ルティとシルのミッション
ルティとシル目線です。
トキの説教が終わって数日後…
昨日まで降っていた雪が収まり
今日は日差しが反射するほど白く地面を染めていた。
「ワン!ワン!ワウゥ?」
「キュゥ?キュイ!キュイ!」
『ルティさん!おはようございます!
今日は何します?』
『シルくん?おはよう!今日は練習します!』
孤児院の自分の部屋の窓枠で
雪積もる地面を見ていたルティが
シルに駆け寄られて挨拶されて返事し胸を張る。
「ワン!ワウゥ?」
『分かりました!何を練習するんですか?』
シルは元気よく返事し首をかしげる。
「キュイ!キュゥ・・・キュイ!」
『シルくん!今日も雪が積もってるので
・・・決めてません!』
自信満々に告げられてシルは器用に横にこける。
「ワウゥ…ワンワン…ワウゥ…」
『ルティさん…それはないですよぉ…
僕何するか楽しみにしてたのにぃ…』
シルは立ち上がり落胆した姿を見せる。
「キュイ!キュゥキュイ!」
『冗談だよ!今日はかくれんぼをします!』
ルティは右手首だけで右手を上下してから
敬礼して宣言する。
「ワン!ワワウゥ?」
『分かりました!いつものですか?』
シルも敬礼してルティ聞く。
「キュイ!キュゥキュイキュイ!」
『そうです!主に見つかるまでいつまでも隠れます!』
「ワン!」
『以前のリベンジですね!』
「キュイ!キュイ!」
『そうです!以前は見つかりましたが雪の中なら
見つかりません!』
「ワン!ワン!」
『そうですね!流石ルティさん!』
シルが誉めると器用に耳を掻くルティ。
「キュイ、キュイ!」
『では、始めましょう!』
「ワン!」
『了解しました!』
ルティとシルは静かに子扉から出てトキの元に向かった。
「キュイ!キュゥキュイ?」
『シル隊員!主はどこに居ますか?』
「ワン!ワウゥ…ワゥ?」
『ルティ隊長!ちょっと待っててくださいね…
この家に居ないのかなぁ?』
レンジャーごっこしながら廊下を歩く二人に
最初の難関が待ち受ける。
「キュイ?キュイ!キュイ!」
『ここに居ない?大変だよシル隊員!
早く見つけないと!』
慌ててその場で円を描くように走り出すルティ。
「ワン!ワウゥ…ワン!」
『ルティ隊長落ち着いてください!
トキさんならきっと…
隊長、美味しそうな匂いがします!』
シルは近くを嗅ぎながら美味しそうな匂いに釣られて
廊下を歩いて動いていく。
「キュイ?キュイ!」
『シル隊員?僕も行くから待ってよ!』
走るのを止めたルティはシルの後を追っていく。
シルの嗅いだ匂いを察知したルティも
一緒に横並びで歩いていく。
「ワン!ワウゥ?」
『ルティさん美味しそうです!何処からでしょう?』
「キュイ?キュイ!」
『何処だろうね?
ではかくれんぼから匂い探しに変更します』
最初の難関を放置してその場で
敬礼してシルに告げるルティ。
シルも真似て敬礼し匂いのもとを探しはじめる。
匂いは外へと続いており外に出る二人。
二人が庭に出ると以前から作られていたかまくらから
匂いが美味しそうに漂ってくる。
「ワン!ワワン!」
『隊長!匂いもトキさんも見つけました!』
シルはルティに敬礼して伝えると
「キュイ!キュゥキュイ!」
『よくやったシル隊員!ではかくれんぼをしながら
食べに向かいたいと思います!』
ルティも敬礼してミッションを告げる。
現在トキは1人でかまくらの中であるものを焼いていた。
「まさかこれが世界にあるなんてな・・・
まさかまたバンバー、いや番場?
の名前を聞くとは思わなかったが…
これは先ずは塩で頂くとしますかね!」
トキは嬉しそうに呟きながら
七輪の前に手作りの菜箸で様子を見ている。
「キュイ!キュゥキュイ!」
『ここからはハンドサインで連絡を取ります!
シル隊員は見つからないように気をつけて!』
「ワン!」
『分かりましたルティ隊長!』
ルティとシルは互いの健闘を讃えて握手して
双手に別れる。
ルティは影を利用しながら、
シルは雪景色を利用しながら近づく。
「ん?」
トキは一瞬視線を感じて七輪から外を見る。
ルティはシルが気付かれないように
器用にハンドサインで知らせて
シルは雪と同一化して誤魔化す。
「気のせいか?」
トキは七輪に視線を戻して菜箸でひっくり返した。
ルティとシルは冷や汗を拭い
ゆっくりと近づいていく。
残り5m。
もうトキの目と鼻の先に近づいた。
ルティは木の上に、
ルティは近くのかまくらの上にいる。
シュッシュシュッ
『目標発見!匂いに我慢できません!突っ込みますか!』
シュシュッシュッ
『待つんだシル隊員!僕も我慢できないから
カウントダウンで突っ込むぞ!』
互いにハンドサインで連絡しあい
突撃用意を始める。
ルティの右手の指が一本ずつ曲がっていく。
それを必死に眺めて指がが曲がり終えて
突撃のサインで突っ込む二人。
かまくらの入口まであと少し。
美味しい匂いが食べ物が待ち受けている。
そう思い全力で駆け寄る。
「ワン!」
「キュイ!」
かまくらの入口に着くと地面から網が現れて
捕まってしまうルティとシル。
トキのいるかまくらは木と木の間にあり、
地面から現れた網で吊られてしまった。
「残念だったな?ルティ?シル?
大分上手く隠れてたが最後の最後に
匂いに釣られて気配を出したのが悪かった!
その結果がこれだ!」
トキは七輪で焼き上がった煎餅を食べながら
ルティ達に告げた。
「ワウゥ…ワウゥ…」
『ルティさん…また見つかってしまいましたね…』
「キュゥ…キュイ!」
『残念だったね…でも次は頑張るよ!』
ルティはシルを励まし頭を撫でる。
「まあ、犬類には食べさせられないが
敢闘賞として肉焼いてやるからな?
次も頑張れや!」
トキはルティ達を解放して
七輪で熟成させたスノーウルフの肉を焼き始める。
ルティ達は尻尾を振りながら待っていると
焼き上がった肉を与えられて雪で冷ましながら
肉を食べ始める。
嬉しそうに頬を緩ませているルティ達の
後ろを見てトキは疑問を感じた。
「ん?そういや、今日の仕事どうしたんだ?」
「キュイ?・・・キュイ!」
『仕事?・・・忘れてた!』
ルティは愛護部屋の仕事を忘れて首をかしげて
思い出した様に高く声をあげた。
ルティがゆっくりと後ろを向くと
既にかまくら近くに列が出来ていた。
「キュゥ…」
「ワン!」
シルはルティを慰めながらトキのいるかまくらから離れて
隣のかまくらに移動した。
今日はいつもの愛護部屋と違うかまくらでの
愛護仕事になったルティ達であった。