒険者ギルドのギルド長室には

1人の萎縮した雰囲気を覆う様に

鋭く突き刺す視線が複数存在していた。

中には怒り、呆れ、心配などの感情が

入り交じっており

その感情が視線へと移り

1人の人間を更に萎縮させている。


「・・・」

「ハリーさん?黙っていても何も出ないんですけど?」

「王子まで行かせるなんて何を考えてるんですか!」

「今回ばかりは俺も同情出来ないな?

俺達が気付かなかったらそのままにしてただろう?

それは気にいらないな!断じてな!」


黙ったままのハリーギルド長に対して

ヴァイス、リファイ、ガデルの順に

自分が考えている事を述べていく。


ハリーは自分達の仲間であり代表と呼べるトキに

内密に迷宮探索を行わしていた。

例え、特別依頼だったとしても

長引くような案件なら仲間へと連絡を

しなければいけないのが常識である。

だがハリーはヴァイス達に黙って

トキを迷宮に行かせていて、

トキは同行者にサミン王子を連れていっている。


冒険者だけなら問題はない。

だが一国の王子が迷宮に入っている。

もし仮に王子が迷宮で命を落としたとあれば

ハリーだけでなくべラムを統治している

クリプス辺境伯にまで責任が問われる。


最初はハリーも知らなかった。

ヴァイス達がギルド長室に突撃してきて

トキとサミンが居ないと報告してきた。

トキは迷宮に向かった事を知っていたが

こんなに時間が掛かる迷宮だとは思ってなかった。


そしてトキの迷宮探索にまさかサミン王子が

同行してるとは考えが付かずに

頭が真っ白になっていた。

そしてふと何故か迷宮と呟いてしまい、

ヴァイス達は一瞬で

雪山の迷宮にサミン王子をトキが連れていったと

考え抜いた。トキならやりかねない事を

何故、そこまで考えなかったハリーに

対して糾弾をしている。


「・・・私もヴァイス様達に言われて

知りました・・・んです…

まさか連れて行くとは・・・

本当に申し訳ありません!!」

ハリーは机の上にある書類を床にばらまいて

机の上で土下座を行う。


「私の見積もりが甘かったと認識してます…

まさか迷宮攻略にここまで時間が掛かるとは

夢にも思わず・・・

そして迷宮に入る前にサミン王子を帰らせると

ばかり思っていたので…

本当に申し訳ありません!」

ハリーは頭を上げて弁解し

机に頭突きして再度土下座を行った。


「先生からは連絡ついてないんですか?」

「未だに連絡はついておりません…

ですが迷宮に入ってることは

あるもの達から連絡は受けております」

「あるもの達とは?」

ヴァイスがハリーに尋問を始める。

子供のヴァイスだがこの時ばかりは

怒りで我を忘れかけていた。


「内密な事なので話すのは難しいのですが

シルの親戚と呼べるもの達から

我々の言葉を頭に響かして

届けられております…」


「シルの親戚?」

ガデルが腕を組みながら首を傾げて考える。

シルは子供の狼型魔物である。

三つ首の狼型魔物のミックスケルベロスと

銀色の毛並みをしたフェンリルとの間に

生まれた魔物である。


「奥方の親類だと告げられております!

本来ならこのような事は

しないような種族と申しますか…

私達の様にフィルやブラッドを

見ている人間なら理解できるのですが

話を聞かない人間がいるので

普段は同胞と同じ鳴きかたをしていると

申されていました…」


「なるほど・・・

フィルやブラッドの様に喋れる魔物は少ない!

いや、滅多にいないからな?

そして頭に言葉を告げたと成れば別格だ!

そんな能力を持っている魔物は

駆逐されてしまうのが世の定めだろう」

ガデルは頷きながら納得する。


「だけどな?それとこれとは別だろ?

俺達に何故トキの居場所を直ぐに連絡しなかった?

こんな時間になるまで忘れてたなんてないだろ?

もう直ぐ夜になる。

そんな中で知らない迷宮に取り残されたあいつらを

俺達はどう考えるか考えなかったのか?

しかも王子が迷宮に入ってるなんてな?

前代未聞だぞ?

いくら冒険者ランクが高いトキだろうが

危険度ランクSSの魔物のブラッドが

付いていようがサミンのほかに

ランクDの冒険者三人を連れてるんだぞ?

しかも迷宮のランクが分からない場所に行かせる

なんて本来ならギルドはさせてはいかんだろうが!

調査してランクを調べて行かせるのが常識だぞ?」

ガデルが諭すようにハリーに叱咤する。


「返す言葉がございません…」

ハリーが言葉にならないような

か細い声でガデル達に謝罪の言葉を告げる。


「本来ならそうするのですが

今回はこれ以上は話すことが出来ないのです…

明日の昼までに何かしらの連絡がなければ

ガデルさん達に向かってもらう予定でありますので

どうかトキ君が帰ってくるまで真相を

隠させてください!」

「通じると思ってるんですかねぇ?ハリーさんん?」

「!?」


ガデルはハリーにはハリーの事情があると

察して引き下がろうとしたが

トキを思わせる様な雰囲気のヴァイスが

言葉を発したことに驚愕する。

ヴァイスの後ろにトキが一瞬見えたから。


「以前も隠してましたよねぇ?

人の命が掛かってるんですよ?

しかも先生と王子の命がねぇえ?

それなのにぃ・・・明日まで待機ですかぁあ?」

「ヒイィィィ・・・!!」

ヴァイスの怒る様をみてトキの以前の

説教を思い出したのか

体が下がり机から落ちそうになるハリー。


「ヴァイス君?一旦落ち着こうか・・・」

「ガデルさんもギルド長と同じ意見ですかあ?」

「そうじゃない!君は今トキと同じか

それに近い怒気!怒りが込み上げてるのは分かる!

俺達は問題ないがお前の友達が怯えてるからな?

だから一旦落ち着け!

仲違いしたくないだろ?リファイとな!」


ヴァイスは険しい顔したままリファイを見ると

ガデルにしがみついて泣きそうになっている。

ヴァイスはその光景を見て怒気を納めて

目を閉じて深く深呼吸する。

そして目を開けてハリーに笑い掛けて

「今日の所は我慢しますよ。

だけどきっっちり説明してくださいね?」

ヴァイスはそう告げてギルド長室から出ていく。

リファイは自分よりも怒ってるヴァイスが

出ていったのを見て腰が抜けたのか

その場にガデルにしがみついたまま

床にへたりこむ。


ガデルはハリーとリファイを慰めて

リファイをおんぶしてギルド長室から出ていった。


その頃トキ達は、

「今日は迷宮で休むしかないな?」

「今何時なのかな?」

「ちょっと待ってろよ・・・

午後6時だな。

ここ天井広いからログハウス出せるから

その中で休もう!」

現在洞窟の迷宮地下10階の大広間にいる。

先ほどまで体長20mのジャイアントカリブーと

戦い終えて休憩をしていた。

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cont_access.php?citi_cont_id=565217839&s お読みいただきありがとうございます。 評価や感想、ブックマーク等して 頂ければ励みになりますので よろしくお願いします。
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